農業遺産「三富新田」平地林の環境保全を推進 生活クラブ・埼玉が取得2019年12月4日
生活クラブ生協・埼玉は、これまで自治体や埼玉県三富(さんとめ)地域の農業者とともに進めてきた環境保全活動をさらに一歩進めるため、11月22日、埼玉県西部の三富地域(狭山市上赤坂)の平地林7152平方mを購入した。同生協は、江戸時代に開拓され日本農業遺産となっている「三富新田」の持つ多面的な価値を守り、環境保全活動をさらに推進していくとしている。
平地林の落ち葉掃きの様子
埼玉県西部にある三富地域は、首都圏30km圏内にありながら、今でも320年前の江戸時代に開拓された「三富新田」を中心とした農地と平地林の織りなす武蔵野の景観が広がっている。
痩せた土地に木を植えて平地林を育て、落ち葉を集めて堆肥として畑に入れ、土地改良を行うことで安定的な生産を実現する「武蔵野の落ち葉堆肥農法」が300年以上続けられてきた。
その結果として景観や生物多様性を育むシステムが今なお継承されているとして2017年に日本農業遺産に認定された地域だ。また、埼玉県が「ふるさとの緑の景観地」に指定して緑地保全活動を行っている。
しかし、化石燃料や化学肥料の普及で、薪炭林(しんたんりん)としての利用や堆肥となる落ち葉の供給源などとしての役割が減少したため、平地林の荒廃が進み、都市化に伴う土地需要や相続などを契機とした土地の売却によって、平地林の木が伐られ、資材置き場や倉庫が造られ開発が進んでいる。
◆20年間続けてきた生活クラブ・埼玉の保全活動
1999年に起きた、所沢ダイオキシン報道を始めとする廃棄物焼却施設をめぐる問題は、農業や生活に対する不安を広げる出来事だった。生活クラブ・埼玉の組合員は、この問題を、農家と都市住民の分断、大量のゴミを出す暮らしの在り方を問うことだととらえた。
そして、地元の農家とともに、くず掃き(落ち葉掃き)、下草刈り、定期的な伐採(萌芽更新)などの平地林保全活動を20年間続けてきた。
◆山脇学園から平地林保全活動を引き継ぐ
生活クラブ・埼玉は、農産物生産、福祉、環境、教育、防災などといった農業の多面的価値を学び、実践し、発信する構想を策定し活動している。特に三富地区では、「三富協同村構想」※により地元の農家から農地を借り、落ち葉堆肥を使った野菜の栽培、農環境を学ぶイベントを開催。さらに、農家と共同出資により三富ライフファーム(株)を設立し、市民農園の運営、農産物販売、在来種大豆の栽培と豆腐への加工・販売、環境保全活動などを行っている。
そしてこのたび、これまで自治体や三富地域の農業者とともに進めてきた環境保全活動をさらに一歩進めるため、生活クラブ・埼玉で平地林を購入した。この平地林は、所沢市が積極的に緑地保全を進めている、通称くぬぎ山の駒が原特別緑地保全地区の隣地。ここを購入して保全することで緑地の連続性を担保できる貴重な土地だ。
この土地を、同生協とともに環境保全活動を行っている任意団体エコネットくぬぎ山と無償使用の契約を結んでいた所有者の学校法人山脇学園(東京都港区)から購入した。
同生協は、三富地域の平地林の保全を山脇学園から引き継ぎ、開発を食い止め、三富新田の持つ多面的な価値を発信していくとしている。
(写真)収穫し脱穀した大豆を選別
地元の農家とともにくず掃き(落ち葉掃き)、農業塾で地元農家と交流
(※)『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)で人気のDASH村は、TOKIOの5 人が地元の人達の協力を得ながら、民家の再生や農作物の栽培、動物の飼育などに励む企画。福島第一原発の事故でやむなく中断してしまったDASH村だが、若いメンバーたちが作業をする中で見せる生き生きとした表情や、農業や昔ながら生活の知恵を教えてくれる人たちとの世代を越えた交流がとても印象的な人気企画だった。こんなふうに誰もが生き生きと輝ける場「生活クラブ的"ダッシュ村"(新協同村)」を埼玉に作るという構想。キーワードは「遊び仕事」。生活クラブだけではなく、年齢も障害も関係なく、地域で暮らす様々な人が集い、土に触れ、手仕事をし、楽しみ、学習をする、そこに行くことで癒される...。そんな交流ができる場を目指している。
(生活クラブ・埼玉のHPから抜粋引用)
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