流通・加工改革 地域政策の視点も重要ー自民PTの議論2016年9月16日
農産物の流通・加工構造をテーマに議論した9月14日の自民党農林水産業骨太方針策定PT会合では、食品の流通・加工業は地元の雇用や地域経済を担っているとして「やみくもにコストを下げて合理化すればいいという話ではない」などと、何をめざす改革かをふまえた議論を続けることが必要との意見が出た。
国内の農業生産額は9.2兆円でこれに輸入品1.3兆円を加えた10.5兆円となる農林水産物は、流通・加工の各段階でマージンとコストが付加され、飲食料の国内最終消費額は76.3兆円となる。
農水省の試算では、このうち3分の2にあたる約51兆円が食品小売業などから販売され、生鮮品として販売されているのはこのうちの12.5兆円で約24%となっている。生鮮品のシェアは1990年では約33%だったが、現在では約24%に縮小している。
流通する生鮮品のうち、青果物は卸売市場を経由する割合は輸入品も含めて約6割となっている。残りの4割は直売、ネット通販、宅配など卸売市場を経由せずに流通している。
青果物の場合、小売価格のうち3割強が「生産者」、1割強が「集出荷~卸段階」、5割強が「仲卸~小売段階」が受け取っていると分析している。たとえば、1kg(1玉)156円のキャベツの場合、生産者受取額は67円となる。ただし、ここから生産経費38円(種苗代、農薬・肥料代、包装荷造・運搬などの経費)を差し引いた29円が生産者の利益となる。
これに対して直売所で1kg(1玉)120円で販売した場合、直売所手数料18円(15%)を差し引いた生産者受取額は102円となる。同じ生産経費38円を差し引くと生産者受取額は64円となり、市場流通の2.2倍となるという試算を農水省は示した。
そのほか卸売市場では全量引き取るものの生産者が価格決定に関与できない「委託集荷」が6割を占めることや、自由化された手数料が依然として一律となっていることなどが指摘された。
また、多様な流通・販売形態が進むなか、コンビニの利益率は高いものの、大手量販店の利益率が低い実態なども報告された。
◇ ◇
会合では出席議員から卸売市場の現状について委託集荷ばかりではなく最近では生産者が価格決定に関与できる「指し値集荷」が増えてきていることや、委託手数料が問題でなく「産地にとっては卸売市場として売れる力があるかが問題。そのために市場に特色を持たせることが重要で、それによって買い手が集まることが大事」との指摘があった。
また、市場外流通が増えて量販店との直接取引が増えてはいるものの、量販店も仕入れセンターが「センターフィーを取るのが実態」との指摘もあった。
そのほか流通・加工業界の改革については生産者にとっては買い叩きにある実態を強調する意見のほか、「やみくもにコストを下げて合理化すればいいのか。それぞれに人が貼りついて働いている。(農業、食品産業)全体のパイを広げることを考えなければならない」など、地元の雇用創出など地域経済を担う核になっている点もふまえた地域政策の観点も必要なことが強調された。
重要な記事
最新の記事
-
"強い農協"仲間と共に 元JA熊本経済連会長・上村幸男氏(1)【プレミアムトーク・人生一路】2025年6月19日
-
"強い農協"仲間と共に 元JA熊本経済連会長・上村幸男氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年6月19日
-
小さくなって人気が出たヒマワリ【花づくりの現場から 宇田明】第62回2025年6月19日
-
媒体取扱手数料を新設 農林中金2025年6月19日
-
国連が制定「サステナブルガストロノミーの日」記念祭を開催 AgVenture Lab2025年6月19日
-
【JA人事】JAあまるめ(山形県)佐藤一彦組合長を再任(6月8日)2025年6月19日
-
女の伝えたイモ・ホドイモ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第345回2025年6月19日
-
2年連続で減収 信頼回復に力 日本穀物検定協会2025年6月19日
-
配合飼料供給価格 トン当たり約2200円値下げ 令和7年7~9月期 JA全農2025年6月19日
-
ダイナミックフェア出展するやまびこジャパン 36Vの動力噴霧機やハンディーソー、ラジコン草刈機を紹介 JA全農いばらき2025年6月19日
-
JAぎふ稲羽支店がオープン JA全農岐阜2025年6月19日
-
いちご新規就農者研修生募集 JA全農岐阜2025年6月19日
-
営農支援フェア2025に2000人超来場 最新農機を展示・実演、セルフメンテナンス講習も実施 JAグループ宮城2025年6月19日
-
都市と農をつなぐ学びの場 大学生が企画「五感で学ぶ親子食育ツアー」開催 全国農協観光協会2025年6月19日
-
肥料価格高騰緊急支援で上限10万円の給付金 県内各所で説明会 千葉県2025年6月19日
-
GREEN×EXPO 2027の "応援の輪"広がる 横浜のイベントや赤レンガ倉庫で「Blooming RING」配布 2027年国際園芸博覧会協会2025年6月19日
-
非常食に新しい選択肢「お米でできた麺で食べる 米めん」シリーズ登場 ケンミン食品2025年6月19日
-
全国の『地牛乳』や国産牛肉を直売「第8回らくのうマルシェ」開催 全酪連2025年6月19日
-
坂口農園 「ありがとう」の文字入りメロン ふるさと納税返礼品に登場 石川県小松市2025年6月19日
-
プロ野球チーム「佐賀アジアドリームズ」ホームタウンの耕作放棄地で米づくり開始2025年6月19日