「スマート農業」「環境」「バイオ」を推進 農林水産研究イノベーション戦略2020を策定2020年5月28日
農林水産省は、食料・農業・農村基本計画に基づき、農林水産分野におけるイノベーションを創出し、Society5.0を実現するため、「農林水産研究イノベーション戦略2020」を策定した。
日本の豊かな食と環境を守り発展させるため、農林水産分野でも科学技術力の活用によるイノベーションの創出が求められている。同省は、日進月歩で歩む科学技術の進展などを踏まえ、同戦略を毎年度策定。今年度の重点分野として「スマート農業」「環境」「バイオ」の3分野を掲げ、各分野における研究開発の方向性を示した。
農林水産分野に世界トップレベルのイノベーションを創出するための「挑戦的な戦略」として、関係府省などと協力して、早期実現に取り組んでいく。
日本の農業は、国内市場の縮小、農業者の減少、国際環境の変化など新たな政策課題に直面している。そこで農業・農村のめざす方向として策定された食料・農業・農村基本計画に基づき、輸出促進、生産基盤の強化、地域政策の総合化、国民運動の展開等の施策により、食料自給率の向上と食料安全保障の確立を図る。
また、国内の農業生産と食料消費に関する指針として食料自給率目標を示すとともに、農林水産物・食品の輸出目標を設定する。
さらに、今後の技術開発の方向として、イノベーションの原動力となる基礎研究については、国の中長期的な戦略の下、技術開発を推進。ロボット、AI、IoTなどの先端技術を活用したスマート農業の現場実装をはじめ、多様な取り組みを推進。また、先端技術のみならず現場のニーズに即した様々な課題に対応した研究開発を進める。
輸出への取り組みについては、国内外の需要に対応し、国内生産の維持・増大を図るためには、輸出拡大が重要であるとし、農林水産物と食品の輸出目標5兆円の達成に寄与する新技術の開発・社会実装に早急に取り組む。
以下、各分野については、同省でロードマップを作成し、今後の研究開発の道筋を示している。
(1)スマート農業政策
▽新型コロナウイルス感染症に伴う対策として、「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証」を緊急的に実施。
▽スマート農業新サービス創出プラットフォームを創設し、新たなスマート農業関連ビジネスモデルの創出等に取り組む。
▽導入コスト低減を図る新サービスのビジネスモデルを示し、これを推進するための「スマート農業推進サービス育成プログラム(仮称)」を策定。
▽ロボット農機の遠隔操作でのほ場間移動とほ場での作業、複数のロボット農機による協調作業を実現。
▽あらゆるスマート機器でデータが取得・蓄積され、AI を活用したデータ駆動型スマート農業を実現。
▽生産から流通、加工、消費、さらには輸出までをデータで繋ぐスマートフードチェーンを構築。効率的な生産・流通や、国内外の消費者ニーズにきめ細やかに応じた農産物・食品の提供を実現し、廃棄や食品ロスを大幅に削減。
(2)環境政策
▽再生可能エネルギーの効率的な生産と、農林水産業及び域内への安定供給の実現をめざす。地産地消型エネルギーシステムを構築し、他地域にもエネルギーを供給することで温室効果ガス(GHG)削減に貢献。
▽スマート農林水産業の加速、農林業機械、漁船の電化、燃料電池化、サプライチェーン全体での脱炭素化により生産・流通プロセスで発生する GHG をゼロに近づける。
▽農地・畜産からの排出削減にかかるイノベーションと排出削減の可視化により、農畜産業に由来するメタン、N2O の排出を削減。
▽GHG の削減量・吸収量を可視化・定量化するシステムを開発。炭素を隔離・貯留するブルーカーボン、バイオ炭、森林資源活用技術を開発。
▽バイオマス由来マテリアルへの転換等、バイオマス資源のフル活用による「炭素循環型社会」の構築を目指す。
▽農業の多面的機能を積極的に活用する技術(アグリ・グリーンインフラ)の開発により、気候変動により激甚化する自然災害の被害を軽減。
▽微生物機能の制御・改変を行い、食料の増産と地球環境保全を両立する食料生産システムを構築。
(3)バイオ政策
▽ヒトゲノム情報等のパーソナルデータと食データを連結し、ビッグデータとして研究開発等に活用。「おいしくて健康に良い食」を包括的・網羅的に解明。
▽健康状況や体質等に応じた「おいしくて健康に良い食」を提案するサービスを実現し、国内外への展開を目指す。データを解析し、エビデンスとデータに基づく食による健康を実現。
▽育種ビッグデータや AI シミュレーターと連動する育種フィールドからなる育種プラットフォーム・アグリバイオ拠点を民間企業、公設試、育種家等が利用し、国内外のニーズを捉えた育種を展開。
▽農林水産物の遺伝子機能を解明し、サイバー空間で農作物等をデザイン。未利用遺伝資源を最大活用し、必要な環境適応性を付与した、次世代植物を迅速に創出。
▽新たなバイオ素材等を生み出すことにより、農山村地域の資源の活用領域を拡大。環境にやさしい新ビジネスを創出し、地域所得の向上、CO2排出量削減、農山村地域の環境保護に貢献。
▽有用生物(カイコ等)の機能を改良し、新たな機能性バイオ素材・動物医薬品等の商用生産を実現。バイオセンサーや実験動物との代替としても活用。
▽我が国の遺伝資源と育種技術・生産技術により、国内におけるバイオものづくりの原料供給を完全国産化。
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