世界農業遺産をてこに 一層の持続可能な農業を 新規認定の記念シンポ2016年1月22日
岐阜県の長良川,和歌山県みなべ・田辺、宮崎県の高千穂・椎葉の3地域が、昨年12月世界農業遺産(GIAHS)に認定されたのを記念して、1月21日シンポジウムが農水省で開かれた。3県の知事が出席し、それぞれの認定地域の農業をPRした。
シンポジウムでは国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所のM・チャールズ・ポリコ所長が、認定が中国や日本など、一部の国に偏っていることを指摘。もともと世界農業遺産認定は開発途上国の農業支援という狙いがあることから、「世界農業遺産に推薦・宣伝する能力のない途上国への支援をしてほしい」と訴えた。
また、この認定は場所やモノではなく、システムであることを指摘。「システムはダイナミックなもので、地域の人が発展させるもの。認定はその始まり」と、過去の遺産を守る世界文化遺産との違いを強調した。
基調講演した農水省世界農業遺産専門家会議委員長の武内和彦・国際連合大学上級副学長も、「過去だけでなく、未来のための生きた遺産」とし、このなかで農業のあり方を見る。「TPPの目指す規模拡大ではなく、小規模多品目で付加価値を高めることで、地域の農業を支える道もあるはずだ」と問題提起した。
これまで認定された世界農業遺産は15か国36地域に及ぶが、うち28地域をアジアが占めている。そのほとんどが、小規模な農業経営で、持続可能な農業を営んでいる。
今回認定された3地域の県知事もこの点を強調。岐阜県の長良川は、鮎と清流に象徴される農業、漁業、林業など多様な産業を育てる。古田肇知事は、2011年認定の石川県の能登が「里山里海」だったことから、さらに〝里川〟の概念を示し、「〝里山〟と〝里海〟をつなぐ役割を担う」と位置づけた。
和歌山県のみなべ・田辺は、梅と新炭のシステム。この二つはこの地域の特産で、その生産を維持するための地域システムが確立している。仁坂吉伸知事は「観光資源の梅の花と、健康食品の梅を世界にPRしたい」と意欲を示した。
宮崎県の高千穂と椎葉は焼畑と林業資源を生かした山間地農林業複合システム。その上で河野俊嗣知事は、「神楽による伝統文化の伝承と、それを支えた強靭な地域コミュニティ」の存在を強調した。
またパネルディスカッションでは、世界農業遺産の知名度の低さが指摘され、認定地域による連携した取り組みが必要との意見があった。既に認定された5地域を含め、関係者約200人が参加。会場には各認定地域のブースが設けられ、それぞれの地域や特産物をPRした。
(写真)新規に認定された世界農業遺産をPRする、右から岐阜・和歌山・宮崎の各県知事
(関連記事)
・世界農業遺産 日本から新たに3地域 (15.12.16)
重要な記事
最新の記事
-
第21回イタリア外国人記者協会グルメグループ(Gruppo del Gusto)賞授賞式【イタリア通信】2025年7月19日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「政見放送の中に溢れる排外主義の空恐ろしさ」2025年7月18日
-
【特殊報】クビアカツヤカミキリ 県内で初めて確認 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年7月18日
-
『令和の米騒動』とその狙い 一般財団法人食料安全保障推進財団専務理事 久保田治己氏2025年7月18日
-
主食用10万ha増 過去5年で最大に 飼料用米は半減 水田作付意向6月末2025年7月18日
-
全農 備蓄米の出荷済数量84% 7月17日現在2025年7月18日
-
令和6年度JA共済優績LA 総合優績・特別・通算の表彰対象者 JA共済連2025年7月18日
-
「農山漁村」インパクト創出ソリューション選定 マッチング希望の自治体を募集 農水省2025年7月18日
-
(444)農業機械の「スマホ化」が引き起こす懸念【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月18日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲害虫の防ぎ方「育苗箱処理と兼ねて」2025年7月18日
-
最新農機と実演を一堂に 農機展「パワフルアグリフェア」開催 JAグループ栃木2025年7月18日
-
倉敷アイビースクエアとコラボ ビアガーデンで県産夏野菜と桃太郎トマトのフェア JA全農おかやま2025年7月18日
-
「田んぼのがっこう」2025年度おむすびレンジャー茨城町会場を開催 いばらきコープとJA全農いばらき2025年7月18日
-
全国和牛能力共進会で内閣総理大臣賞を目指す 大分県推進協議会が総会 JA全農おおいた2025年7月18日
-
新潟市内の小学校と保育園でスイカの食育出前授業 JA新潟かがやきなど2025年7月18日
-
令和7年度「愛情福島」夏秋青果物販売対策会議を開催 JA全農福島2025年7月18日
-
「国産ももフェア」全農直営飲食店舗で18日から開催 JA全農2025年7月18日
-
果樹営農指導担当者情報交換会を開催 三重県園芸振興協会2025年7月18日