国内生産量 なぜ維持?日米貿易協定の影響試算2019年10月29日
政府は日米貿易協定による経済効果分析とともに、農林水産物への生産額への影響試算を公表した。それによると生産減少額は約600億円~約1100億円となった。生産額の減少は農産物の輸入による価格低下が影響するが、農水省は国内対策を打つため国内の農業生産量は維持されるとしている。
試算方法は関税率10%以上で、かつ国内生産額10億円以上の品目。計33品目が対象になった。
今回はTPP、TPP11でも行ってきた影響試算の方法をもとに、直近の生産額や単価をあてはめて、暫定版として機械的に算出した。
それによると農林水産物の生産減少額は約600億円~約1100億円となった。輸入品と競合する農産品が、どの程度価格低下するかなどから推計した。
品目別には牛肉が約237億円~約474億円、豚肉が約109億円~約217億円、牛乳乳製品が約161億円~約246億円、鶏肉が約16億円~約32億円と畜産物で生産減少額が大きい。
耕種では小麦が約34億円、大麦が約0.5億円、かんきつ類が約19億円~約39億円となった。
農水省は関税削減・撤廃による価格によって国内生産額が減少すると説明し、TPP11の試算と同様、国内対策を講じるため国内生産量は維持されると説明している。
しかし、輸入が増えても国内生産量が維持されるのであれば、当然、国内への供給量が増える。人口減少で国内消費が減少傾向にあるのに、増えた農産物の供給量はだれが消費するのかという疑問は以前から出ていた。政府の説明が求められる。
また、今回は日米貿易協定とTPP11を合わせた影響を試算すると約1200億円から約2000億円となった。大筋合意にともなう2015年時点でのTPPの影響試算では生産減少額は1300億円から2100億円だったことこから、内閣官房TPP等政府対策本部は「TPPの範囲内に収まっている」と説明している。
東京大学の鈴木宣弘教授はこの影響試算について「これだけの影響があるから対策はこれだけ必要だという順で検討すべき。"影響がないように対策をとるから影響がない"というのは本末転倒」と批判する。農産物価格が下落しても、差額補てんか、対策による生産コストの低下で生産者の収益は変わらないという理屈になっている。これで生産者への真の影響が十分に把握できるかと指摘する。
また、日米貿易協定による経済効果を政府はGDPが約0.8%押し上げられると試算し、約4兆円に相当すると説明している。これについて鈴木教授は自動車の関税撤廃が約束されていないのに、関税撤廃されたものとして試算するのは間違い、と指摘、少なくとも自動車関税撤廃を含まない経済効果試算も示すべきだとしている。
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