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根深い貧困大国化 日本への要求は強まる 中間選挙と米国社会 国際ジャーナリスト・堤未果氏に聞く2022年11月21日

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米国の中間選挙ではバイデン大統領が率いる民主党が上院の主導権を握る結果となったが、下院は共和党が過半数を獲得する見通しとなり、バイデン政権への批判が強いことも示された。今、米国社会はどのような状況なのか、そして中間選挙後に米国政治はどう動くのかなど、米国の市民の考え方や動向にも詳しい国際ジャーナリストの堤未果氏に聞いた。

国際ジャーナリスト 堤未果氏国際ジャーナリスト 堤未果氏

大企業偏重 増える車上生活者

――選挙前から激しいインフレで物価高が大きな問題と言われていましたが、米国社会はどんな状況なのでしょうか。

インフレは直前まで上下院とも共和党が圧勝と予想されていた大きな理由でした。一般の米国民の生活が、非常に苦しくなっているからです。米国は日本と違って賃金も上がっていますが、インフレが酷過ぎて物価の上昇に追いついていないのです。現地に住む私の親戚も「信じられないぐらい物価が高く、稼いで切り詰めても、まず貯金などできない状況」と嘆いていました。

特に衣食住という一番基本的生活に関わる部分の値上がりが国民生活を直撃しています。車社会なのでガソリンの値上がりは生活に直結しており、仕事や買い物、病院に子供の送り迎えまで影響してしまう。普通の労働者は家賃が高過ぎて払えず、車上生活をしている人が急増していますが、統計上のトリックで彼らの存在は外には見えません。今はパンデミック初期のような政府による現金給付はありませんから、みなさんクレジットカードがパンクするまで使うしかないんですですが、ガソリンスタンドも現金払いではなくカードなので、利子付きのカード支払いがどんどんかさんでいくわけです。

アパートの家賃は信じられないほど高騰しており、都市部のワンルームで3000ドル(約40万円)、家族用だと5000ドル(約70万円)、平均年収なら月収が全て家賃で飛んでしまいますが、今、米国の労働者の7割は平均年収にも届いていない。税金のかからない車上生活になってしまう人が増えて、中古車ローンがパンク寸前になっています。米国の中古車は日本と違って状態が悪いので、その修理代でまたカードローンの借金が増えてゆくのです。

働いている人の5人に1人が食べ物が買えないという状況なので、無料の食料配給所にも車が何キロも列をなしていますが、ガソリンが高くてその列までたどり着けない人も少なくありません。

『ルポ 貧困大国アメリカ』に書いた、低所得者用に国が発行するフードスタンプもあるのですが、卵や牛乳が日本円で1000円近いなど、食品価格が上がり過ぎて、もう足りなくなっています。今は1カ月230ドルほどの支給ですから、日本円で月3万2000円程度ですが、ますます、栄養はないけれどおなかが膨れる安いインスタント食品しか買えず、それで病気になっても市販薬は高くて買えない、となってしまう。

億万長者がいるのに増える飢餓人口

金融、軍需、製薬、IT、バイオなど、とんでもなく稼ぐ業界と億万長者がいる国なのに、飢餓人口が増えているという、文字通り究極の「貧国大国アメリカ」が、私たちが見ている選挙報道の背景、実体経済なのです。

これだけ「生活苦」で、現政権に対する不満が膨れ上がっていましたから、絶対に民主党は負けるだろうと思われていました。最後に追い上げ僅差で上院は民主党が維持しましたが、貧困大国化は根深く、各地でささやかれている、もうすぐ内戦が起きるのでは、との予測は、決して誇張とは言えません。

この根本にあるのは、今も続く戦争経済です。1961年にアイゼンハワー大統領が警告した軍産複合体の政治支配は健在で、今回の中間選挙も勝者はと聞かれたら、「軍産複合体」に他なりません。

ウクライナ危機でも、苦しんでいる市民の支援するより100兆円の予算を皮切りに実施された大量の武器放出セールによって、武器メーカーが空前の利益をあげました。トランプの登場で分断が進んだイメージが強いですが、米国の二大政党は今もずっと軍産複合体に支配され、その皺寄せを国民が被り貧困大国化が進むというこの構図は変わっていないのです。

今後ますます強まる日本への要求

――日本への影響はどうなるでしょうか。

そこが一番問題です。これまでもそうでしたが、米国は国内が揉めている時ほど、外から成果を持ってこようとし、日本が犠牲になる理不尽な要求をしてくるからです。トランプ大統領がGAFAMに日本のデータ市場を差し出した、日米デジタル貿易協定を思い出して下さい。議会がねじれた今、2年後に大統領選挙を控えたバイデン政権も、今後ますます日本への要求を強めてくるでしょう。

先程お話した「軍産複合体ファースト」でいうと、手始めに今週13日の日米首脳会談で、岸田総理はバイデン大統領に防衛費の大幅増額の決意を示してきましたね。円安が進む中、米国製武器を買い続けてもらう日本には当然防衛費を増額してもらわねばなりません。中間選挙の勝者が米軍産複合体であることがよくわかる話です。バイデン大統領に褒められた、などとはしゃいでいる場合ではありません、向こう5年で45兆円に増やす防衛費の財源は増税、犠牲になるのは私たち国民です。

