【国際ジャーナリスト・堤未果 氏に聞く】100年先の幸せを考える(1)2018年12月21日
・特別インタビュー2018年から19年へ
・協同組合いよいよ出番
2018年、小紙は「どうするのか? この国のかたち」をテーマとして掲げ、農業・農村を担う現場の人々や有識者からの問題提起を発信してきた。焦点はTPP11の発効を初めとした農産物貿易のさらなる自由化だが、農業や食にとどまらず日本人の暮らしに影響を与える法制度などの改革も進んできた。臨時国会では日EU・EPA協定の承認や漁業法、水道法、入国管理法の改正なども矢継ぎ早に強行された。これらの問題も含めて「この国のかたち」をささえてきた仕組みが足元から崩されようとしていると警鐘を鳴らしてきたのが国際ジャーナリストの堤未果氏だ。10月に『日本が売られる』(幻冬舎新書)を出版した堤氏に今年を振り返り2019年にどう向かうべきかを語ってもらった。
◆足元から崩される
--2018年はどんな年だと考えますか。
一言で言うと、第一次産業を始めとし、日本人のいのちや暮らしや安全保障に関わる資産が、政府の手で次々に売られた、「国家丸ごと民営化元年」と言えるでしょう。
米国のトランプ大統領が2017年1月の就任と同時に離脱したTPPは、安倍総理が関係国を熱心に説得しTPP11として息を吹き返させ、この年末の発効が決まりました。日本政府が殆ど審議無しで国内法を次々にスピード可決していったその拙速さに野党議員たちは首を傾げていましたが、そこには「TPP11発効に間に合わせる」という政治的背景があったのです。新刊「日本が売られる」に詳しく書きましたが、TPP11の条文とこの間の通常国会と臨時国会で可決した法律を並べてみると、どれも見事に一致しているのがわかるでしょう。
例えば企業に水道の運営権を売りやすくする「水道法改正」は、TPP11と来年2月に発効する日欧EPAの両方に重なる分野であり、欧州最大の水企業である仏ヴィオリア社はしっかりと日本政府の政策チームに自社の幹部を送り込んでいました。日本の水道は30兆円の有望市場だからです。2018年春には種子法廃止が実施され、「遺伝子組み換えでない」方の表示がしにくい方向に見直され、米国から輸入される農産物の残留農薬基準値の大幅緩和、自家採種禁止の品目が3倍以上増やされ、漁業や林業、酪農も一気に自由化が進められました。
こうした法改正は全て繋がっており、冒頭に申し上げた「国家丸ごと民営化」を目指す自由貿易(TPP、EPA、FTA、TISA、RCEPなど)に向かって、国内のコマが一気に進められたと言う事に気づかなければなりません。
このように点として起きているひとつひとつの事象を線で繋げるはずのマスコミは、一体何をしていたのでしょう? 2018年を通して、マスコミの論調は「暴君トランプに振り回される世界」、というものでした。これは非常にトリッキーです。何故なら個人に焦点を当てられた報道は、私たちの目を本質からそらせる作用があるからです。米国がTPPを離脱した、それ以来、2016年以前はあんなに盛り上がっていた国民のTPPへの関心が、まるで潮が引くように消えてしまったと思いませんか? 意図的だったかどうかはともかく、その結果、本当は今年1年をかけて検証しなければいけなかったTPPについて、報道は消え、国民の間でTPPが話題に上ることはほとんどなくなってしまいました。
もしマスコミがきちんと取り上げ、国民が考え、もっと検証されていれば、この数年間、同時進行してきた農協改革も種子法廃止も、そしてここに来て成立した漁業権改正も森林管理法改正も水道法改正も、全てがつながっていたと言う事実が、もっと早く明らかになったでしょう。2016年の大統領選挙以来、トランプや金正恩のような人物個人に焦点を当て続ける事で、恐怖心を煽られた私たち国民は本当の敵を見逃していたのです。
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