越冬耐性の強い新たなビール大麦 品種開発を開始 サッポロビール2025年10月28日
サッポロビールは、気候変動に対応するため、寒冷地で夏の暑さを避けて栽培できる越冬耐性の強い新たなビール大麦の品種開発を始めた。
春の雪解け後の様子
同社は北海道における秋播き二条ビール大麦開発の可能性について、農研機構と共同研究を行い、9月11日に日本育種学会で研究内容を発表した。
近年、地球温暖化等の気候変動により、農作物の品質の低下や収穫量の減少などが懸念されている。また、極度な高温や乾燥の進行により、ビール原料の安定供給へ負の影響を及ぼす可能性も示唆されている。
北海道で生産されている現在のビール大麦は本州の秋播きとは異なり、北海道の厳しい冬に対する耐性を持っていないため、春播きで栽培されている。しかし、春播き栽培でも近年、7月上中旬頃の登熟期の局地的な大雨や7月下旬から8月にかけての収穫期の高温の影響を受け、穂発芽や赤かび病の発生、細麦化のリスクが高まっている。
同研究では、さまざまなビール大麦の遺伝資源を秋播き条件で栽培し、冬季の北海道で懸念される越冬性について調査した。同社と農研機構が保有する152種類のオオムギを秋播きし、水はけの良い/悪い畑、雪中での罹病への対策有無、9月下旬/10月中旬の種まきと、条件を分けて栽培。その結果、水はけがよく、病気への対策を実施し、9月下旬に播種することで、北海道の秋播きが可能なオオムギを複数見出すことができた。
その中には二条ビール大麦も含まれており、秋播きに適性をもつ二条ビール大麦品種が開発可能であることが示唆された。北海道で秋播きが可能なビール大麦を開発することができれば、比較的気象の穏やかな夏季のはじめに収穫を迎えられ、気候変動の影響を軽減できる可能性があると推察される。
今後は基礎研究のパートナーである農研機構と遺伝資源の探索で引き続き連携し、同社で秋播き可能なビール大麦の品種開発を進め、2035年までに新品種を登録出願。また将来的には北海道だけでなく、気象条件の近い北米などの地域での実用化も検討する。
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