新型コロナ 高付加価値の食料消費減-OECD予測2020年11月2日
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、世界的に生鮮乳製品やチーズといったより付加価値の高い食料消費が減少、とくに低開発途上国ではそれらに加えて米、小麦といった基礎的食料の消費も減少し食料安全保障も脅かしかねないという予測をOECD(経済協力開発機構)が発表している。
生協総研が10月22日にオンラインで開催した研究会でOECD農業貿易局食料農業市場貿易課の小泉達治農業政策分析官が現地から講演した。OECD-FAO農業見通し(2020~29年)によると、農産物貿易では、純輸出国と純輸入国にさらに分化すると見通している。
ブラジル、アルゼンチンなどラテンアメリカと北米が輸出を伸ばす一方、アジア太平洋、中近東・北アフリカ、サブサハラアフリカも輸入を伸ばす。アジア太平洋地域の輸入伸びはこれまでの10年にくらべれば今後の10年は安定的に推移する。しかし、購買力のないサブサハラアフリカ地域が輸入に一層頼るとなると食料危機のリスクも高まるという。
一方で輸出国は北米、ラテンアフリカなどに一極集中する見通しで小泉氏は「輸出国の食料・農業政策の動向に周囲は敏感にならざるを得ない」と指摘する。ただ、中所得国(3800ドル~1万3000ドル/年)を中心に所得に占める食料品支出割合は減少する見込みで、先進国では畜産物消費が伸び悩むなど、多くの国際食料価格は下落基調で推移すると予測したが、このほどこのトレンドに新型コロナがどう影響を与えるかをOECDは影響評価をした。
それによると(2020/21年度)、生鮮乳製品やチーズは2%を超える減少を見込み、とくに低開発途上国で減少率が高い。豚肉は世界全体では1.5%程度の減少だが、低開発途上国では2%を超える減少率となった。
また、小麦や米は世界全体では0.5%程度の減少率だが、低開発途上国では1%以上の減少率の見込みでそれらの国では基礎的食料不足による食料安保も懸念されると小泉氏は指摘した。
今後のリスクについては新型コロナの感染拡大がいつまで続くのは「まったく見通しがつかない」と再度のロックダウンが実施される現地、フランスから小泉氏は報告。またクサトビバッタの大量発生で東アジアは「コロナとのダブルパンチ」でバッタ駆除のための専門家派遣や薬剤運搬なども困難になっていることなど、食料生産にどう影響を与えるかが見通せない。そのほか、アフリカ豚熱(ASF)や気候変動の影響もある。
リモートで発表をする小泉氏
こうしたなか、今回は一部の国が食料の輸出規制をした。国民への供給を優先したというが、70年代に米国が大豆を禁輸したことによって、ブラジルなどにシェアを奪われたといった輸出国としてリスクも抱えた。
小泉氏によると2008年の食料危機の際の各国の輸出制限は世界のカロリー供給換算で19%に影響を与えたという。一方、今回の輸出規制の影響は5%。「しかし、キルギスは輸出規制をしたカザフスタンから小麦を輸入。カロリー換算すると50%に影響した。これは紛争のリスクにもなる」と指摘し、国によってリスクが偏在していることや、国内でも食料はあっても手が届かないなど、弱い人に打撃を与えているコロナ禍の実態も認識すべきという。
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