米取引事前契約で「価格の安定」 生産から流通、実需で研究会2021年5月20日
農林水産省は米の播種前、収穫前の事前契約について「米取引の事前契約研究会」を開催している。卸売業者からは「事前契約に毎年安定的に取り組むことは価格の安定に繋がると認識。同時に、事前契約に安心して取り組めるよう需給を安定させる仕組みが必要なのではないか」といった意見が出ている。
4月7日に第1回研究会が開催された。
生産者からは「需給環境が厳しいなかで、米の消費流通に関する情報収集等を行っている生産者もいる一方で依然として『作れば買ってもらえる』と考えている生産者が多く、現場レベルまで危機感が共有されていない」、「主食用米から非主食用米に切り替えても、販売先を見つけられない生産者が多く存在している」との米産地の実態が指摘された。また、米の消費拡大には「教育が大事ではないか」との声も。
集出荷業者や米卸売業者からは「事前契約に毎年安定的に取り組むことは価格の安定に繋がると認識。同時に、事前契約に安心して取り組めるよう需給を安定させる仕組みが必要ではないか」、「生産者や実需者の顔が見えるものは需給が緩和する状況でも底堅い契約に繋がるのではないか」との意見の一方、「3年産の複数年契約を生産者に提示中だが、数量は約束できるが価格の約束は難しいと言われる」、「事前契約の多くが入口から出口まで結びつくものとなっておらず、現下の需給緩和局面ではむしろリスクになっている。入口・出口が結びついた契約にしていくことが重要だ」との意見のほか、小規模な米卸業者なども含めた米の需給情勢を国が把握してきめ細かい情報提供をする必要性も指摘された。
また、実需者(外食・中食)からは「需要減少局面で在庫が多くなっており、事前契約を結びたいという生産者は多いが、今は量の大きな契約はできない。保管料も実需で負担している」、「消費を促す施策があると事前契約も進むのではないか」との意見のほか、「顔の見える生産者との契約は最優先しており、価格・数量を固定して今年も契約する。それ以外の契約は数量を調整して交渉」、「安定的に量を確保する必要があり、東日本大震災で調達に苦労した際に複数年契約が役に立った。事前契約に積極的に取り組んでおり、今期も事前契約を着実に増やしている」との意見も出ている。実需者のなかでも安定したビジネスのために事前契約を重視する企業もある。問題は契約の内容で、量だけでなく価格まで契約すること。あるJAでは平成26年産の米価下落を契機に事前契約に力を入れ、地元の外食店向けの業務用米など主食用米の半分を価格も含めた複数年の事前契約を結ぶようになったという。
米の事前契約は平成26年産では30%だったが、その後増えて令和2年産では153万tで集荷数量の52%となった。このうち複数年契約は94万t。農水省の調査では令和3年産米の複数年契約は3月末で60万tとなっている。2年産米の同時期の契約数量は68万tで前年にくらべてやや少ないが、現在の需給状況を反映したものかはまだ見通せないという。
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