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【コラム・森田実の政治評論】この秋に政治は動く~安倍改造内閣の課題~2014年9月1日

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【政治評論家・森田実】

・狭き門の内閣改造目玉は幹事長
・外交―決断迫られている安倍首相
・日本経済―アベノミクス危うし

 9月上旬の内閣改造を前にして自民党内は静かです。じっと安倍首相の人事の決定を待っています。自民党内には初入閣を熱望している国会議員が50名以上いると言われています。それぞれの派閥の中堅幹部です。自民党内は内閣改造に神経過敏になっています。

 「剛強なるは必ず死し、仁義なるは王たり」(『古文真宝』)

◆狭き門の内閣改造 目玉は幹事長

 閣僚になるには狭き門を通らねばなりません。18の閣僚ポストのうち、すでにいくつかは内定しています。内閣官房長官、財務相、経済再生相、国土交通相は事実上、決まりました。女性閣僚枠も考えると、狭き門はさらに狭くなります。内閣改造終了とともに、自民党の安倍体制下の一枚岩のごとき団結の時代は終わるのは不可避です。
 今回の内閣改造の目玉は幹事長人事です。幹事長の任務は、改造後の党内をまとめること、選挙を勝ち抜くこと、国会を円滑に運営することとともに、2015年9月の自民党総裁選で安倍再選を実現すること、です。もしも2015年通常国会の終盤で、安倍首相の人気が落ち次の国政選挙は安倍首相では戦えないという空気が党内に支配的になったときは、安倍首相が2015年6月に衆議院を解散し衆院選を断行するという事態も起こり得ます。このとき誰が幹事長かが、安倍首相にとって大きなことです。

 

◆外交―決断迫られている安倍首相

 安倍首相は、日中関係、日韓関係の改善について決断を求められる立場に立たされました。この秋(11月)には、中国でAPEC首脳会談が行われます。主催者は習近平中国国家主席です。APEC首脳会議で日中両国首脳は接触しますが、会議が短時間の儀礼的なものに終わるのか、中身のある会談になるのかが問題です。単なる儀礼的な挨拶で終わることは、冷たい日中関係の現状が続くことを意味します。日中対立が慢性化すればアジア経済に悪影響が出るでしょう。日中対立の慢性化は、アジアの平和と経済の成長を妨げます。これは大いなる損害です。安倍首相に求められているのは柔軟な精神です。
 日韓関係の方も待ったなし、です。朴槿恵韓国大統領は対日関係改善に意欲を示し、2014年中にいわゆる従軍慰安婦問題に誠意ある態度を示すよう日本政府に求めました。安倍首相がこの朴韓国大統領の呼びかけを無視することはできません。従軍慰安婦問題はもはや日韓両国だけの問題ではなくなりました。従軍慰安婦問題は世界の紛争地域で繰り返される女性への性暴力問題とともに論じ始められているのです。
 安倍政権は「軍の強制を示す資料がない」と言い続けていますが、この日本の言い分を世界は受け入れません。日本政府は韓国政府に向かって「未来志向」を訴えていますが、加害者が言う「未来志向」は責任回避と受け取られてしまっています。いま安倍首相に求められているのは大局的判断に立って柔軟な対応に踏み切ることです。

 

◆日本経済―アベノミクス危うし

 安倍首相は地方創生枠として約4兆円を示し、地方経済の再生に着手する構えですが、いま地方にとって最も大切なものは、カネではないと思います。地方を大切に、農業を愛し、自然を尊敬する心をもった「仁」の政治です。
 4月の消費税引き上げによる消費の低迷について安倍首相や甘利経済再生相は「想定内」と強気な言葉を口にしていますが、実態は予想以上に深刻です。安倍首相は、 2015年の消費税再引き上げの決定を2015年11月に行う予定ですが、「中止」ということも十分あり得る状況です。再引き上げの「中止」はアベノミクスの失敗との非難を受けるでしょう。消費税再引き上げは進むも地獄、退くも地獄です。このためか、安倍首相周辺から「2014年末衆院解散」説が出ています。安倍首相が「増税反対・減税推進」を公約して総選挙を行うという話です。総選挙で消費税再引き上げ反対を訴えて安倍政権が勝利すれば、安倍内閣は安泰になるでしょう。しかし、これは真夏の怪談の類の話です。
 ただし、衆院選で安倍首相が信任されたからといって、日本経済そのものが再生するわけではありません。2015年の統一地方選挙においてアベノミクスが地方の住民の審判を受けるのです。最近、衆院解散の話が政界情報通の間で語られることが多くなりました。2014年末説と2015年夏説とがあります。
 いずれも安倍長期政権実現のための戦略戦術として語られています。しかし、強引な政治では国民の支持を得るのは困難だと思います。

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