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JAの活動:第43回農協人文化賞

【第43回農協人文化賞】営農事業部門 静岡・清水農協前常務 池田省一氏 「農家の喜び」に目標2023年2月1日

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営農事業部門_池田省一JAしみず前常務静岡・清水農協前常務理事 池田省一氏

私は、父が造船所で働くサラリーマン家庭に生まれました。就職するまで農業とはほとんど無縁の環境で育ち、高校・大学時代も農業について学ぶことはありませんでした。しかし、様々な人との縁があり昭和54(1979)年、当時の清水市農業協同組合に就職しました。

入組後、最初に配属されたのは支所の金融共済課でしたが、正直なところ仕事に対する思い入れは乏しく、何となく日々を過ごしていたように思います。しかし、この時期にその後の私に大きな影響を与える臨税業務に出合いました。臨税は、確定申告の時期に農協が税務書類の作成等を行うことができる制度です。新入職員ではありましたが、研修を受けた後すぐさま相談会場に座り、確定申告書類の作成を行いました。

税務に不慣れな私は、相談者を長時間待たせたり、何度も書き直しをしたりと、迷惑のかけっぱなしでした。しかし、相談者である組合員さんは、誰もが帰り際に必ず感謝とねぎらいの言葉を掛けて下さいました。自分にとって人に喜んでもらう事が、これ程までにうれしい事だとは思ってもみないことでした。この経験が私を変えました。農協の仕事を通じて、より多くの農家に喜んでもらえるような職員になりたい。今後の目標が定まった時でした。

入組より8年目、希望していた臨税を所管する営農部開発課に異動となり、以後24年間、資産管理事業を中心に担当しました。「この職員に相談してよかった」と喜んでもらうためには、業務知識や資格は必須だと考え、宅地建物取引主任者、不動産コンサルティングマスター、一級ファイナンシャルプランナー等の資格取得にも努めました。

平成22(2010)年4月より営農部長を4年間、平成26(2014)年6月より営農経済事業担当の常務理事を6年間務めました。指導、販売の経験はありませんでしたが、「農家を喜ばせたい」の思いは変わることなく、自分なりに懸命に課題に取り組みました。

事業量の減少が続く、自らの経験も浅い営農経済事業に対して、どのような施策を講じればよいのか? その答えを得るため各生産部会や各地域単位で座談会を開催し、様々な意見や要望に耳を傾けました。座談会は毎年の恒例行事としました。

農産物をより高く販売してほしいという要望に応えるため、農協が農産物を市場価格より高値で買い取り、それを消費者に直接販売するという取り組みを始めました。これまでの市場流通とは重ならないよう注意を払いながら、ネットショップを始めたり、市内の量販店へ直接営業するなどして販路を開拓しました。

また、買い取り販売自体は新しい手法ではないので、差別化を図るために社会貢献も同時にできる仕組みを考えました。売上金の一部を「あしなが育英会」に寄付するというものです。この販売システムを「しみずみらい応援団」と名付けました。応援団長には清水出身の噺家、春風亭昇太さんにボランティアとしてお願いし、就任いただいています。

しみずみらい応援団発足記者会(2019年6 月)しみずみらい応援団発足記者会(2019年6月)

「しみずみらい応援団」の販売額は昨年度3億円を超え、寄付金額では累計1100万円を超えるまでに成長しています。

一方、販売力を強化するためには清水産農産物の認知度をより高める必要があります。

私自身が軽音楽を趣味としていたこともあり、地元の小学生や青壮年部員らとともに歌とダンスで清水産農産物をPRするCWOユニットを立ち上げました。PRソング「清水のミカン」や「清水に集まれ」を作詞作曲してCDを制作し、取引市場等に配布するとともに各地の量販店等で販促活動を行いました。この模様は当時NHKの全国版でも取り上げていただきました。

四季菜Gelato&Cafe きらりオープン(2021 年4 月)四季菜Gelato&Cafe きらりオープン(2021年4月)

イラストの得意な職員とともに管内の主要な農産物をキャラクターに仕立て、包装資材やラッピングバス、多くの印刷物に統一的に使用することにしました。

このようなパターンで、アンテナショップやパッケージセンターの開設、准組合員向け広報誌の発刊、葬祭ホールを利用した地域住民を招待しての落語寄席の開催等々、計画立案していきました。それらをことごとく実行させてくれた清水農協という組織に感謝しています。

こうして事業展開をする中で、職員の意識行動が明らかに積極的なものに変化したことにも助けられ、私が常務理事として営農経済事業を担当してから毎年度、収支を改善していくことができました。

43年におよぶ農協人としての自身を振り返ると、仕事と趣味などプライベートとの境界は時にあいまいで、時間の経つことを忘れてしまうくらい夢中になって過ごせたように思います。今後については「しみずみらい応援団」が、農家だけでなく、消費者、より多くの子どもたちにもっともっと喜んでもらえるような活動に成長してくれればと願っています。

色紙_池田省一

【略歴】いけだ・しょういち 昭和31(1956)年生まれ。昭和54(1979)年法政大学経営学部卒業、同年清水市農業協同組合入組。平成19(2007)年開発部長、平成22(2010)年営農部長、平成26(2014)年 常務理事営農経済事業本部長、令和2(2020)年営農経済アドバイザー、現在に至る。

【推薦の言葉】
営農の事業収支改善
池田氏は、昭和54年清水農協に入組し、開発部長、営農部長などを歴任。一貫して事業改革と営農事業の収支改善に取り組み、農協事業の発展に努めてきた。平成26年にJAの常務理事に就任してからは自己改革への取り組みの最前線に立ち、農家組合員の農業所得の向上と豊かな暮らしを実現するためにさまざまな活動に取り組んできた。特に農産物の買い取り販売に挑戦し、独自の販路を開拓して農家所得の向上で実績を挙げたことは大きい。
また農協経営においては営農経済部門の収支均衡を果たし、金融共済部門の収益が減少していく中で、販路開拓により営農経済事業の収支を改善した。令和2年、常務理事退任後も、営農経済アドバイザーとして職員の指導育成にあたり、農家組合員の農業所得向上と農協経営の確立に力を注ぐ。同氏が取り組んできたことは、清水農協の今日の事業・活動にしっかり根付いている。

【谷口信和選考委員長の講評】
池田氏は非農家出身ながら、新人の頃に確定申告業務で組合員に喜んでもらえたことに生きがいを見出し、次から次へとユニークな営農経済事業を展開してきました。農産物の買取販売と「あしなが育英会」への寄付を結合した「しみずみらい応援団」、歌とダンスで農産物をPRするCWOユニット創設、職員のイラストを利用して農産物をキャラクターに仕立てた統一的な宣伝などを通じた楽しい事業展開によって、営農経済事業の収支改善に貢献しました。

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