JAの活動:緊急企画:JA対話運動~コロナ禍での協同~
組合員の思いを形に 地域の共生に軸足 神奈川県・JAさがみ【JA対話運動】2020年12月10日
JAの自己改革の中で、組合員の意思を経営に反映させる方策が課題になっている。この対策としてJAグループは組合員との「対話」を重視し、訪問活動を展開している。特に、組合員の意思反映、准組合員のJA運営への参加・参画に挑戦しているJAさがみ(神奈川県)の取り組みを、JA全中の2020(令和2)年度組織基盤強化フォーラムにおける報告から紹介する。
協同組合は人の組織である。JAさがみは、この観点を明確にして、「農業を基点に人と人とを結びつける」JAづくりを目指している。そのため、訪問活動をJA活動のすべての基本として位置付け、対話を通じて、組合員とJA、JA職員とのつながりを深めている。特に「組合員カード」の発行によって、准組合員のJA事業の利用実態をつかみ、それぞれの関心度、JAとの関わり方を基にきめ細かく対応し、JA運営への参加・参画を促しているところに特徴がある。
組合員宅の訪問活動は日常業務に
正・准問わず「訪問」
JAさがみ管内は7市1町からなり、約150万人が暮らす。横浜市に隣接して都市化が進んでおり、正組合員約1万人に対して准組合員5万5000人。農家数は約3800戸で、うち販売農家数は2100戸ほどだが、約1900ヘクタールの耕地があり、消費地に近い利点を生かして野菜、花きなどの農業も盛ん。都市化したなかでも、2020(令和2)年の販売品取扱高は57億円に達する。
同JAが目指すJAの姿は、「農家がこの土地で"農業"をしやすい環境を"協同"の心と力でつくる組合」とうたっている。つまり、農業を中心に地域、農家、農協がお互いに支え合う地域社会をつくるというものだ。
総合事業でCS改善
そのため、農家(正組合員)とJAの役職員、それに地域住民(准組合員)が相互につながりながら、(1)農業と地域をつなぐ営農活動の展開(2)農協事業の基盤である組織力の強化(3)組合員、地域、農協が支えあう地域社会づくり(4)経営基盤の強化・安定――を目指す。
この取り組みの核となるのがJAの職員によるCS(顧客満足)改善活動で、総合事業の強みを生かした組合員満足度向上の活動を強めている。その基本姿勢は「今、何をすべきかを全員で議論 自ら考え、自ら行動し、改善する」。この中で、「支店・センター・直売所の店舗が農業所得の向上と組合員・地域住民の生活を守っているのか」「総合事業の利点は何か」などのほか、「1支店1活動はなぜ行うのか」「出向く対話活動を有効にするには」「正組合員・准組合員全戸訪問の理解と有効性」など、基本的なテーマについて議論を重ねた。
その成果の上で、「より出向き、より対話、より実践」をスローガンに、訪問活動を展開。同JAは組合員宅の訪問を、「JA活動のすべての基本であり、通常業務」と位置付ける。訪問による対話を通じて、JAに対する准組合員の理解を深め、参加・参画を促そうというものだ。
准組の意思を把握
准組合員への働きかけで重視しているのが、2019(平成31)年3月から発行している「組合員カード」。「准組合員がどのくらい直売所を利用しているか把握しないと、アクティブメンバーシップを高めることができない」という認識のもとに始めたもので、訪問による対話活動を通じて准組合員とのつながりを強めることはもとより、質的な関係を強化するためのカードで、これで准組合員の意向と、JAとの関わり状況をつかむ。
准組合員のJAとの関わりは直売所利用がきっかけになるケースが多いことから、組合員カードで准組合員の利用状況をつかみ、利用状況のデータ分析し、この結果をもとにモニターになってもらい、意見交換を通じて、直売所出荷者とのつながりをつくる。
また、組合員カードを通じて正組合員(生産者)と、准組合員(消費者)の縁結びにして地産地消を活性化させることも期待できるというわけだ。
同JAは准組合員を「農業や地域経済の発展を農業者と共に支えるパートナー」「農業振興の応援団」として位置付ける。そのためJAの組合員に加入するときには、JAの事業や活動について説明し、理解を得るとともに意向確認シートで意思を確認する。
確認事項は、JAさがみの「地域農業振興への取り組みに賛同し、地域農業の発展や地域づくり活動を応援するか」、「JAの経営情報や活動情報、運営参加の機会などの情報を希望するか」などについて聞く。
それに基づき、日常的にJAと関係の深い人、JAの直売所利用者で来店頻度の高い人、イベントの参加が多い人など、JAへの関心度が高い人をセグメントし、食の安全・安心学習会、JA利用者ふれあい交流会などへの参加を働きかけ、アクティブメンバーとして地区・支店運営委員会などへの参加・参画を促す。
職員が自ら考える力をつけるCS改善のミーティング
参加希望者を後押し
ちなみに、2019(平成31)年度、准組合員9629人の意向は、JAの運営に参画を希望する人は25.8%、希望しない人が33.2%、今後検討したい人は38.1%あった。さらに、直売所を利用している人が8割超を占めている。組織基盤強化フォーラムで報告した同JAの西山國正組合長は、「参加意識のない准組合員にどうアプローチするか、また、今後参画を検討したいという人の背中をどう押すかが喫緊の課題」と言う。
さらに、多くの准組合員が直売所を利用していることから「"食"への興味を〝農"への興味へ、どうステップアップさせるか」を課題として挙げる。一方で、准組合員にとってJAの総合事業はなかなか理解しにくいところがあり、「JAが地域社会に寄与していることをしっかり伝えることがJAの自己改革と考えている」と、自己改革のアピールの重要性を強調する。
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