【クローズアップ:北海道酪農新時代】ホクレン生乳生産初の400万トン超 コロナ禍で販売強化が課題 農政ジャーナリスト・伊本克宜2021年4月16日
ホクレンの生乳受託乳量が、2020年度に初めて400万トンを超えたことが分かった。
北海道酪農は〝新時代〟に入った。順調な増頭、規模拡大が要因だ。一方で、新型コロナウイルス禍で業務用需要は低迷したまま。販売強化が問われる。
北海道酪農は「新時代」へ
北海道酪農は、生乳需要の過不足の波を経ながら、一貫して規模拡大を進めた。その結果が、400万トン超えに結び付いた。北海道酪農400万トン時代に入った。中央酪農会議が15日にまとめた2020年度受託乳量(販売乳量)実績では、全国は706万8000トン、前年度対比で101.1%と引き続き増産基調を維持した。このうち、北海道は400万7100トン、同102.0%、都府県は306万1000トン、同100.0%。
北海道が2%増産を続け、都府県も国の支援事業が奏功し、減産を脱し現状維持を保った。
北海道から九州までの全国9広域生乳生産指定団体別では、北海道に次ぐ関東が102万4000トンで99.1%とわずかに前年割れとなったものの、3番目の九州が59万5000トン、同100.6%など生産が上向いた。前年度を超えたのは北海道、近畿、中国、九州の4広域指定団体となった。
道産乳シェア56.7%に
20年度の生乳シェアは、北海道が56.69%と全体の6割に一段と近づいた。ホクレン以外の出荷分を含む全道の総生産量は415万トン超に達する見込みだ。
増産の最大の要因は、規模拡大や雌雄性判別精液の活用などを通じた乳牛頭数の増頭だ。
生産の主力となる2歳以上の雌頭数は、全道で48万6000頭と1年前に比べ7000頭以上増えた。生産の目安となる2歳以上の雌は間もなく50万頭を突破する。道内の個体乳量は8600キロ。増頭分で年間6万トンの増産効果がある。
増産の一方で業務需要低迷
だが、増産を手放しでは喜べない。コロナ禍で業務用需要が低迷したままだからだ。
中酪の20年度用途別販売実績を見れば一目瞭然となる。「巣ごもり需要」から家庭内牛乳・乳製品が堅調な一方で、外食、ホテル需要などが振るわない。典型は生クリームを中心とした液状乳製品の動向。20年度は125万トン弱で前年度に比べ5%落ち込んだ。液状乳製品は、国産生乳需要拡大の主力だっただけに、このまま状況が改善しなければ今後の生乳需給に悪影響を及ぼす。集荷した生乳を全量売り切るホクレンの販売力も問われる。ホクレンと大手乳業メーカーとの21年度生乳取引交渉が年度末ぎりぎりまで長引いたのも、過剰乳製品の処理を巡ってだった。
業務需要の低迷は、そのまま保存の利くバター、脱脂粉乳製造へと回り、在庫積み増しで今後の酪農家の経営にも響きかねない。
まん延防止拡大で不透明に
追い討ちを掛けているのが、感染拡大が止まらないコロナ禍での「まん延防止等重点措置」の拡大だ。東京に続き4月20日からは首都圏各県、愛知などに広がる。これで対象都府県は10。人口が集中する3大都市圏が入り、業務用需要の低迷が深刻さを増す。
Jミルクは15日、4月需給短信でまん延防止拡大に伴い「業務常用はさらに厳しい状況となる」との見通しを示した。
5000戸割れ目前など課題山積
北海道酪農は、明治以降の開拓、入植以降、戸数減を1戸当たりの規模拡大による増産で補い、生乳生産を増やしてきた歴史だ。特に1966年の加工原料乳補給金制度など酪農不足払い制度で経営安定が図られ、乳業メーカーの発展と酪農振興は同時並行に進んだ。
ただ、地域社会の維持から一定の酪農家戸数の確保は欠かせない。大きいことは良いことだの規模拡大至上主義は、酪農には当てはまらない。主産地・北海道にあってもあくまで大半が家族経営で地域コミュニティーあって酪農生産が成り立つからだ。
20年度末のホクレンの生乳受託酪農家戸数は5080戸と、5000戸の大台割れが目前に迫った。前年度に比べ88戸が離脱した。数は力で、政治、政策活動にも影響が出る。ただ、これまで三桁(100戸以上)の経営離脱が続いており、下げ止まりの傾向とも言える。
労働力不足と飼料高
コロナ禍の需給不透明以外に、構造的な課題も横たわる。大きいには労働力不足だ。早朝に搾乳という酪農の特質から他作目に比べ作業労働時間が圧倒的に長い。搾乳ロボットや酪農ヘルパー制度拡充など労働力支援が今後の経営を支えるカギを握る。配合飼料の高騰もコストアップ要因だ。やはり粗飼料の飼料自給率をどう引き上げるかの対応が必要だ。
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