JAの活動:2025国際協同組合年 持続可能な社会を目指して 協同組合が地球を救う「どうする?この国の進路」
【JAトップ提言2025】消費者巻き込み前進を JAぎふ組合長 岩佐哲司氏2025年1月22日
第30回JA全国大会は「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力~協同活動と総合事業の好循環」を決議した。2025年度はその実践の初年度となる。いうまでもなく地域によって課題は異なる。そのなかでどう戦略を打ち出すべきか、JAぎふ組合長の岩佐哲司氏に提言してもらった。
JAぎふ組合長 岩佐哲司氏
1. 農協を取り巻く環境と目指すべき方向性
(1)国際協同組合年に向けて
世界情勢は混沌とし、ウクライナ戦争、ガザ地区での戦闘、北朝鮮の核武装化、米中関係の悪化、韓国大統領の弾劾問題等、枚挙に暇がない。
世界は、偽善家の時代から露悪家の時代になったように見える。
夏目漱石『三四郎』の広田先生は、「偽善家」(利他主義)と「露悪家」(利己主義)について論じ、一方が他方に代わり、また他方が一方に復活していくことで世の中は進歩すると語っている。
「所詮人間は自分中心、本心で行動して何が悪い」という思考のもと、人のことを考える人には、「偽善家」のレッテルを貼る。そんな風潮があるように感じる。だからこそ利他主義の協同組合は力を合わせて、そうした流れに抗しなければならない。
国連は、協同組合のSDGsへの貢献、その認知の向上と振興を促すために、今年を2回目の「国際協同組合年」とすることを決めた。前回2012年は、大きな動きは見られなかったが、今年は、JAグループを挙げて他の協同組合とともに大きなウエーブを起こさなければならないと思う。
(2)縮小する日本の農業と見直すべき農協の活動
日本の農業に目を向けると悲惨な数字ばかりで、過保護どころか忘れられた存在のようにも思える。
食料自給率はピーク時に比して半減しており、国家予算は全体で164%と増加している中、農林水産予算は37%も減少している。このような状況の中、農業者や農業法人はよく踏ん張ってきたと思う。
ここにきて農地減少の理由のトップは、宅地開発から耕作放棄地の減少になったと聞く。いよいよ、踏ん張り切れなくなってきた。
JAグループは、TPPや農協改革を経験し、「反対すればまたたたかれる」と、内向きになっている。問題は、異を唱えたことではなく、政治家、特に自民党の先生方だけを頼りにし、国民(消費者)の賛同を得られていない中で、自らの主張を発信し続けたことではなかったかと思う。
逆風のやんでいる今(嵐の前の静けさかも)、再燃するであろう准組合員の利用制限や意思反映、信共分離、連合会の株式会社化への対抗策を組織内で議論し、国民の賛同を得、もう一度、政治に正正堂堂と向き合う必要がある。肝は国民の理解を得られるかである。
昨年は、四半世紀ぶりの食料・農業・農村基本法が改正され、いよいよ基本計画が策定される。全中には、国に対し日本の農業を強くし地方のコミュニティーを守る観点から意見を上申してもらいたい。
一方、地方においては、我々単協が中心となり、JAだからこそ出来る「食と農を守る」活動を組合員とともに消費者を巻き込み展開しなければならない。
2.JAぎふが「やっていること」「やろうとしていること」
(1)地域協同組合としての活動と「地消地産」に込める思い
JAぎふでは、消費者の賛同を得ることを目的に、一昨年から「食と農の祭典」を開催している。農業を理解していただくパネル展示、食や有機農業のセミナー、講演会、有機農産物販売、マルシェ等を開催している。広く市民に農業を知ってもらい、理解してもらい、支持してもらい、協働してもらうことを目指す。
我々は、地産地消ではなく地消地産と言っている。消費者も主体的に関わっていただくためには、消費者が「農業者は我々の事を考えてくれている」と感じてもらう事から始まる。地消地産には、地域で必要なものは、我々が供給するという思いを、消費者は単に賛同者ではなく、生産者とともに主役であってほしいという思いを込めている。
消費者を巻き込むためには、消費者の声を聞く必要があり、令和4年から「食と農の連携フォーラム」という主婦の方を中心に消費者の集まりを開催している。フォーラムでは、農産物の出来る過程、農薬や肥料、有機無農薬、農産物の食べ比べ、ほ場視察など計10回のセミナーを重ね、昨年12月に、「こんな農産物を食べたい、作ってもらいたい」と言う提言を出してもらった。これを基に「ぎふラル」という新たな基準を行政主導でなく消費者主導で作った。堆肥を用いた土壌の改善を基本とし(第1段階)、化学合成農薬の内一部の農薬分類(ネオニコチノイド系、グリホサート系)不使用(第2段階)、栽培期間中に化学肥料、化学合成農薬不使用(第3段階)によって認証する制度だ。今年度から産直店出荷者に説明し今年6月頃から供給していく予定である。
(2)有機農業の推進環境の整備
有機農業普及は、生産者側と消費者側が車の両輪になって進まなければ前に進まないと思う。
このため、令和6年より約4㌶を賃借し「有機の里」を開設した。ここでは、栽培実験の試験、実習生受け入れ、展示などを行い、収穫物は学校給食に供給を予定している。この「有機の里」から岐阜が「有機の郷」に発展する事を夢見ている。
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