【クローズアップ】「異常気象」 日常化する「猛暑」に急がれる対応2022年11月4日
例年より早い梅雨明けが訪れた6月27日に「これからが防除の正念場ーいつもと違う夏が来る」(※1)と書いた。その直後の6月下旬から7月初めに、東日本と西日本で気象庁が統計開始以来という高温が記録され、それ以降全国各地で「猛暑日」「真夏日」が続く暑い夏が全国を覆った。さらに大型化した台風が接近・上陸し、前線の活動と合わせて「記録的な」大雨を降らし、洪水や土砂崩れなどの水害をもたらし、「いつもとは違う夏」がやってきた。その原因はどこにあるのか?
1200年に1度が、5年に1度に
関東が梅雨明けしたのは6月27日、その後、6月29日151地点、30日179地点、7月1日235地点で、気象庁が統計を取り始めて初めてだという気温35度以上の「猛暑日」を記録した。その後もたびたび全国各地で「記録的な猛暑」をもたらすだけではなく30度以上の「真夏日」が毎日のように記録されてきた。
なぜ今年の夏は、こんなに暑くなったのだろうか? 「地球温暖化」の影響だといわれるが本当にそうなのか?
そうした疑問に、気象庁気象研究所は、この6月30日から7月初旬の異常気象に、地球温暖化が与えた影響を定量化するための研究を文部科学省気候変動予測先端研究プログラムの一貫として取り組み、その研究成果を9月6日に公表した(※2)。
その研究は、「極端な気象現象」(以下「極端現象」という)の発生確率とその強さに対する人為起源の地球温暖化の影響を定量化するイベント・アトリビューション(Event Attribution)というスーパーコンピュータを駆使した方法で行われた。
それによるとこうした極端現象は、「ラニーニャ現象(※3)等の影響と地球温暖化の影響が共存する」状況では、「5年に1度程度の確率」で起ることが分かった。
これに対し、地球温暖化の影響が無ければ「同じラニーニャ現象等の影響があったとしても、およそ1200年に1度という非常に稀な事例」だという。
つまり「猛暑」の発生確率が240倍になり、「地球温暖化」が止まらない限りいつ起こっても不思議ではないということだ。研究者には「40度が当たり前になる」と考える人もいる。さまざまな「地球温暖化対策」に取組んでいるが、いつその成果が現実のものとなるのかは、はっきりしない(※4)。そうしたなかで、「極端現象」が常態化したときにどう対処していけばいいのかが、大きな課題として問われているのではないだろうか。
急がれる農業の対応
「猛暑」は私たちの日常生活だけではなく、あらゆる産業にも大きな影響を与えるが、猛暑になる地域の生態系にも大きな変化が起きることは間違いない。生態系の変化の影響をもっとも大きく受けるのは、農業・森林業・漁業など一次産業だ。
だから農業は、猛暑など異常気象が頻繁に起こりうるということを前提に、対策やこれからのあり方を考えていく必要があるといえる。それも早急に。
猛暑が頻繁に発生すれば、生態系がかわり、発生する病害虫や雑草も当然いままでとは異なるものとなる。それに対応した防除剤や防除技術の開発はもとより、施肥のあり方や栽培技術。さらに高温下でも食料を安定的に収穫でき供給できる「品種・種子」の開発も急がなければいけない。
そのためには、最新の生命科学はもとよりあらゆる科学・化学的知識や技術、AI(人工知能)などを総動員して、早急に実践していく事が大事だといえる。残された時間はそれほど多くはないと思われる。
(田中邦彦)
※1:https://www.jacom.or.jp/nouyaku/closeup/2022/220627-59873.php
※2:https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01104.html
※3:https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino.html
※4:なお、同研究所によれば、ラニーニャが毎年起こっているわけではないので「ラニーニャ年『以外』の年も含めて見積もった場合の発生確率は、『4.6%程度』(22年に1度程度)」で、「地球温暖化がこのまま推移すると、これらの確率はもっと高くなると考えられ」「『4.6%』の確率が少しずつ上がっていく」と考えている。
重要な記事
最新の記事
-
プロの農業サービス事業者の育成を 農サ協が設立式典2025年10月21日
-
集落営農「くまけん」逝く 農協協会副会長・熊谷健一氏を偲んで2025年10月21日
-
【サステナ防除のすすめ】水稲除草剤 草種、生態を見極め防除を(1)2025年10月21日
-
【サステナ防除のすすめ】水稲除草剤 草種、生態を見極め防除を(2)2025年10月21日
-
随契米放出は「苦渋の決断」 新米収穫増 生産者に「ただ感謝」 小泉農相退任会見2025年10月21日
-
コメ先物市場で10枚を売りヘッジしたコメ生産者【熊野孝文・米マーケット情報】2025年10月21日
-
【JA組織基盤強化フォーラム】②よろず相談で頼れるJAを発信 JA秋田やまもと2025年10月21日
-
【中酪ナチュラルチーズコンテスト】出場過去最多、最優秀に滋賀・山田牧場2025年10月21日
-
11月29日はノウフクの日「もっともっとノウフク2025」全国で農福連携イベント開催 農水省2025年10月21日
-
東京と大阪で"多収米"セミナー&交流会「業務用米推進プロジェクト」 グレイン・エス・ピー2025年10月21日
-
福井のお米「いちほまれ」など約80商品 11月末まで送料負担なし JAタウン2025年10月21日
-
上品な香りの福島県産シャインマスカット 100箱限定で販売 JAタウン2025年10月21日
-
「土のあるところ」都市農業シンポジウム 府中市で開催 JAマインズ2025年10月21日
-
コンセプト農機、コンセプトフォイリングセイルボートが「Red Dot Design Award 2025」を受賞 ヤンマー2025年10月21日
-
地域と未来をさつまいもでつなぐフェス「imo mamo FES 2025」福岡で開催2025年10月21日
-
茨城大学、HYKと産学連携 干し芋残渣で「米粉のまどれーぬ」共同開発 クラダシ2025年10月21日
-
まるまるひがしにほん 福井県「まるごと!敦賀若狭フェア」開催 さいたま市2025年10月21日
-
北〜東日本は暖冬傾向 西日本は平年並の寒さ「秋冬の小売需要傾向」ウェザーニューズ2025年10月21日
-
平田牧場の豚肉に丹精国鶏を加え肉感アップ 冷凍餃子がリニューアル 生活クラブ2025年10月21日
-
誰もが「つながり」持てる地域へ 新潟市でひきこもり理解広める全国キャラバン実施2025年10月21日