収入保険制度 品目別対策と並立で-JAグループ2016年10月27日
政府・与党が検討を進めている収入保険制度について現時点でのJAグループの考え方を10月20日に示した。米の収入減少影響緩和対策など品目別の経営安定対策や農業共済制度と並立する仕組みとすることなどが必要だとしている。
収入保険制度は品目の枠にとらわれず個々の農家の収入に着目したセーフティネットとしての機能を持つ。農業者の経営努力では避けられない収入減少を補てんする制度とされる。
ただし、保険料を負担して加入する制度であり、自民党の小泉進次郎農林部会長は「補てんではなく保険だ」と盛んに強調している。
農水省は収入保険制度の導入に向けて27年産を対象に全国1000経営体の協力を得て事業化調査を実施してきた。
その調査結果をふまえて制度として現在、以下のように想定されている。対象者は経営管理を適切に行っている農業者で、要件として青色申告を5年間継続して実施していることがひとつの案となっている。
補てんの対象は農業者ごとの農産物販売収入の全体。基準収入は農業者ごとの過去5年の平均収入を基本とする。
補てんの内容は基準収入の一定割合(補償限度額)を下回った場合に一定割合(支払い率)を補てんするもので、現時点で補償限度額9割、支払い率9割が想定されている。
課題は対象者を青色申告者とすると販売農家126.3万戸のうち43.4万人のみが対象となることだ。新規就農者など5年間の青色申告実績がまだない農業者の取り扱いも検討する必要がある。
対象収入については自ら生産した農産物を加工品の原料とした場合のみ、その農産物を加工原料用として販売したとみなして収入に含めることができる一方、加工品自体の販売収入は対象に含めないことが想定されている。 また、基準収入についても経営面積を過去よりも拡大・縮小する場合などの基準収入の修正についても課題となる。
保険料水準や国庫補助金の取り扱いも課題だ。収入減少の補てんの少ない加入者の保険料率を段階的に引き下げる一方、収入減少の補てんの多い加入者の保険料率を上げるなど、危険段階別の保険料も想定されている。 JAグループは基本的考え方として、品目ごとの生産・販売や生産者の経営・税務申告の実態等をふまえた新たなセーフティネット対策を構築する必要があることや、現行の品目別経営安定対策(収入減少影響緩和対策、肉用牛肥育経営安定対策特別事業、野菜価格安定制度など)や農業共済制度と「並立する仕組み」とするなど、現場実態に応じた制度とする必要があると提起している。
また、米の収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)は生産調整達成が条件となっている。新たな収入保険制度も「需要に応じた生産」に取り組む農業者を対象とするか、需給調整に取り組まない農業者の扱いはどうするかも検討課題となる。
農林中金総合研究所の平澤明彦主席研究員は「検討されている収入保険は品目横断的な農場収入ナラシ対策。単独では安定的な所得補てんを提供できない。TPPなどによる長期値下がり傾向のもとでは値下がりの影響を2~3年遅らせるだけ。日本ではゲタ対策や不足払いによる安定的な補てんが必要」と指摘している。
重要な記事
最新の記事
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】なぜ多様な農業経営体が大切なのか2024年3月28日
-
全国の総合JA535から507に 4月1日から 全中2024年3月28日
-
消える故郷-終りに、そしてはじめに-【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第284回2024年3月28日
-
岩手銀行、NTT東日本、JDSCが「岩手県の『食とエネルギーの総合産地化』プロジェクト」を共同宣言2024年3月28日
-
「日曹コテツフロアブル」登録変更 日本曹達2024年3月28日
-
適用拡大情報 殺虫剤「プレバソンフロアブル5」 FMC2024年3月28日
-
飼料用米を食料安保の要に 飼料用米振興協会が政策提言2024年3月28日
-
肥料袋の原料の一部をリサイクル樹脂へ置換え 片倉コープアグリ2024年3月28日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2024年3月28日
-
純烈が熱唱 新CM「おいしい雪印メグミルク牛乳 ゴクうまボトル」公開2024年3月28日
-
むすびえ「ウェルビーイングアワード 2024」活動・アクション部門グランプリを受賞2024年3月28日
-
「物流の2024年問題」全国の青果センターの中継拠点化で「共同輸配送」促進 ファーマインド2024年3月28日
-
ポストハーベスト事業 米国子会社を譲渡 住友化学2024年3月28日
-
農業の「経営技術」を習得 無料オンライン勉強会を隔月で開催 ココカラ2024年3月28日
-
森林由来クレジット販売プラットフォーム立上げ第一号案件を売買全森連×農林中金2024年3月28日
-
新規需要米に適した水稲新品種「あきいいな」育成 耐病性が優れ安定生産が可能に 農研機構2024年3月28日
-
食品ロス削減に貢献 コープ商品6品を3月から順次拡充 日本生協連2024年3月28日
-
最適な雑草防除をサポート「my防除」一般向け提供開始 バイエルクロップサイエンス2024年3月28日
-
国産和牛が当たる 「春の農協シリーズキャンペーン2024」4月1日から実施2024年3月28日
-
れんこん腐敗病の課題解決へ JA大津松茂と圃場検証を実施 AGRI SMILE2024年3月28日