進む中国の「農業産業化」 農村開発企画委員会が日中交流シンポ2015年3月27日
一般財団法人農村開発企画委員会は18日、東京で平成26年度研究交流会・日中交流シンポジウムを開き、6次産業化による農山漁村活性化について、日本、中国両国の報告をもとに意見交換した。特に、日中の状況を比較するなかで、6次産業化を担う農民組織の経営・所有・労働のあり方が焦点になった。
農村開発企画委員会は、日本と中国の農村地域開発分野の交流事業として、平成8年から中国との間で研究交流を進めている。
特に最近、中国では、農民所得の向上をはかるため、「農業産業化」を進めており、その形態と利益配分の仕組みなどについて報告があり、関心を引いた。
◆農村の発展がカギ
劉志仁・中国国務院参事は、中国農政の展開について報告した。それによると、この3年間で中国における食糧の生産量、農民所得の向上は著しく、食糧は2012年に5億8958万トンだったものが、14年には6億710万トンと、0.9%増加。農民所得も同じく、7916元から1.2倍の9892元、に増加した。
一方で、都市と農村は一緒に発展しているが、課題は多い。劉参事は、「困難と挑戦」と称して、(1)都市部と農村部の格差の拡大、(2)地域間の格差の拡大、(3)経済発展の減速に伴う「三農問題」の厳しい情勢、(4)自然資源の過度の消耗による自然環境の悪化、(5)国際農産物市場からの圧力―の6つを挙げる。
特に都市部と農村部の格差は、所得格差だけでなく、教育、生活環境の悪化として拡大していることを指摘。「農村部の全面的な発展ができるかどうかは、中国の現代化を実現するキーポイントになる」と、同参事は指摘する。
また「三農問題」も、経済成長が減速している中で「当面における最大の問題。いかに農業の基礎的な地位を維持し、農民所得の連続増長を保障するかは急務の課題だ」と、強調する。
中国では2012年に習近平体制が確立し、(1)強農・恵農・富農方針、(2)構造改善の推進、(3)食糧安全確保、(4)農業・農村関連法制度整備、(5)農村改革の深化―を提起。李克強総理は、「あくまで三農問題を最重要課題に位置づけ続け、農業をより強く、農民をより豊かに、農村をより美しくする」と表明した。
構造改善では、▽食糧作物と工芸作物、飼料作物の並行▽節約型農業技術の応用、化学肥料と農薬使用のゼロ化▽農業の1次産業と2次、3次産業の融合▽適正規模経営、基準化、専門化、ブランド化、情報化、農民組織化の推進を挙げる。ただ、こうした方策を実行するため、地方政府が、資金調達のため土地の徴用や借金に頼ることになると、あらたな問題が生じる恐れがあることも劉参事は指摘した。
◆竜頭企業がけん引
また、「農業産業化」についての仕組みを張照新・中国農業部農村経済研究センター研究員が報告。それによると農業産業化には会社と農家、合作社と農家、会社と合作社と農家による経営の3形態があり、特に会社(竜頭企業)を中心とする産業化が進んでいることを紹介。
2012年から竜頭企業への支援が厚くなり、消費市場の需要に応えた野菜の生産が伸び、高付加価値生産が生まれ、産地形成が進んだ。さらに竜頭企業を中心とした2次、3次産業化が拡大し、約2000万人の就業機会が生まれたという。
「竜頭企業の効果は、小規模の農家に波及している。これからは規模の大きい農家に及ぶようにしなければならない」と、張研究員は、農業政策が新しい局面に入ったことを指摘する。
実際に中国の農業産業化はどのように進んでいるのかについて、張安明氏(一般社団法人・農山漁村文化協会)は、中国江蘇省句容市の先進例を紹介。特にエリアを決めて、生産基盤を整え、竜頭企業を誘致する「現代農業産業園区」は、桑の実の酒づくりやブドウの観光農園、茶文化レジャー園、レストランなどを備えた園で、企業や農民が出資する仕組み。
農家は農園での賃金収入、自分の農地での家族経営収入、仕送り・年金などの「移転収入」、それに借地料や金融資産運用などで、全国農村住民の平均をはるかに上回る収入を得ているという。
このほかシンポジウムでは、元農水省農業総合研究所海外部長の白石和良氏が、「中国の農業産業化経営における家族経営の分解と再編」で報告。日本の6次産業化については、津田渉・秋田県立大学教授、酒井富夫・富山大学教授が、それぞれ話した。
(写真)
中国の農業産業化で意見交換する農村企画開発委員会の参加者
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