生産資材の改革議論再開-自民党のPT2016年9月7日
自民党の農林水産業骨太方針策定プロジェクトチーム(PT)は9月6日、生産資材価格の見直し問題など11月のとりまとめに向けて議論を再開した。会合にはJA全農の神出元一専務も出席し2000以上ある水稲肥料の銘柄集約を進める考えなど、生産者に視点を当てた事業方式の整備を重視することを強調するとともに、国と業界にも役割があることも指摘した。
骨太方針策定PTはTPP関連対策の一環として(1)生産資材価格形成の仕組みの見直し、(2)生産者の所得向上に資する流通・加工業界の構造の検討、(3)人材力の強化、(4)原料原産地表示、(5)戦略的輸出体制の整備、(6)チェックオフ制度の導入の6つの項目について11月にとりまとめる。
小泉進次郎PT委員長は「これからキックオフ。全国キャラバンも行っていく」と現場の意見を反映させる考えも強調した。
◆農協の役割 日韓同じか
この日の会合は日本農業法人協会が実施した韓国の農業資材価格調査結果をヒアリングした。
同協会の藤岡茂憲会長は「法人協会がなぜコスト削減に取り組んでいるのか。TPPを見据えて日本農業がもっと強い経営体になっていかないと、海外輸出はおろか国内の農業も弱体化していくのではないかと非常に危機感を持っているからだ」と強調し、韓国での肥料販売価格が平均で日本の半分程度、農薬は同3分の1程度だったことから「われわれの経営努力ではいかんともしがたい(日本の)肥料、農薬、農業機械の価格は本当に適正なのか。販売面でも本当に適正な流通コストなのかということについても今後調査をしていきたい」などと考えを述べた。
出席した議員からは農協の事業について「春先に予約をすると大幅割引があるなど、一律では捉えきれない部分がある。そこも考慮して農協のあり方を考えていかなければならない」といった指摘や「韓国の農協が果たしている役割が日本とどういう差があるのか。韓国では農協等が受け取るマージンが10%以下に低く設定されていると説明にあるが、日本の農協は技術指導的な部分を含めてマージンがあるのであれば、そこはきちんを見極めて議論をしていかないと、今度は農協の経営が成り立たないということになりかねない」との意見もあった。
◆全農 事業方式変える
会合でJA全農の神出元一専務は、韓国と日本の生産資材製造と流通構造を分析、比較して「全農としてしっかり取り組むこと」に加えて、国と業界が取り組むべきことも整理する必要があることも指摘し、「これらが動き出すとかなりの(コスト削減の)ところに行けるという期待と可能性を感じている。われわれは真剣に取り組んでいく」と話した。
また、具体的に進める取り組みについて「法人協会とタッグを組み、肥料や農業機械について一致したところから一括共同購入をしていくような検討をしていきたい」と話すとともに、水稲の肥料が2400銘柄もあることを指摘し銘柄を集約していく考えを示した。
神出専務は「私が反省しているのは、全農もJAからニーズが来たときにはできるだけ応えなければいけないと目一杯応えたし、同じようにJAも組合員(の要求)にすべて応えきた。
結果的にそれが組合員のためになっていなかった。これからは言われたことを整理して提案する、というように仕事のありようを変えていけばならない」、「生産者に視点を当てた事業方式を組みきれなかったところに反省がある。JAと全農がひとつの土俵に乗って多様な生産者を見つめてきちんと対応しなければならない」と事業方式を変えていく決意を述べた。
JA全中の奥野長衛会長は「日本の農業は独自に発展してガラパゴス化しているのではないかと思っていた。米でも世界はおいしいと言ってくれるし、果実も非常に繊細。肥料も農家一軒一軒違うこともある。しかし、世界標準にしていく努力をして体制を整えていかなければならない」と事業改革を進める考えを強調した。
◆ ◆
会合後、小泉氏はとくに神出専務の発言を「自分の言葉で語っている」と評価し「農業の構造を変えていく歯車が音を立てながら回り始めるきっかけになった。非常に前向き率直なキックオフにできた」と語るとともに「農業の構造改革は政府のバックアップ、官邸のリーダーシップなくして踏み込むことはできない。今がチャンスだという思いを共有することがもっとも大事」と話した。
(写真)9月6日に再開された自民党の農林水産業骨太方針策定PT。あいさつする小泉PT委員長
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