【クローズアップ:生乳需給】年度末に生乳廃棄警戒 難航ホクレン・乳業交渉は月内決着へ2021年3月8日
コロナ禍で生乳需給の不透明感が増す。来週末からの小中学校春休みに伴い学校給食牛乳が停止する。生乳生産が伸びる一方で、バターなど乳製品過剰は深刻化する。生乳廃棄回避に向け、業界一体の対応が正念場を迎える。
5年ぶり難航の21年度北海道取引交渉
5年ぶりに長期化しているホクレンと乳業メーカーの2021年度生乳取引交渉は、年度内の3月中に妥結する見通しが強まってきた。
大手乳業トップが「乳製品過剰対策の是正では双方の理解は一致している。詳細の詰めを行っている段階で、間もなく妥結する」と明らかにした。21年度飲用乳価交渉は、既に関東生乳販連をはじめ据え置きで決着済み。一方で加工向けを巡る北海道の生乳取引交渉は越年し、いまだに決着していない。交渉難航は、TPP大筋合意で一層の乳製品自由化が迫られた2016年以来、5年ぶり。
問題は乳製品「出口対策」
問題は、在庫が積み上がっている脱脂粉乳、バターの過剰対策。コロナ禍で業務用需要が停滞する中で、輸入代替措置などが問われている。いわば「出口対策」といわれるもので、このままでは、乳価へ波及し酪農生産現場にも混乱を招きかねない。昨春は国の脱粉対策が効果的だった。今回は特にバター在庫解消が難題だ。需要の伸びているチーズ増産での対応も欠かせないが、4月からは自由化で関税率がさらに下がるなど輸入品との競争は激しさを増す。
こうした中で、大手乳業トップは「ホクレンと乳業は酪農生産基盤強化では一致している。原資、財源が限られる中で、双方が知恵を出し解決する段階だ。月内には妥結する」とした。一方で、生乳増産は新酪肉近でも明示されており、乳製品過剰対策での国の支援拡充も焦点となる。
まるでジェットコースター
コロナ禍に伴う突然の全国の学校休校から1年。酪農乳業関係者は、上下に大きく振れたこの1年の生乳需給を「まるでジェットコースターのようだ」と振り返る。
何度か、大量の生乳廃棄が出かねない危機的局面があった。特に1年前の3月、長期間の一斉休校に伴う学乳停止で行き場の失った生乳の処理が大問題になった。学乳の割合が大きい中小乳業は経営的にも行き詰まった。
次に5月の連休時期。さらに夏場の8、9月期は夏季休暇短縮と需給逼迫から、例年以上に首都圏をはじめ大都市圏の飲用牛乳不足が懸念された。そして年末年始の牛乳不需要期にも再び乳製品処理しきれない生乳廃棄の恐れが一気に高まった。
結果的に、国の脱脂紛乳の輸入代替措置をはじめ牛乳・乳製品消費拡大対策に加え、生産者団体と乳業メーカーによる業界一体のコロナ対応で、最悪の事態は免れた。まさにジェットコースター状態だった。
再びの危機感
年末年始を乗り切ったが、問題は3月20日前後からの小中学校の春休み。学乳がなくなり、生乳処理で再び危機感が募っている。業界挙げて、年度末に何とか処理不能乳回避へ生乳需給調整が問われている。
今年は季節・地域別の生乳過不足が一段と大きくなる。まず、当面の最難関は学乳停止の年度末から年度初めの生乳処理が円滑にいくか。ここでは家庭内需要の拡大もおおきなカギを握る。コロナ禍での巣ごもり需要で牛乳の消費拡大がどこまで伸びるか。用途別需給動向に注目が集まる。
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