JAの活動:より近く より深く より前へ JA全農3カ年計画がめざすもの
新たな業務向け産地確立めざし マーケットイン起点の事業を展開 / JA全農とちぎ(下)2016年10月31日
◆10万円/10aを目標に
そのうえで産地側への推進として、すでにタマネギを生産している既存産地への「価格の見える業用向け販売提案」。これまで以上にタマネギの出荷量を増やし、増やした分を業務用向けに簡易出荷し手取り向上をめざさないかと提案を行った。
同時に、これまでタマネギ生産の経験がない新規産地(JA、生産者)へのタマネギ作付とSサイズ以上全量出荷という提案を行った。その際には、タマネギ栽培に関する説明や写真付き資料を作成し、初めて取り組む生産者でも「安心して取り組めるように配慮した」と生産振興課の横山周平さん。
さらに、経営シミュレーションを提示(Z―BFM活用)して、麦などよりも手取りが見込めることを示しながら、JAと一緒になって推進しているのだという。
そのシミュレーションで掲げている目標は「10万円/10a」だ。
◆レンタル農機で 生産者の負担軽く
それを強力に推進するツールとして、阿久津課長たち生産振興課が考えたのが「農業機械のレンタル」事業だ。農機部門とも連携して「重量野菜を推進するためには、絶対に必要なインフラ機能」だとの考えだ。
初めてタマネギ栽培に取り組むときに、いきなり50aとか1ha取り組むことはまずない。手始めとして、様子見も含めて10aとか30a、とりあえずやってみようというときに、最初から機械を購入するのは「重い」。レンタルがあれば、それを使ってタマネギ栽培を知ってもらうことが一番だという考えだ。
レンタル料金は「10万円/10a」を実現するために逆算して決めているので「通常よりは相当に割安になっている」ため、生産者の負担は大きくはないという。
レンタル農機は、各種播種機、移植機、収穫機、収容機などのタマネギ用のものを全農とちぎとして、数台ずつ用意した。
だが、本格的に50a以上取組むことになったら「購入してもらった方がいい」というのが、横山さんたちの考えだ。なぜなら全農とちぎが保有する台数には限りがあり、作業時期が重なれば、自分の思うようにはレンタルできない可能性が高くなるからだ。
◆業務向け産地の キーステーションに
こうした熱心な取組みに、いままでタマネギを生産したことがない2JAが賛同して参加し3.1ha作付けしてくれたことが「一番嬉しかった」と阿久津課長と横山さんがこもごも語ってくれたのが印象的だった。
今年の作付けはこれからなので詳しいことは分からないが、昨年は約10ha作付けされている。新規の産地や生産者の相談にのるため営農指導で飛び回っている横山さんは、「間違いなく伸びていきます」と、現場の感触が良いことを強調する。
JA全農とちぎは、独自に「栃木県本部10年全体ビジョン」を設定しているが、そのなかでタマネギの作付面積を10年後に500haにするという目標を設定している。
移植機や収穫機などがレンタルできて機械化が進んでも、コンバインで収穫して共同乾燥施設に出荷すれば終わりという水稲の作業に慣れた生産者には、収穫後の葉切りや根切り、乾燥など出荷前の不慣れな作業を簡便化できないか、などの課題はまだいろいろとある。
そうした課題を一つ一つ克服して、業務向けタマネギの有数の産地として栃木県を育てていこうという営農販売企画部の姿勢にぶれはない。県内だけではなく、近隣県とも連携して、大手実需者のニーズに応えたマーケットイン起点の国産タマネギの販売を進めて行く強力なキーステーションとなることは不可能ではないといえるだろう。
全農に対して生産資材価格などを中心にさまざまなことが言われている。それは、本当に生産者の「もっと近く」で「もっと深く」ともに「もっと前へ」進もうとの熱い思いを抱いて、日夜、奮闘している現場の実情を知らない机上の空論だといえる。そんな空論に脅かされることなく、確実に一歩一歩前に進んでいる現実を大事にしたい。
(写真)ピッカー(収容機)による拾い上げ作業
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(173)食料・農業・農村基本計画(15)目標等の設定の考え方2025年12月20日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(90)クロロニトリル【防除学習帖】第329回2025年12月20日 -
農薬の正しい使い方(63)除草剤の生理的選択性【今さら聞けない営農情報】第329回2025年12月20日 -
スーパーの米価 前週から10円上がり5kg4331円に 2週ぶりに価格上昇2025年12月19日 -
ナガエツルノゲイトウ防除、ドローンで鳥獣害対策 2025年農業技術10大ニュース(トピック1~5) 農水省2025年12月19日 -
ぶどう新品種「サニーハート」、海水から肥料原料を確保 2025年農業技術10大ニュース(トピック6~10) 農水省2025年12月19日 -
埼玉県幸手市とJA埼玉みずほ、JA全農が地域農業振興で協定締結2025年12月19日 -
国内最大級の園芸施設を設置 埼玉・幸手市で新規就農研修 全農2025年12月19日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】「経済関係に戦略性を持ち込むことなかれ」2025年12月19日 -
【農協時論】感性豊かに―知識プラス知恵 農的生活復権を 大日本報徳社社長 鷲山恭彦氏2025年12月19日 -
(466)なぜ多くのローカル・フードはローカリティ止まりなのか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月19日 -
福岡県産ブランドキウイフルーツ「博多甘熟娘」フェア 19日から開催 JA全農2025年12月19日 -
α世代の半数以上が農業を体験 農業は「社会の役に立つ」 JA共済連が調査結果公表2025年12月19日 -
「農・食の魅力を伝える」JAインスタコンテスト グランプリは、JAなごやとJA帯広大正2025年12月19日 -
農薬出荷数量は0.6%増、農薬出荷金額は5.5%増 2025年農薬年度出荷実績 クロップライフジャパン2025年12月19日 -
国内最多収品種「北陸193号」の収量性をさらに高めた次世代イネ系統を開発 国際農研2025年12月19日 -
酪農副産物の新たな可能性を探る「蒜山地域酪農拠点再構築コンソーシアム」設立2025年12月19日 -
有機農業セミナー第3弾「いま注目の菌根菌とその仲間たち」開催 農文協2025年12月19日 -
東京の多彩な食の魅力発信 東京都公式サイト「GO TOKYO Gourmet」公開2025年12月19日 -
岩手県滝沢市に「マルチハイブリッドシステム」世界で初めて導入 やまびこ2025年12月19日


































