TPPで国際連帯を アジア4か国がシンポ2016年2月1日
TPP(環太平洋連携協定)に反対する運動をアジアでつなげようと、市民や農民からなる「TPPに反対する人々の運動」は1月30日、東京で国際シンポジウムを開いた。日本を含むアジア4か国のTPPに対する政府の対応、それに反対するそれぞれの国内の運動について情報交換し、TPP成立阻止の思いを確認。最後にTPP成立阻止に向け、連帯のアピールを採択した。
アジアから参加したのはマレーシア、韓国、ニュージ―ランドの3か国。マレーシアは中国系の華僑に対して、マレー人優遇政策(プミプトラ)をとっているが、TPPが成立すると、この政策の維持が難しくなる。同国の独立系メディアのジャーナリストファウアズ・アブドゥル・アズィズさんは「マレーシアは政府調達の比率が非常に高い。規模も大きいため、TPPで国内企業を優先して発注できなくなると、その及ぼす影響が大きい」と指摘。
また同国でも広範な市民団体によるTPP反対の運動が組織されているが、プミプトラと非プミプトラ、さらには民族間の利害関係が複雑なため分断されやすいと指摘。「民族間の温度差を克服して、反対運動を導かなければならない」と話した。
米国・EUとの自由貿易協定を結んだ韓国の状況は、ノ・ムヒョン元大統領の首席秘書官を努め、現在ソウル市の社会的経済の政策・理論面を担当するチョン・テイン(鄭泰仁)氏が報告した。
同氏は、FTAは韓国の経済成長、貿易の拡大に貢献していないことを、具体的な統計数字で挙げた。米韓FTAによるISDC(投資家対国家の紛争解決)による提起が始まっており、内国民待遇、最恵国待遇、公正衡平待遇などの条項違反として係争になっている。
それにも関わらず韓国では、一部にTPP参加の声もある。チョン氏は「TPPの批准に反対し、新たな公正な貿易協定を要求しよう」と呼びかけ、具体的には(1)サービス自由化のポジティブリスト(禁止でなく、可能な事項を決める)化、(2)ラチェット(自由化不可逆規定)規定の削除、(3)未来最恵国待遇の削除、(4)ISDCの見直し、または削除、(5)保健医療関する章の見直しの5つを挙げる。
また、米国主導のTPPが中国封じ込めという政治的性格が強いことを指摘。今後の対策として、「アジアと世界の平和と繁栄に向けて、米国と中国との間で中立的な地域協定を構築することはできないか」と問題提起した。
ニュージーランドのモアナさんは先住民族のマリオ族の血をひく同国の歌手。ドイツで「モアナ」という自分の名前を入れたアルバムを発売したとき、商標登録していた会社の抗議によって変更せざるを得なかった。「どうしてヨーロッパの会社が、ポリネシアで一般的なモアナという単語の使用を支配できるのか。お金を得るために私たちの文化を食い物にしている」と言う。
またモアナさんは、マリオ族が長年にわたって、ニュージーランド政府とたたかい、勝ち取ってきた少数民族としての権利が、世界規範のTPPによって奪われることを恐れる。「TPPの内容次第では、政府が国連による先住民の権利に関する宣言など、国際的な義務に対応することを妨げることを懸念する」。
シンポジウムは最後ににアピールを採択。それぞれ国内でTPPの批准阻止の闘いに全力をあげると同時に、「その闘いを国境を越えてつなぎ、アジア・太平洋地域の先住民、農漁民、都市生活者、労働者らによるTPP成立阻止の包囲網を作り出すことを呼び掛ける」と宣言した。
◇
「TPPに反対する人々の運動」は、2010年発足した個人有志の市民集団。生協や農民・消費者組織などと連携し、国内、海外のネットワークを作りながらTPP反対の運動を続けている。
(写真)貿易自由化で、それぞれの国の実情を報告するパネラー(上からアズィズさん、チョンさん、モアナさん)
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