東京都議選の行方 「風」とともに去りぬ 農政ジャーナリスト 伊本克宜【検証:菅政権19】2021年7月2日
7月4日投開票の東京都議選の行方は、今後の菅政権の行方を左右する政局含みとなってきた。大きな波乱要素は、今週初めまで病気休養していた小池百合子東京都知事の動向だ。キーワードは「風とともに去りぬ」か。
激戦区の一つ、千代田区選挙区(農水省など官庁街と日比谷公園そばの候補者掲示板)
127の第二国政選挙
都議選は127議席を目指し、第二国政選挙とされる。無党派層が多く、その時々の〈風〉は、その後の国政選挙の前触れとなり前哨戦となる。
立候者は271人と平成に入り最多となる。現有勢力は、4年前の初陣で第1党に躍り出た都民ファーストは46、自民25,公明23、共産18,立憲民主7、維新・生活者ネットワーク・無所属7。議席に対する候補者数を見ると、各党の戦略が透けて見える。
立候補者は都民ファ47、公明23と現状維持を狙う一方で、自民60と現有議席の2倍以上を立て、前回のリベンジ選挙と位置づけ第一党の奪還を狙う。立民も28人を立て議席増を見込み、共産は31人が立候補している。
自公で過半数なるか
都議選は最終盤を迎えつつあるが、自民優勢の半面、都民ファは勢いを欠く情勢に変化はない。ただ、ここに来て都民ファの支持率が再び上がってきた。逆に自民が落ちている。小池知事静養の同情票が増えているほか、あまり自民党が議席を増やすのはどうかとの、微妙なバランス感覚が働いているのかもしれない。
都議選の過半数ラインは定数127に対し64。国政与党の自公が過半数を制するのか。都民ファがどこまで議席減を防げるのか。共産、立民の伸長具合も注目される。
争点の一つ、東京五輪の在り方でも、安全・安心な五輪開催と延期や中止を言い争ったところで、既に7月23日開幕に向けカウントダウンは始まっており、水掛け論に終わりむなしい議論に終始する。むしろ、ポストコロナの東京の在り方、経済政策、莫大な借金が残る都財政と増税などで建設的な論戦が重要だ。
〈小池頼み〉に限界
焦点は自公過半数奪還に加え、都議会第一党・都民ファの議席の行方だ。
同党は地盤を持たず組織もない。つまりは世論の支持という〈風〉任せだ。大空に舞う凧と似ている。風が吹いているうちは高く上がるが、無風なら落ちてしまいかねない。結局、この4年間の議員在職中に何を地元や都政のために尽くしてきたのか。その実績を具体的に示せるかが明暗の分かれ目となる。疲労で静養中の小池知事頼みの限界を露呈した。
4年前は都民ファと公明が連携した相乗効果も出た。今回は国政と同じに自公共闘となり、まさに、自公vs他政党の図式ともなる。
ビビアン・リー主演の名画「風と共に去りぬ」のタイトルが思い浮かぶ。日本公開は今から70年近く前の1952年。だが、何度もテレビで再放映され、名優の輝きも加わり見るたびに新鮮さを失わない。題名の〈風〉は米国最後にして最大の内戦、南北戦争。〈去りぬ〉は同戦争を経て南部の貴族文化が崩れ去ることを示す。都議選という第二国政選挙、政治戦争を経て〈去りぬ〉はどの政党なのか。
問われる公明、立民、共産
都議選は、他政党の今後も占う。まずは最強の組織票を持つ公明だ。発祥の地・東京は公明の趨勢を示す。最近の国政選挙での比例得票数が大きく落ち込んでいる。2019年7月参院選は653万票余と、実に前回比104万票も減少した。今回の都議選は公明支持の動向を見る上でも参考になる。
野党の趨勢も分かる。共産は都議選では健闘が目立つ。若手の無党派が多く、一般人が抱く共産党アレルギーが少ないことがあるのかもしれない。問題は立民だ。かつての民主党時代は、都議選でも大きく議席を伸ばし、その勢いが国政選挙にも連なり、最終的に政権獲得にながった。
立民の現有議席は7と一ケタ。倍増するなど勢いがなければ、間近に迫る衆院選でも反転攻勢はかなり難しい。さらに、国民民主、日本維新、れいわなどの得票数もどうなるのか。
結局は「小池劇場」か
しかし、最終盤の3日土曜日でも都民ファの街宣活動に立つなど小池都知事の動向次第で、選挙結果は激変しかねない。マスコミが一斉に報道しその波及効果は計り知れないからだ。各党の党首級の応援演説など消し飛んでしまいかねない。
冷静に見ると、結局は「小池劇場」なのかとなる。
変幻自在から〈魔法使いユリー〉とも称される小池の体調はどうか。大きく影響したのがペットロス。家族同様に長年かわいがってきた愛犬、18歳雌のヨークシャーテリアの「そうちゃん」を亡くし、気持ちが萎えたのは間違いない。名前の由来は「総理大臣」から。初代女性宰相を目指す小池らしい。「小池劇場」上映の「風と共に去りぬ」の結末に、与野党の政治関係者は固唾をのみながら投開票の4日日曜日を迎える。
〈大安〉7月4日は米独立記念日
7月4日は米国独立記念日と重なり、バイデン大統領のコロナ収束への節目だ。選挙で縁起の良い「大安」で、普通は与党に吉報をもたらすともされる。
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