原料原産地表示で国産農産物を支える-食品規制の勉強会2016年5月23日
NPO法人食品安全グローバルネットワークは5月20日、国会内で学習会「食の安全と競争力を弱める規制緩和」を開いた。学習会ではJA全農の食品品質・表示管理コンプライアンス部の立石幸一部長が「TPPと原料原産地表示」と題して講演した。
TPP関連対策では消費者が国産農産物を選ぶことができるよう、加工食品の原料原産地の表示対象を拡大する方向が盛り込まれた。これを受けた自民党の農林水産業骨太方針策定PTは3月末、すべての加工食品について実行可能な方法で原料原産地を表示すると今後の政策の方向を決めた。
立石部長は方針決定に至る自民党の会合でもヒアリングを求められ、全農の自主的表示基準の説明や新たな表示ルールの考え方について積極的に提案してきた。
それによると、今後の表示ルールの考え方として以下の点を検討することが重要だとしている。
(1)原則として、すべての加工食品に対して主原料となる一次産品(農畜水産物)について、重量順に1位と2位の原料原産地の表示を義務化する。
(2)原料産地については大括り表示(輸入)の一括表示の枠内への記載を認める。
(3)頻繁に変わる原料、国産との併用については新たなルールを設定する。
(4)経過措置を長くとる。
の4点である。
これに対して食品事業者から異論も出ている。そのひとつが原料原産地表示の義務化と国際ルールとの整合性だ。
しかし、原料原産地表示の義務化は国内で製造する業者にのみ適用されるルールで、海外で製造される輸入品に適用されるわけではない。また、米国、豪州、EUでも必要に応じて原料原産地表示を定めているほか、国際食品規格(コーデックス規格)では、食品の原産国の省略が消費者の誤認を招く場合は、義務表示とすべきとのルールが定められているという。
(2)の「外国産」などと大括りする表示は、原料原産地を知りたいという消費者にとっては不十分かもしれないが、実行可能性の第一ステップとして導入すべきだという主張である。同時に大括り表示を実施する場合は消費者からの問い合わせに応答する義務を課すなどのルールも必要だという。
(3)の原料や原産地が頻繁に変わる場合は、いくつか具体的なケースについて検討するべきだという。たとえば、原料の小麦が国産と外国産の併用の場合、▽国産原料が常時5%以上含まれていること▽国産原料の最低割合を記載する、ということを必須条件にしたうえで、「小麦(外国産、国産10%)」といった表示を可能するというものだ。
一方、常時使用しない国産原料については表示しないことを認めてはどうかという。同時に国産品の原料割合が大きく変動するような場合は、一定期間内の実績に基づいて国産割合の表示を認めるなど具合的に検討すべきだする。
原料原産地表示についてはすでに国産品を支える効果も示されている。
平成12年のJAS法改正で生鮮品には原産地表示が義務化された。これによって当時、生シイタケに占める中国産シェアが38%だったのが、平成26年には4%まで下がっている。
価格も原産地表示義務がなく、中国産が急増した平成9年~11年にかけては国産品単価は1kgあたり927円だった。それが原産地表示の義務化によって国産シェアが増えたことによって、平成24年~25年時点の価格は同1025円と回復している。原産地表示が国内産を支えてきたといえる。
一方、ネギは国内出荷量38万9000t(26年)のうち輸入量は12.4%、5万5000tもある。これら輸入されたネギの多くは、一般消費者向けではなく業者間でダイレクトに取引されている。しかし現在、業者間取引で材料の原産地情報の伝達や表示の義務化はない。そのため加工食品で使われたネギの原産国は分からないのが現状で、国産品との誤認を与えている可能性も高い。今後は外食やインストア加工食品などでも原料原産地が課題となる。
TPP大筋合意で加工食品の原料原産地表示は拡大実現に向けてさらに検討が行われることになった。
しかし、TPP協定は関税の撤廃をめざすもの。立石部長は「関税の撤廃により海外からの農産物は確実に増えわが国農業を弱体化させていく。農業は一旦崩壊すれば修復することは難しく、食料を自給する重要性を忘れてはならない。少なくとも外国産原料で製造されたものが国産原料と誤認を与えている実態が表示によって是正されれば国民が支え、農業が生き残ることが可能になる」と強調した。
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