備蓄米の格安放出で農家圧迫 米どころ秋田の大潟村議会 小泉農相に意見書送付2025年6月17日
米どころ・秋田県大潟村の村議会は6月12日、政府備蓄米の安値放出による米価の大幅下落を懸念する意見書案を、全会一致で可決した。意見書は、農家の懸念に早急に対応するよう求め、13日、小泉進次郎農相に送付した。
「低価格での備蓄米放出による大幅な米価下落への懸念に対する対応を求める意見書」を可決した大潟村議会
(6月12日)
意見書は、随意契約による2022年産備蓄米売り渡し価格が60kg当たり1万1010円(税抜き)で、生産費1万5948円より大幅に安いと指摘。「大臣が示した価格が米の適正価格であるとの誤解を生じさせ、米の市場価格を極端に安値に導きかねない」と批判した。
再生産価格を下回る米価への下落は生産者の経営を圧迫し、将来的な米の生産を減退させるとし、国に対し、今回の放出が「備蓄米以外の米価を大幅に下落させかねない」という生産者の懸念に早急に対応することと、今後の放出では生産者が将来を見通せる価格となるよう考慮することを求めている。
産地では米価低落への心配が広がる(大潟村での収獲光景)
大潟村は全国有数の産地で、専業の米農家が多い。意見書を提案した黒瀬友基議員は、備蓄米の安値放出が「この先の米価への極端な値下げ圧力や、在庫増による秋の生産者米価低迷にも不安を覚える。主食である米の安定生産ができなくなり、農村地帯の地域の疲弊や衰退にもつながる」と提案理由を語った。
(資料)
低価格での備蓄米放出による大幅な米価下落への懸念に対する対応を求める意見書
昨今の店頭での米の販売価格が前年に比べて約2倍となるような急激な米価高騰は米生産者の多くも望んでいない。
しかしながら、これまで資材費や農業機械などが大幅に値上がりしている中、昨年まで米価は低迷し続け生産費や生産者利潤を反映させた適正な米価とはなっておらず、これまで生産者は非常に厳しい経営環境に置かれてきていた。
そのような中、国は現在の店頭での米販売価格の高騰に対し備蓄米の運用ルールである食糧法の基本指針を変更し備蓄米の放出を行った。
随意契約による政府の備蓄米売渡価格は2022年産米60kgあたり11,010円(税込み11,890円)で、さらに輸送費も国が負担するとしており、この金額は直近の農林水産省の調査による個別経営農家の生産費15,948円よりも大幅に低い。
また、農林水産大臣が米の生産費を大幅に下回る備蓄米の店頭販売見込み価格を明示したことは、大臣が示した価格が米の適正価格であるとの誤解を生じさせ、米の市場価格を極端に安値に導きかねない。
生産費と適正な生産者利潤を確保した再生産可能な価格を下回る米価への下落は生産者の経営を圧迫し、機械の更新などの設備投資が行えなくなる懸念や後継者や新規就農者の就農を阻み将来的な米の生産を減退させる。それにより国内の農業生産力の低下や地方の衰退も招くことにもつながる。
従って、国に対し、以下のことを求める。
記
1、「今回の低価格での備蓄米放出と店頭販売見込み価格の明示は消費者に適正な米価を誤解させ、備蓄米以外の生産者米価を大幅に下落させかねない」という生産者の懸念に対し早急に対応すること
2、備蓄米放出に際しては、放出を行う量と価格について、その後の生産者米価が生産者が将来を見通せる再生産可能な価格となるよう考慮すること
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年6月12日
秋田県大潟村議会議長 丹野 敏彦
農林水産大臣 小泉 進次郎 様
重要な記事
最新の記事
-
米の価格 前週比▲48円 3週連続下落 農水省調査2025年6月17日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(1)育苗箱処理剤が柱2025年6月17日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(2)雑草管理小まめに2025年6月17日
-
米 収穫量調査 衛星データなど新技術活用へ2025年6月17日
-
価格高騰で3人に1人が米の消費減 パンやうどん、パスタ消費が増加 エクスクリエの調査から2025年6月17日
-
【JA人事】JA中野市(長野県) 望月隆組合長を再任2025年6月17日
-
備蓄米の格安放出で農家圧迫 米どころ秋田の大潟村議会 小泉農相に意見書送付2025年6月17日
-
深刻化するコメ加工食品業界の原料米確保情勢【熊野孝文・米マーケット情報】2025年6月17日
-
2025年産加工かぼちゃ出荷販売会議 香港輸出継続や規格外品の試験出荷で単収向上を JA全農みえ2025年6月17日
-
2024年産加工用契約栽培キャベツ出荷販売反省会を開催 旬別出荷計画の策定や「Z-GIS」の導入推進を確認 JA全農みえ2025年6月17日
-
和歌山「有田みかん大使」募集中 JAありだ共選協議会2025年6月17日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第110回2025年6月17日
-
転職希望者対象に「農業のお仕事説明会」 6月25日と7月15日に開催 北海道十勝総合振興局2025年6月17日
-
「第100回山形農業まつり農機ショー」8月28~30日に開催 山形県農機協会2025年6月17日
-
北海道産赤肉メロン使用「とろける食感 ぎゅっとメロン」17日から発売 ファミリーマート2025年6月17日
-
中標津町と繊維リサイクル推進に関する協定締結 コープさっぽろ2025年6月17日
-
神奈川県職員採用 農政技術(農業土木)経験者募集 7月25日まで2025年6月17日
-
【役員人事】ノウタス(6月17日付)2025年6月17日
-
「九州うまいもの大集合」17日から開催 セブン‐イレブン2025年6月17日
-
農薬出荷数量は1.5%増、農薬出荷金額は2.8%増 2025年農薬年度4月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年6月17日