JAの活動:負けるな! コロナ禍 今始まる! 持続可能な社会をめざして
京都大学こころの未來研究センター 広井良典教授 地方分散型システムへの移行と「生命」の時代(下)【負けるな! コロナ禍 今始まる! 持続可能な社会をめざして】2020年6月24日
◆「生命」は「情報」でコントロールできるか?
この場合重要なのは次の点である。すなわち、昨今の「情報」をめぐる議論で、しばしば私たちは、膨大な「ビッグ・データ」や様々な「アルゴリズム」で世界の全てを把握し、コントロールできるという世界観あるいは?幻想"にとらわれがちだ。
そして、「生命」それ自体も「情報」によってすべて理解し把握できると考えがちなのであり、私は以前からそれを「情報的生命観」と呼んできた(拙著『生命の政治学』参照)。
近年のその典型は、いわゆるシンギュラリティ論で有名なアメリカの未来学者レイ・カーツワイルであり、彼の主書『シンギュラリティは近い(Singularity is Near)』のサブタイトルは、いみじくも「人間が生物学を超えるとき」となっている。要するに、「生命」はすべて「情報」でコントロールできる、あるいは生命は情報に還元することができることができるというのがその基本思想である。
しかし、今回のコロナ・パンデミックは、「生命」はそれほど簡単に「情報」によってコントロールできるようなシロモノではないということを、私たちに冷厳な形で突き付けたのではないだろうか。細菌やウイルスはある種の"創発性"をもっており、人間が設計したアルゴリズムのコントロールをすり抜ける形でさらに進化していく。
生命や自然がもつそうした性格は、農業に関わる人々であれば、様々な経験の場面において実感として把握してきた事実であるだろう。
さらに言えば、むしろ「情報」と「金融」と「集中化」と「グローバル化」で世界をコントロールし尽くそうとするという現在の流れこそが、皮肉にも今回のようなパンデミックをもたらし、しかもそうした流れの中で蓄積していた格差や貧困や環境劣化が、災禍を一層増幅させてしまうことが明るみになったのではないか。
本稿では、「コロナ後の世界」の構想というテーマを、(1)「都市集中型」から「分散型システム」への転換、(2)「生命」の時代と農業、という2つの柱にそくして述べてきた。これらは相互に深く関連し合っており、また、ここでは十分論じられなかった関連する他の論点も含め、その全体の展望をまとめたのが(図2)である。
現下の対応と並行しながら、「コロナ後の世界」の構想を根底から議論していくことが今こそ求められている。そして本稿で指摘した「地方分散型」社会そして「生命の時代」という、二つの方向のいずれにおいても、農業は鍵となる場所に位置しているのである。
(参考文献)
広井良典『人口減少社会のデザイン』、東洋経済新報社、2019年。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(90)みどりの食料システム戦略 現在の技術で実現可能でしょ(4)2024年4月20日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(7)【防除学習帖】 第246回2024年4月20日
-
土壌診断の基礎知識(16)【今さら聞けない営農情報】第246回2024年4月20日
-
地域複合農業戦略に挑む(2)JA秋田中央会会長 小松忠彦氏【未来視座 JAトップインタビュー】2024年4月19日
-
農基法改正案が衆院を通過 賛成多数で可決2024年4月19日
-
【注意報】さとうきびにメイチュウ類 伊是名島で発生多発のおそれ 沖縄県2024年4月19日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:JA水戸 那珂川低温倉庫(茨城県) 温湿度・穀温 適正化徹底2024年4月19日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ対策を万全に 農業倉庫基金理事長 長瀬仁人氏2024年4月19日
-
食農教育補助教材を市内小学校へ贈呈 JA鶴岡とJA庄内たがわ2024年4月19日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第97回2024年4月19日
-
(380)震災時は5歳【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月19日
-
【JA人事】JA道北なよろ(北海道)村上清組合長を再任(4月12日)2024年4月19日
-
地拵え作業を遠隔操作「ラジコン式地拵機」レンタル開始 アクティオ2024年4月19日
-
協同組合のアイデンティティ 再確認 日本文化厚生連24年度事業計画2024年4月19日
-
料理酒「CS-4T」に含まれる成分が代替肉など食品の不快臭を改善 特許取得 白鶴酒造2024年4月19日
-
やきいもの聖地・らぽっぽファームで「GWやきいも工場祭2024」開催2024年4月19日
-
『ニッポンエール』グミシリーズから「広島県産世羅なしグミ」新発売 JA全農2024年4月19日
-
「パルシステムでんき」新規受付を再開 市場の影響を受けにくい再エネ調達力を強化2024年4月19日
-
養分欠乏下で高い生産性 陸稲品種 マダガスカルで「Mavitrika」開発 国際農研2024年4月19日
-
福島県産ブランド豚「麓山高原豚」使用『喜多方ラーメンバーガー』新発売 JAタウン2024年4月19日