【農林水産省 新3局長に聞く】(2)農産局 平形雄策局長 需要に応じた作物選択が基本(下)2021年8月17日
米、麦、大豆と園芸作物までの耕種農業を一体で担当する農産局。米だけではなく「需要に応じた生産」が避けて通れない平形局長は強調する。当面の米の需給対策、みどり戦略への対応も含めて課題と方針を聞いた。

中高年 米消費拡大課題
--米の消費拡大にはどう取り組みますか。
昨年3月策定の基本計画のなかでは、米の消費減をいくらかでも抑制しようと令和12年に1人年間51kgを維持するという目標にしています。
最近の調査で意外だったのは10代、20代は米をたくさん食べることに関して前向きな人がかなり多いという結果だったことです。一方、50代、60代は米から他の食べ物へという意向がかなりありました。米は糖質の摂りすぎになるから制限するという感覚が中高年に割とあるのではないかと思います。
これまでは若い人は米を食べないが、年齢の高い人が食べているから米の消費量は維持できているんだということでしたが、実際に調べてみるとそうではない傾向が出てきました。これは農林水産省のアンケート結果だけではなく研究者の方々からも指摘されています。
その原因はまだ明らかではありませんが、米の学校給食が今は週3.5回まで増えています。私自身は小学5年のときに学校給食に初めてご飯が出ました。カレーライスで、本当においしかったことを覚えています。私たちはずっとお昼はパンと牛乳という時代でしたが、今は週3.5回のご飯ですから、ご飯を食べることに抵抗が少なくなっているのではないかと思います。あまり科学的ではありませんが、やはり若い方にはいろいろなかたちでご飯を食べるという商品構成を開発してもらうことは非常にいいことではないかと思います。
一方、中高年層で糖質摂取を気にするという人には玄米やもち麦を入れたご飯、あるいは発芽玄米などいろいろな機能性を訴えたご飯食をもっと展開していく必要があると思っています。そうしたニーズを捉えた売り方も消費拡大対策のなかで考えていかなくてはならないと思います。
--米の輸出についてどう取り組みますか。
今年上半期の米の輸出額は対前年で1.3%増でしたが、昨年はほかの品目が伸びないなかでプラス30%近く伸びました。これはアジア圏での巣ごもり需要で米の小売りが伸びたためです。今年も昨年と同様に好調ですが、対前年比では伸び率は低かったということだと思います。
一方で米菓と日本酒をみると、とくに日本酒は昨年は大幅減でしたが、昨年の10月ごろから各国のレストランなど外食需要が戻ってきて日本酒の需要も戻りました。
やはり輸出先国でどんな売れ方をしているかということがいちばん大事なところです。どんな反応があるのか、売れ方をよく見ながら商品構成を考えて輸出を伸ばしていくことが必要だと思っています。
それから政府の輸出拡大戦略では輸出に取り組む産地を育成しようと、米の場合は1000t単位で輸出米に取り組む産地を呼びかけました。当初思っていた以上の40近い産地から手が上がりました。なかには今年から輸出米を始めるという産地もあるなど、意欲的な産地が多いと思っています。そういった産地と輸出事業者がうまくマッチングし、輸出先と結び付き、同時にコストを下げながら輸出米の生産拡大に取り組むという産地をもっと後押しすることに力を入れていかなければならないと思っています。
みどり戦略 産地の面的取り組みを
--5月に策定されたみどりの食料システム戦略にはどう取り組みますか。
みどりの食料システム戦略では2050年までに有機農業の取り組み面積を100万haまで広げるという目標を掲げていますが、その場合、土地利用型農業が相当がんばっていかなければならないと思っています。
ただ、相当多くの方に有機農業に一気に取り組んでもらうのはハードルが高く、その前段階として農薬や化学肥料の使用を適正な量にしたり、あるいは代替する農法といったものに取り組んでいくということです。その場合、現場の方々が納得して自分が行動できるような項目に落とし込んでいかないと多くの方は、そうは言われても...、という感じだと思います。
ですからわれわれが意識しているのは現場でどう実践すればいいかということを噛み砕いて多くの方に見ていただけるようにすることが大事だ思っています。
もう一方では減農薬、減化学肥料に取り組みながら段階的に有機農業に向かっていくにしても、そうした農産物を使う人、食べる人たちに作り方を理解してもらい評価してもらって受け入れていただくことが大事だと思っています。
そういう意味では今は有機農業に取り組んでいる方が各地におられますが、今後はできればまとまりがある産地として面での取り組みとなり、しかも消費まで含めた一体感のあるものとして現場で実践していただけるような仕組みをつくっていくことが私たち農産局のミッションではないかと考えています。
重要な記事
最新の記事
-
令和7年秋の叙勲 西沢耕一元JA石川県中央会会長ら93人が受章(農協関係)2025年11月3日 -
シンとんぼ(166)食料・農業・農村基本計画(8)農業の技術進歩が鈍化2025年11月1日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(83)テトラゾリルオキシム【防除学習帖】第322回2025年11月1日 -
農薬の正しい使い方(56)細菌病の防除タイミング【今さら聞けない営農情報】第322回2025年11月1日 -
酪農危機の打破に挑む 酪農家存続なくして酪農協なし 【広島県酪農協レポート・1】2025年10月31日 -
国産飼料でコスト削減 TMRと耕畜連携で 【広島県酪農協レポート・2】2025年10月31日 -
【北海道酪肉近大詰め】440万トンも基盤維持に課題、道東で相次ぐ工場増設2025年10月31日 -
米の1等比率は77.0% 9月30日現在2025年10月31日 -
2025肥料年度春肥 高度化成は4.3%値上げ2025年10月31日 -
クマ対策で機動隊派遣 自治体への財政支援など政府に申し入れ 自民PT2025年10月31日 -
(459)断食:修行から管理とビジネスへ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月31日 -
石川佳純が国産食材使用の手作り弁当を披露 ランチ会で全農職員と交流2025年10月31日 -
秋の果実王 旬の柿を堪能 福岡県産「太秋・富有柿フェア」開催 JA全農2025年10月31日 -
「和歌山県産みかんフェア」全農直営飲食店舗で開催 JA全農2025年10月31日 -
カゴメ、旭化成とコラボ「秋はスープで野菜をとろう!Xキャンペーン」実施 JA全農2025年10月31日 -
食べて知って東北応援「東北六県絆米セット」プレゼント JAタウン2025年10月31日 -
11月28、29日に農機フェアを開催 実演・特価品販売コーナーを新設 JAグループ岡山2025年10月31日 -
組合員・利用者に安心と満足の提供を 共済事務インストラクター全国交流集会を開催 JA共済連2025年10月31日 -
JA全農と共同開発 オリジナル製菓・製パン用米粉「笑みたわわ」新発売 富澤商店2025年10月31日 -
【スマート農業の風】(20)GAP管理や農家の出荷管理も絡めて活用2025年10月31日


































