農政 クローズアップ詳細

2018.12.21 
【国際ジャーナリスト・堤未果 氏に聞く】100年先の幸せを考える(3)一覧へ

・特別インタビュー2018年から19年へ
・協同組合 いよいよ出番

◆対抗軸としての協同組合

--私たちはどう考え何をすべきでしょうか。
 
 今のこの流れの対極にあるのは唯一、協同組合だという認識が大切になっています。100年先の公共の幸せというものを設計していくのが協同組合ですから、対抗軸はこれしかない。
 私の今回の著書は「国家にとって決して売ってはならない社会的共通資本とは何か」というのがテーマでした。これは今、全世界のあらゆる国で問われていることです。日本はもともと協同組合がこれだけしっかりある国です。そういう意味で日本は100年単位で考えるという長期スパンの社会インフラがそもそもたくさんある。私は協同組合の思想が第3の道だと考えていますが、その土壌は日本にはずっとあるわけで、来年はそこに戻るということを全国民が意識に入れるべき年でしょう。
 そのために農協というものをなぜ先人はつくったのかを考えたい。
 問われるべきは「農協に今、どれだけ問題があるか?」ではなく、「何のために先人は協同組合をつくったのか?」です。今年は築地市場の移転や、卸売市場法改正もありましたが、卸売市場はいつ何のためにできたかを考えると、きっかけは100年前の米騒動ですね。生乳の指定団体制度も法改正されましたが、そもそも何のために作ったのか。これができたおかげで、大手の業者に買い叩かれないで酪農ができるようになったことを、私たち全員がもう一度立ち止まって思い返さなければなりません。
 JAの存在意義について全組合員がそれを認識し、来年は全組合員が消費者や地域の人々に、なぜJAは宝物なのかということをプレゼンできるぐらいになってほしい。
 JAグループは最近は政治的な発言はしなくなりましたが、むしろJAが今政治的に声を挙げなければ、一体いつ挙げるのでしょう? 第一次産業という最大の資産が売られようとしている危機に国家が直面している今、その価値を誰よりも知るJAが、声を大にして国民に、当たり前だと思っている手の中の宝の存在について、覚醒させて欲しい。
 11月19日。国連総会第3委員会(社会、人道、文化委員会、※全加盟国が参加)がついに小農宣言を採択しました。日本ではほとんど報道されていませんが、これは実はものすごく画期的なことで、第一次産業を守らないと人類には先がないということに世界中が気がつき始めているということの表れです。日本は全国津々浦々で小規模農家が多様性のある農業をしていて、JAがそれを束ねていますよね。
 企業のようにトップダウンの組織ではなく、多様性があって、それでいて目指すところは持続可能な発展や皆の幸福、と言うJAの志は、世界中が今「今だけカネだけ自分だけ」の価値観に対する揺り戻しの中で懸命に目指しているゴールと同じです。世界中のそれぞれの地域がそれぞれの地域の文化、伝統を大切にしつつ共存するのか、それとも全部画一化してマーケットにしてしまうのか、どっちにいくかのせめぎ合いに、今人類は立たされている。
 ウォール街にいた立場から申しますと、マーケットは消費者が動かしているのです。だから消費者教育というのはひとつの武器ですね。JAが旗振り役になってそのうねりを起こせる立場にいる事に気づいてください。売られた貴い資産を取り戻すのです。やり方はいくつもあります。出番ですよ、JAの。2019年は巻き返しを始めましょう。

 

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(堤未果氏のこれまでの記事など)
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