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頑張りに報いる給与を 群馬県JA邑楽館林 小池清前組合長2020年8月21日

今、私たちを取り巻く環境は新型コロナの感染で国内はもとより世界中が戦々恐々の状態にあり、オリンピックは延期され国民すべてにマスクと手洗いが推奨された。国内企業の多くが在宅勤務、学校は休校に、国内外の旅行や、県またぎの往来などの自粛、3密の励行により一時は収まるかのように見えたが、また増加し始めた。しかし、国民の多くの人達が驚いたことは国内企業で一番外貨を稼いでいた、トヨタ自動車を始め大手自動車産業6社が早々と休業に追いやられたこと。いくらかでも部品のコストダウンを図るために「手間」の安い海外に依存度が大きくなりすぎたのではないだろうか。
しかし、車でなくて農産物だとしたらどうだろう。自給率40%時代にTPP問題で全国農協中央会を中心に全国の農協、農業者が一丸となって反対をした。自由貿易もわからない訳ではないが、現在自給率37%、新型コロナウイルスだけでなく世界のどこかで予期せぬことが起こり、今回と同じように飛行機や船の活動が長期にわたって断たれた場合、自給率37%でどこまで国民の食料が持ちこたえられるのか。今回は新型コロナウイルスによって政治家、それぞれ経営者、全ての国民が悲しいことであるが、良い教訓を得たのではないだろうか。
平成30年の事業就業人口175万人のうち約68%の120万人が65歳以上である。少子高齢化の進む中、農業従事者の平均年齢は66.8歳で、農業就業人口は30年前の1985年と比較して60%減少している。49歳以下の新規就農者はやや増加傾向にあり、それらの要因は農地法改正で誰でも農地が借りられる点にあると言われているが、就農した35%が離農している。
群馬県においても少子高齢化の波はご多分にもれずで、県内16農協を6農協にすることが決定され私たちの農協は3農協が合併し、平成21年5月に新制農協として事業をスタートした。
私は、平成22年5月に組合長に就任し、目標に「日本一の農協」を掲げた。その目的は組合員の所得の増大、職員と家族の安定した生活にある。1県1JAや大農協には遠く及ばないにしても、役員、職員、組合員が同じ方向「日本一」に向かって進めていくことを理事会で役員に、朝礼やその他の機会で職員に伝えた。また、組合員には生産組合の集まりを始め、多くの機会でお願いして進めた。
その取り組み方法として(1)合併によりそれぞれが持ち込んだ不良債権の処理(2)合併で一番問題な農協格差[役員、職員、組合員)レベルアップと均等をめざす](3)組合員については売るものは1円でも高く、買うものは1円でも安くをモットーに利用高配当はできるだけ多く、農協を利用してよかったと実感が持てる取り組みを挙げ、これらを行うための役職員の意識改革を図った。
特に役員については、「経営者としての強い認識と規律」「守秘義務の励行」「自己経営の健全化」を求めた。職員については「組合員に対しての挨拶の励行」「組合員が支所や本所に見えた場合には必ずお茶を出す(農協と組合員の距離を縮めるため)」「中堅職員の特別教育(毎年10人の職員を1年間コンサルの先生にお願いし、資質の向上を図る)」。また、「報償制度の設立」として、パートを含めた全職員を始め各部署に自薦、他薦関係なしに本当に頑張った個人か支所、課、部など、報奨金を年2回朝礼の時、多くの職員の前で授与し褒めたたえた。
「人事考課の徹底」では、日々努力し頑張った職員にはそれに報いる考課を、そうでない職員にはそれなりの考課を、また、いい加減に考課した者はその人を落とした。さらにパート職員でも正職員以上にがんばっている人たちも多いことから「パート職員にボーナス」として、正職員がボーナス袋をもらっても、ただ見ているだけでは士気が上がらないので家族で食事ができる程度を出した。「農協の健全経営と少子化対策 支所の再編」では、22支所を10支所に固定費の削減、支所機能の充実などに取り組んだ。キュウリを始め野菜や直売所の販売戦略に「きゅうりちゃん音頭」を始め主要野菜7品目の歌を作り、「めんこいガールズサラダ」(小学生から大学生までの女子学生12人)による歌と踊りと習字のパフォーマンスをJAの直売所や各大手市場や大型スーパーなどで披露し販売促進を図った。
こうしたいろいろな取り組みの中で、職員の今まで以上の「やる気」が見えてきた。それは、頑張った人には頑張ったなりに、頑張らなかった人はそれなりに、しっかりと給料やボーナスで格差をつけることこそ「元気とやる気」が見えてくるということ。こうした取り組みの中で農協を中心に組合員はもとより、地域を守り、命と暮らしが守れるのではないだろうか。
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