農政 ニュース詳細

2015.03.05 
営農経済事業改革を実践 東京農大総研がシンポ一覧へ

プロを育成し、対応力強化へ

 農協改革の声が高まる中で、JAグループは自己改革の取り組みを強めている。その一つが営農経済事業で、東京農業大学総合研究所は21日、東京都世田谷区の同大学で、「総合農協における営農経済事業改革の実践」をテーマに、営農経済改革を実践しているJAの組合長を招き、シンポジウムを開いた(本紙など後援)。GIS(地理情報システム)を導入して農地の利用集積に取り組んでいる岩手県のJAいわて中央、地元の貝化石を使ったブランド化など独自の経営戦略を展開する福島県のJA東西しらかわ、商工会との提携で6次産業化に取り組む秋田県のJA新あきたの3JAの組合長が実践報告した。

ディスカッションする報告者

 政府の「農協改革」に対して、JA全中は、昨年9月にJA自己改革案をまとめ、「農産物の有利販売と生産資材の有利調達に最重点をおいた事業運営を行う」ことを打ち出している。シンポジウムでは、具体的な担い手支援策や営農事業改革策を探った。

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ディスカッションする報告者

 

農地管理にマップ化

JAいわて中央 藤尾東泉 組合長 JAいわて中央は9000haを超える水田を持つ米作地帯。水田を中心に、野菜を加えた担い手経営体を明確にして、農地の利用集積を進めている。その際、「人・農地プラン」や「農地中間管理機構」など、国の政策・制度を効果的に活用しているところに特徴がある。
 特に、GISのシステムを導入して農地を管理し、利用集積の作業を効率的に行うとともに、所有者や水田の条件など細かい情報を借り手に提供することなどで、事業のスムーズな実行に役立てている。
 農地のマップを作成し、相談・受付業務、経営転換協力金、耕作者集積協力金、農地集積協力金の算出などのサポートに活用。これまでの取り組みによって、すでに約900haの水田を集積した農事組合法人も生まれており、農地管理にGISは大きな威力を発揮している。
 こうした法人経営に対して、JAがどのような支援ができるかが重要な課題だが、「法人からはJAの生産資材が高いという声があり、入札で購入する法人が出てくるかも知れない。農協ではこうした法人へ還元措置もとっているが、取引きの後ではなく、メリットが分かるようになるべく早くするなど工夫が必要になる。特に米の価格が下がるなかで、法人経営への支援が、これから重要だ」と、藤尾東泉組合長は話した。

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JAいわて中央
藤尾東泉 組合長


貝化石でブランド化

JA東西しらかわ 鈴木昭雄 組合長 JA東西しらかわは、合併前に7つあったJAのブランドを「みりょく満点」のブランドに一本化した。同JA管内には、太古の貝化石の地層があり、これを土壌改良材に使用。貝化石はミネラルを豊富に含んでおり、これを投じたほ場で作ると農作物の機能性が高まる。
 貝化石には放射性物質を吸着させる性質があり、原発事故の後も、東京など大消費地に積極的に売り込み、風評被害の払拭、信頼の回復に努めた。またファーマーズマーケットと併設したレストランでは地元産の農畜産物を使い、消費者を呼び込むことで、消費の拡大を実現し、農家の生産意欲を高めている。
 平成26年度からは「3本の矢プロジェクト」に取り組んでいる。1本目は完全密閉型の植物工場だ。貝化石利用のように、植物工場で作る野菜の機能性に注目した。病院食や高齢者に合せた食材の新たな市場開拓ができるものと期待している。
 2本目が和牛繁殖モデル農場である。JA出資型法人で、農家からも出資をつのる地域参加型の仕組みを取り入れた。
 3本目は飼料米産地づくり。肥料、資料、農機メーカー等との連携で、立毛乾燥の生産システムにチャレンジする。
 鈴木昭雄組合長は、JAが自ら新しい営農や販売事業に取り組むことで「農家が少しでも生産者としてプライドを持って欲しい。困ったから助けて、補助金をくれといっていては、後継者は育たない」と、自分で考え、挑戦することの必要性を強調した。

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JA東西しらかわ
鈴木昭雄 組合長

 

営農センター統合で

JA新あきた 船木耕太郎 組合長 JA新あきたは、販売額の8割強を米が占める米単作地帯で、米価の下落などで販売額の落ち込みが大きい。このため7つの営農センターを統合し、園芸品目生産拡大のプロジェクト事業に取り組んでいる。特に26年度見込みで約23ha、3600万円の枝豆は日本一をめざし、また地域特産のダリアの拡大に力を入れている。
 特にJAの販売戦略として期待し、力を入れているのは、地元の秋田商工会議所入会による農商工の連携である。地元商工業者との連携による消費者や流通側のニーズに合った農産物、加工品の生産・販売体制を確立することが狙い。
 また、県を挙げて取り組んでいる枝豆の販路拡大、特に地元消費拡大に向けた冷凍化での連携を期待する。
 すでに、連携によって市内のホテルにおけるダリアのブライダル利用、枝豆の加工、県内蔵元へもち米の提供、商店街への直売所の出店など、さまざまな面で新しい芽が出ている。
 船木耕太郎組合長は、「JA改革で残念に思うのはJAの認知度が低いこと。事業改革と併せてJAが取り組んでいることを知ってもらう取り組みが必要。農商工の連携等による社会貢献に力をいれていく」と言う。
 意見交換では、JAの営農指導のあり方が取りあげられ、「JAにはプロのサービスが求められている。営農や技術面では専業農家にかなわない。JAは経営や税金のプロに徹して指導すべきだ」。
 またJAの職員には「常に何か改革をという意識を持ち、新しい提案や考えを出して欲しい」、「もっと外に出てネットワークを拡げる必要がある」などの意見があった。

(写真)
JA新あきた
船木耕太郎 組合長

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