先週、衆議院で賛成多数で可決した、日米FTAに基づく牛肉セーフガード(SG)に関する見直しもあからさまな例の一つですね。米国からの輸入牛肉が上限を超えても、TPP参加国からの輸入牛肉と合わせた合計がTPP向けの枠内(63・7万t)に収まる限り、日本はSGを発動できなくなりました。今、国内の畜産農家が、かつてないほどの危機に晒されている状況で、米国に忖度してさらに牛肉市場を開く内容に賛成したのは本当に深刻で、もっと野党に抵抗があって然るべきでした。ここはこれからもっとこじ開けてきますから、今本当に、国も消費者も一丸となって、国内生産者を死守せねばなりません。

エネルギー政策も同様です。先日、エジプトでCОP27が開催されましたが、バイデン大統領はスマート農業とバイオ食を軸にした方針を明らかにしています。日本の脱炭素政策の強化へプレッシャーも強くなって来るでしょう。世界のドル離れが進むほどに、同盟国への要求は大きくなり、ドルを支える円安が続き、物価は上がり続け、E U同様に厳しい状況になってゆくことが予想されます。地域単位での食とエネルギー自給率の確保が急務です。

――米国議会の動向はどう見ればいいのでしょうか。

日本から見て分かりにくいのは、共和党も民主党も一枚岩ではないことです。メディアでは米中対立が煽られていますが、親中議員はどちらの党にもたくさんいる。そもそもロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー高騰で国民生活が破綻する一方で、米国の石油業界は空前のもうけを出しています。エネルギーをロシアから買えなくなって米国から割高で買わされたEUを見て下さい。ドイツでは国内企業の多くが国外へ流れてしまいました。ワクチンメーカーもコロナ禍で信じられないほどの利益を上げており、日本もCDC支部まで設置させられて、いよいよこれから大量に買わされるでしょう。

このような巨大な業界は共和、民主の両方を支援しています。それが両党とも一枚岩ではない原因のひとつで、その利益を守ろうとする政策は変わりません。つまり、米国は「グローバル企業ファースト」なのです。ウォール街は当然、両党に投資しています。

仮想空間で考え極端に

ただ、新型コロナウイルス感染症対策など、真っ二つに分かれている政策もあります。例えば学校でのコロナワクチン接種については、共和党系の州は反対しており、現時点で24州は学校で子どもへの予防接種をしていません。マスクや行動制限も民主党の州はきつく、共和党は逆でした。

FDAが承認していないワクチンを打ちたくないとして、共和党主導の州に引っ越す人も少なくありません。「青」から「赤」への移住が起きたのもこの2年間の特徴でした。

――同じように「生活苦」にあえいでいるのに、お互い憂さ晴らしをするように相手のせいにし、さらに「分断」が進むということですか。

残念ながらそうです。政府もグローバル企業も、イデオロギーで対立してくれていた方が自分たちに矛先がむかず都合がいいのです。

さらに今、情報の民主的機能がほとんど破綻してしまっていることも注意しなければなりません。2001年の9・11までは苦しいときにはともに手をつなごうという機運もありましたが、今はデジタルが情報の中心になったことで、プラットフォーマーのアルゴリズムによる情報支配が、深刻な問題を引き起こしています。

選挙システムの欠陥は昔からありましたが、その議論すら封じられてしまっている。イーロン・マスクがTwitterを買収したのは象徴的でした。今後彼はリベラル系のメディアからかなり叩かれるでしょう。

かつては共和党の支援者と民主党の支援者はある程度すみ分けていて、今のような形でここまで憎しみ合うような「分断」はありませんでした。ところがGAFAМなどビッグテックの存在が日常に入り込むほどに、感情的な亀裂は拡大していってしまった。SNSでは同じ政治的思想を持った同士が仮想空間に集まることで思想は極端になりますが、米国ではそれに加えて検索エンジンによる選挙介入まで横行し、議会で大きな問題になっています。

デジタル技術の進化は便利さをもたらす一方で、人々は、異なる意見の人と話し合い、妥協点を見つけてすり合わせするという、手間のかかることをしなくなってしまった。ネットで調べればすぐ答えが出ることに慣れてゆく中、政治家にも中道がいなくなりました。異なる見解のプラットホームの役割を果たすはずのメディアは、分断をあおる役割をしてしまっている。だから今、本当に何が起きているかを知るには、時系列で歴史を見て、現場の声を聞いて、お金がどこからどこに流れているかを見なければなりません。

わかりやすい対立構造の選挙報道は、今見るべき本質を見えなくさせます。

日本もアメリカも、犠牲になっているのは私たちのような一般国民、そして国内産業であるという構造が進んでいます。怒りをぶつける対象を間違えず、大切なものを足元から守っていくために、エネルギーを注ぐことが大切です。

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