万全な需給安定策が必須 生乳流通改革2017年7月19日
政省令検討のポイント
今国会で成立した改正畜安法(畜産経営の安定に関する法律)は、平成30年4月1日の施行に向け政省令をどう定めるか、この夏に政府・与党で検討されることなっており、JAグループをはじめ関係団体は必要に応じて働きかけを行うことにしている。
同改正法は加工原料乳生産者補給金制度をこれまでの暫定措置から恒久的な制度とすると同時に、補給金の交付対象を広げる。現行は指定団体のみが対象だが、買取業者や直接販売する生産者などを追加する。ただ、新たな補給金制度の運用については政省令や局長通知に委ねられている。おもなポイントをまとめた。
◆公平性の確保を
改正畜安法では補給金対象者を拡大するが、対象者は「年間販売計画」を国に提出することが求められている。国はその計画が妥当かどうかを検証し、補給金の交付数量を配分することになっている。
補給金の交付対象を広げようという今回の生乳流通改革で議論となったのは、加工原料乳生産者補給金の交付を受けながら実際は飲用乳向けにしか販売しない場合や、販売見通しがなくなった場合にのみ加工原料用に仕向けるといった事業者への対応だ。ただ、こうした「いいとこ取り」防止は公平性の確保の観点からもちろん重要だが、基本は生乳の需給安定の仕組みの確立と持続的な酪農ための生産基盤の強化である。
事実、改正法の第1条に「需給の安定」を追加した。改正前は「価格の安定、価格形成の合理化」が目的だったが、「需給の安定」を法の目的として明確化したことになる。
したがって、政省令のポイントのひとつは、需給安定対策の仕組みの具体化となる。機動的な調整保管の仕組みの確保や、国による適切な生乳需給情報の提供と、新規対象者への的確な調査と指導の実施などが必要になる。 「年間販売計画」についても国はこれを検証し補給金の交付数量を配分し、実績報告に基づいて補給金を交付することになったが、年間販売計画の「妥当性基準」をどう設定するかがポイントになる。生乳生産の季節変動を超えない安定取引が実現できる計画かどうか、また生乳が適正な品質かどうかなどについて具体的な基準が必要だ。
また、不需要期における実績確認の強化、悪質な取り組みに対する罰則強化も求められる。
◆指定団体の機能強化
改正法でも国が集送乳事業者を指定する仕組みは変わらず、県域以上で「あまねく集乳」している事業者を指定事業とし、現行の指定団体は引き続き「指定生乳生産者団体」と呼ぶ。
今回の改正では現行の補給金のうち一定の集送乳経費見合い分を「集送乳調整金」として指定事業者に交付されることになった。
集送乳調整金の単価は年末に決まるが、現行の指定団体の実態と、新規事業者との役割の違いをふまえた集送経費算定のルールや、条件不利地域を含む広域的な地域から集乳を行う事業者のみに集送乳調整金を交付する要件の設定などが求められるとともに、指定団体の機能強化を省令等で後押しすることも需給安定に向けて課題となる。
今回の制度改革では生産者の集送乳業者への生乳部分委託(分割委託)も認めた。これについては衆院農林水産委員会が附帯決議で、飲用に売れない場合にだけ加工原料乳に回すといった「場当たり的な利用を確実に排除」し、生産者間に不公平が生じないよう「厳格な基準を設定」することを求めている。
具体的には省令で定める「指定団体が取引を拒否できる正当な理由」のなかに、指定団体が行おうとしている用途別安定供給に支障を来す場合を追加することなども求められる。そのほか、部分委託者の生産、販売状況が的確に把握できる仕組みの確保、さらに全量委託にメリットがある規定や契約例の提示することなども課題となっている。
JAグループは生産基盤の拡大に向けた現場の意欲に十分に応える万全の需給安定対策の措置を求めていく。
(上の表をクリックすると、大きな表が別ウィンドウで表示されます。)
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