TPP、所得倍増...生産者交えて熱い討論2013年11月19日
農林記者会が創立65周年記念シンポジウム
農業、食品産業などの専門紙26社でつくる農林記者会は11月18日、東京・平河町の海運クラブで創立65周年記念シンポジウムを開催。生産者、行政、団体など200人が参加し、盛況だった。
◆猫の目農政を変える
今シンポジウムのテーマは「所得倍増の道を探る?食と農がつくる日本の未来?」。小里泰弘農林水産大臣政務官、鈴木宣弘・東京大学大学院教授が講演したほか、3人の生産者が登壇しパネルディスカッションを行った。
小里政務官は自民党の前農林部会長で、そのとき「農業・農村所得倍増目標10カ年戦略」を策定した。この戦略は15本の基本政策と、それにかかわる100近い具体策を提案したもの。講演では、この10カ年戦略の目標を「新規就農者を増やし、農地集積をすすめて規模拡大し、生産を拡大するとともに、効率化をはかり、付加価値をつけて販売することをめざすものだ」と紹介し、それぞれの政策を解説し、実現に向けた意気込みを語った。
この10カ年戦略については、パネルディスカッションで「猫の目農政と言われてきたなかで、向こう10年間の基本的姿勢を示したのは初めてではないか」などと生産者からの評価があった。
(写真)
パネルディスカッションのようす
◆TPP「農業にメリットない」小里氏
鈴木教授は、TPPと所得倍増戦略が両立するかどうかをテーマに講演。政府が交渉内容を隠ぺいしていることを痛烈に批判し、「TPPは富をにぎる米国の大企業1%による、1%のための協定。これまで助け合いや相互扶助をめざしてつくられ、守られてきた日本のルールが変えられてしまう」と強調した。
TPPについては、小里政務官も「10カ年戦略は、TPPや関税撤廃を前提にしていない。これらを前提にすると根本から崩れる」として、改めて「(政府は)党の決議、国会決議を守って交渉にあたっていると信じている」と述べた。また、パネルディスカッションでも生産者からTPPについて問われ、「TPPに、農業へのメリットはない」と断言した。
◆6次産業化で所得倍増は難しい
パネルディスカッションに登壇したのは、新潟県の米生産者の大越正章さん、山梨県のブドウ生産者の三森かおりさん、千葉県の酪農家の長嶋透さんの3人。
大越さんは全国の生産者仲間とともにつくった米のインターネット直接販売サイト「ノウカーズ」を紹介。さらなる規模拡大をすすめるためには、「優秀な専業の農業経営者に注力して資金を投入することが大事だ。行政には、スポット的に多額のお金を一カ所に集中させる度胸がほしい」と要望した。
長嶋さんは、地域の米農家とともに試行錯誤しながら稲WCSの作付を増やしてきた経緯などを紹介しながら、「せっかく稲作農家と畜産農家のウィンウィンの関係をつくっても、制度が変わったとたんに飼料用イネから備蓄米に作付がシフトし、耕畜連携が崩れそうになってしまった。現場の努力を無にするような制度改革はやめてほしい」などと要望を述べた。
三森さんは、JA出荷と並行して行っている加工や直売などの6次産業化の取り組みを紹介。その経験から、「6次産業化は、実際にはあまり農業者の所得にはつながらないと思う。やはり、モチはモチ屋の言葉通り、ノウハウを持ち、生産者の夢を実現してくれるような製造業者と連携することが大事だ」と述べた。
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