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JAの活動:2021持続可能な社会を目指して 今こそ我らJAの出番

【提言:いまこそJAの出番だ】自産自消のススメ 森永卓郎 経済アナリスト・独協大学教授2021年1月9日

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なぜ農協が必要なのか。それは高い倫理性が求められ、何より国民の命を守る大切な産業だからだ――。

経済アナリスト・独協大学教授 森永 卓郎氏経済アナリスト・独協大学教授
森永 卓郎氏

農業就業者のうち65歳以上が占める割合は63.5%になっている。70歳くらいで離農するケースが多い現実を考えると、今後、農業就業者が激減する可能性が高い。実際、農業・食品産業技術総合研究機構の予測では、2020年から10年間に、農業就業人口が36%減少して、農家数は160万戸から105万戸になるとみられている。

政府の基本的な考え方は、耕作放棄された農地を担い手に集約し、大規模で生産性の高い農業に構造転換していこうとするものだ。そのなかで、企業による農業経営も認めていこうという流れになっている。

ただ、私は企業による農業経営には反対だ。医療と農業は、資本主義と馴染まないからだ。現在、株式会社による病院設立は、一部の例外を除いて認められていない。それは、医療機関の運営に高い倫理性が求められるからだ。株式会社の最大の目的は、利益の拡大だ。病院が利益の拡大だけを目的に行動したら、何が起きるのか。患者を長期間入院漬けにし、大量の薬を投与する薬漬けにし、不要な検査を頻繁に行う検査漬けにする。患者は医療の知識を豊富に持っていないから、そういうことをされても、抵抗がむずかしい。

同じことは、農業についても言える。もし、利益拡大のために生産性を上げようと思ったら、強力な除草剤や農薬を使用して、作物だけを効率的に育てればよい。そうしたことは、米国では、現実に起きている。

すべての植物を枯らせてしまう強力な除草剤を空中散布する。ただし、育てる穀物は、遺伝子組み換えで、散布する農薬に耐性を持つように品種改良をしておくのだ。そして、虫の発生を防ぐために、収穫後も殺虫剤をかけ続ける。消費者は、農産物の生産過程を知らないから、リスクが潜んでいることが分からない。

仮に健康被害が出たとしても、被害が出るのは時間がたってからだし、消費者はいろいろなものを食べているので、健康被害の原因となる食材を特定するのは困難だ。それどころか、1週間前に食べたものを覚えている人は、ほとんどいないだろう。食という分野というのは、悪徳企業を跋扈(ばっこ)させかねない構造を持っているのだ。

私は、日本の農家は高い倫理を持って経営をしてきたと信じている。農薬を使う際にも、出荷時に残留しないように使う量やタイミングに細かい神経を使ってきた。それが、日本人の長寿命の一因にもなってきた。しかし、農業を資本主義化していくと、そうした倫理が破壊されてしまう可能性は否定できないのだ。

どうしたらよいのか。私は3年前から群馬県で農業を始めた。プロ農家のサポートを受けた体験農業だったが、昨年は新型コロナの影響で群馬県に行くことができなくなってしまったので、家の近くの耕作放棄地を借りて、土づくりから自分一人で耕作を始めた。そのなかで、分かったことがいくつかある。

一つは、面積の限界だ。私はいま30坪ほどの畑を耕作しているのだが、本業を持ちながら、有機無農薬でやろうとすると、それくらいが限界だということだ。雑草と虫や動物との戦いに手を取られるからだ。それでも、家族が食べる分には、あり余るほどの収穫がある。

もう一つは、農業は健康に良いということだ。草むしりはスクワットだし、土づくりは背筋を鍛えられる。早寝早起きの習慣も身につく。昨年夏に、私の筋肉量は過去最大になった。

さらに一番大切なことは、農業は楽しいということだ。資本主義の進化は、働く人から仕事の愉(たの)しみを奪った。トップダウン経営によって、経営判断は経営層に委ねられ、現場は無味乾燥な単純労務を厳しいノルマの下で続けることを強いられているのだ。

それと比べると、農業には高い自律性がある。何を植えるか、どのようなタイミングで植えるか、追肥や芽欠きをどうするのか。すべてが自分で決められる。もちろん自然相手の仕事だから、いつも同じことをしていたら上手(うま)くいかない。雨も、風も、虫も、動物も、病気も、乾燥も、あらゆる困難が襲ってくる。それらへの対策を必死で考えて行動する。それでもうまくいかないことも多いが、全体としてみると、手をかければかけるほど収穫に結び付いていく。その達成感がうれしいのだ。

私は、国民のすべてが自産自消をするようになることが、国民の幸福につながるし、食糧安全保障にもつながると考えている。いまの農業政策は、大規模化一辺倒で、国民のすべてが農業をするという事態を想定していない。

だから農地の取得に関しても、1500坪という広大な面積で、なおかつ農業専従を前提にしないと認められない。それを根底から覆し、国民誰もが農業をできるようにすれば、国民が幸福を取り戻せるだけでなく、日本の農業をグローバル農業資本から守ることにもつながるのだ。

自産自消は、専業農家の経営を必ずしも圧迫しない。素人が作れる農産物は、品種も限られるし、収穫できる時期も限られる。専業農家は、素人では作れない時期や品種の作物に特化していけばよいのだ。

そうしたことを考えると、農協の進むべき道は、一億総組合員化だと思う。それも、共済事業のような関連事業を通じた組合員化ではなく、本来の農業での組合員化だ。私も苗の購入などで近隣の農協のお世話になっている。

なぜ農業分野に農業者の協同組織が必要であったのか。それは、農業が他の産業とは異なる高い倫理性が求められるとともに、何より国民の命を守る大切な産業だからだ。

農協の数は、じり貧状態にある。いまは、本業での逆転攻勢をかけるための大きな転換期だと考えるべきだろう。

(リンク)
【特集:2021持続可能な社会を目指して 今こそ我らJAの出番の記事一覧はこちら】

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