「多様な担い手」育成・確保に支援を-JAグループの政策要請2021年7月27日
JA全中は7月の理事会で令和4年度農業予算に関する要請を決めた。長期化する新型コロナウイルスの影響をふまえ、持続的な生産を推進する支援とともに、地域の農地利用に多様な担い手を明確に位置づけることや、みどりの食料システム戦略の目標達成に向けて取り組む農業者の所得確保への支援などを重点としている。
今回の予算要求は、人・農地プランの法定化や新たな農村政策、そして5月策定のみどりの食料システム戦略など、新たな農政の動きを睨み、JAグループが現場実態をふまえて必要と考える施策と予算を求めた。
人と農地の利用方策については政府・与党は5月に人・農地プランを法定化する方針を決めた。これによって地域での話し合いで誰がどのようなかたちで農地を利用していくかを決める「目標地図」の策定が法的な裏づけを伴うことになるが、JAグループはそのために地域で実効性ある話し合いを後押しする支援を求めている。
また、基本計画では地域農業の担い手として認定農業者以外にも中小・家族経営、さらには半農半Xなども含め多様な担い手が支える方向を打ち出した。人・農地プランの「目標地図」を策定ではこうした多様な担い手も含めて描くことが必要になる。逆にいえば担い手だけでは地域のどこで誰が何を作付けするのかといった地域農業戦略は描けない。
ただし多様な担い手を地域農業の力として位置づけるには、JAなど伴走機関とも連携して生産性を向上させる取り組みも必要で、今回はこうした取り組みへの支援とともに、多様な担い手のための機械・作業の共同化の促進、あるいは作業の一部を受託するなど農業支援サービス事業体を育成することへの支援も必要だとしている。
粗放的利用に直接支払を
また、新規就農支援では既存の政策で年間150万円の支援があるが、幅広く就農者を確保するため親元就農への制限などを見直すなど大幅に拡充することや、離農者と就農希望者との全国レベルのマッチング、経営継承の仕組み構築が必要だとしている。
地域で策定した「目標地図」の実現には農地の集約が必要になるが、そのための手法として担い手による農作業受委託の加速化、また、受け手不在農地の農作業受委託の促進などの農地バンク関連事業の拡充も求めている。
また、新たな農村政策の方向で示された、地域の将来の農地利用のなかに、鳥獣緩衝地帯や粗放的利用などについても「目標地図」のなかで位置づけ、こうした農地に対しては日本型直接支払いの対象とすることも提起している。合わせて農村地域づくり事業体や、集落営農組織の事業多角化、農泊の推進への支援も求めている。
みどり戦略については、環境調和型農業に取り組む農業者の所得が十分に確保されるよう、技術革新と低コスト化、さらに国土・環境保全への取り組みとして支援すること必要だとしている。
みどり戦略では有機農業の推進を掲げたが、現場でより実効性ある取り組みとするため、JAグループは土壌診断やたい肥の利用拡大、緑肥作物の活用拡大など「健全な土づくり」への支援を拡充するよう求めている。
そのほか、コロナ禍の影響が長期化するなか、政府に困窮者支援など経済対策を求める声があるなか、JA全中は農業農村分野で、労働力確保支援のほか、大きく需要を失った米対策の拡充、困窮者対策を含めた国産農畜産物の需要回復・拡大対策の継続と拡充などを求めていく。またコロナ患者用病床確保に対する補助など厚生連病院に対する現行の経営対策の継続も必要だとしている。
公約づくりにも反映
こうした予算要求が8月の概算要求にどう反映されるかが当面の焦点となるが、JA全中ではこれらの要求事項が秋に確実に実施される衆院選の向けた政党の公約づくりにどう反映されるかを注視する。最大の農政課題となる米問題はもちろん地域の実態をふまえた施策を政治、行政がどう実現するか課題となる。
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