米 適正価格で需要拡大を-卸・食品業界2020年10月28日
水田農業対策を議論している自民党の農業基本政策検討会は10月27日、卸や食品産業など実需者から業界の現状を聞いた。業界からはニーズが拡大しているパックご飯や冷凍おにぎりなどをてこに消費拡大を図ることや、政策的な支援が必要との意見も出た。
10月27日の自民党農業基本政策検討委員会
過剰在庫が重荷
木徳神糧の平山惇代表取締役社長は米業界の現状について、米卸各社は需要減で在庫過剰となっているため20年産米の調達を積極的に行えず、玄米価格相場の下落を招いていると話した。
各社とも過剰在庫の処分で多額の損失を抱え、経営状況は非常に苦しいという。また、生産者と事前契約した玄米価格と市場の玄米価格との差が大きく、最大で1俵あたり2000円以上という格差を背負いながら20年産米の販売を進めなければならない状況だと話した。
農林水産省のまとめでは今年9月の全銘柄平均の相対取引価格は前年産平均比60kg▲577円となった。新米価格が下落したことで、縁故米や生産者直売が増えた模様だといい、9月からは家庭向け販売が下落傾向にあるという。
中食向け販売はイベントの減少やオフィス需要の減少でいまだ前年対比を下回る販売状況となっている。外食は需要激減で打撃を受け19年産米の使用が大幅に遅れているが、米価の高止まりが続いたためすでに外国産米に切り替えたところもあるという。平山社長は外食企業はすでに外国産米の使用ノウハウは持っており消費者は一色せず外国産米を食べているケースも多いと指摘した。
生産者にとって米価は高いほうがいいというのは当然だが、米生産の将来を見据え、消費者が求める価格で供給し適正マージンのなかで需要の拡大を図ることも必要だとの考えを示した。そのなかで複数年契約や多収穫品種など新品種生産などに取り組み、長期的に卸や実需者と取引する生産者にリスクに応じた補助が必要と訴えた。
また、ニーズが拡大しているパックご飯、冷凍おにぎりなどの原料米を加工用米制度の対象にして、原料米の調達価格を引き下げて消費拡大と生産の安定につなげるべきだと主張した。
伸びる冷凍米飯
ニチレイフーズの小野寺聡素材調達部長は冷凍食品市場の動向について話した。2015年に4400億円だった市場規模は2019年に4900億円に伸びた。コロナ禍で今まで未利用だった消費者の購入者が増え単身世帯や高齢世帯へと消費の主役が交代したという。また、冷凍米飯市場は2015年度の480億円が2019年度に610億円に伸びた。ただ、小野寺氏によると冷凍米飯の購入経験者はまだ2割強で「7割近くの伸びしろがある」と市場拡大を見込む。そのため加工用米への助成(10aあたり2万円)の継続と適用範囲の拡大が必要だと訴えた。具を入れるチャーハンの原料米は加工用米制度の対象だが、人気の焼おにぎりの原材料は主食用米扱いのため制度の見直しを求めた。
委員会には江藤拓前農相も出席。来年産で50万t削減しなければならない見通しについて「地獄の釜が開いた。なりふり構わず米の消費を増やす。生産者には米以外をしっかり作ってくださいというべき。国民運動を真剣に考えていかなくてはならない」と話した。
小野寺五典農業基本政策検討委員長は「生産者の立場では米価をしっかり維持していきたい。ただ、消費減のなかでは一定の米価でなければ輸出もできない」と指摘し、国内での消費増や輸出拡大と、生産者の所得確保ができる「相場感」もあるとして引き続き検討していくとした。
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