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害虫は捉えて天敵は活かす 植物の防御戦略の仕組みを解明 静岡大学2026年2月9日

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静岡大学農学部 大畑裕太教育研究支援員と田上陽介准教授、澤田裕子氏、国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産資源研究所の石原由紀氏からなる研究チームは、インゲンマメの葉や茎に生える「トライコーム」と呼ばれるフック状の毛が、害虫のみを選択的に捕らえ、天敵にはほとんど影響を与えないことを明らかにした。

害虫は捉えて天敵は活かす 植物の防御戦略の仕組みを解明 静岡大学

害虫防除において大きな課題の一つは、害虫を抑えながら、天敵は守ること。マメハモグリバエなどのハモグリバエ類は、農作物に深刻な被害をもたらす世界的な重要害虫で、その防除には寄生蜂などの天敵を利用した生物的防除が広く用いられている。

こうした生物的防除と並んで、作物自身がもつ防御機構もまた、害虫管理の重要な要素。植物は葉や茎にトゲや毛(トライコーム)などの物理的防御構造を備え、害虫の侵入や定着を防いでいる。一方で、天敵の移動や探索行動も妨げてしまうことが指摘されており、トライコームには「害虫も天敵も同時に阻害してしまう」というトレードオフの問題が潜んでいた。

図1:インゲンマメの葉の構造図1:インゲンマメの葉の構造

同研究グループは、インゲンマメにおけるトライコームの有無が、ハモグリバエおよび寄生蜂の個体数や寄生率に及ぼす影響を調査。電子顕微鏡による観察から、インゲンマメの葉には3種類のトライコームが存在し、特に本葉裏面のトライコーム密度が高く、このトライコームがハモグリバエを捕捉していることが予想された(図1、図2)。そこで、マメハモグリバエのインゲンマメへの付着実験を行ったところ、本葉裏面に着地した成虫のマメハモグリバエの30%〜40%がトライコームに足や産卵管を引っかけて身動きが取れなくなり、死亡することが確認された(図2)。

図2:インゲンマメの葉面のトライコーム密度およびマメハモグリバエのインゲンマメへの付着数図2:インゲンマメの葉面のトライコーム密度およびマメハモグリバエのインゲンマメへの付着数

さらに8日間にわたって行った試験では、インゲンマメの葉や茎に付着して死亡した個体は78.3%(300個体中235個体)まで高まった。これはマメハモグリバエが次々に葉を移動して産卵するのを防ぐ「致死的なシンク(吸収源)」として機能している 。

一方、同じ葉の上で活動する天敵の寄生蜂が捕まる確率はわずか1.6%〜3.3%に留まった(図3)。走査型電子顕微鏡による観察の結果、以下のメカニズムが示唆された。

害虫は図3:複数の昆虫種におけるトライコームへの付着数および脚部構造の観察結果図3:複数の昆虫種におけるトライコームへの付着数および脚部構造の観察結果

害虫(ハモグリバエ): 足が太く、表面の微細な構造がインゲンマメのフックに絡まりやすい。
天敵(寄生蜂): 足が極めて細いため、フックに引っかからずに隙間を歩くことができる。

さらに、トライコームを除去した葉とそのままの葉で寄生蜂の寄生効率を比較したところ、トライコームの存在によって寄生率が下がることはなかった(80%〜87%を維持、図4)。これは、植物の物理的防御が天敵の邪魔をしないことを意味する。

図4:トライコームの有無による寄生率の変化図4:トライコームの有無による寄生率の変化

同研究では、植物自体の防御能力と生物的防除(天敵利用)が相反することなく共存できることを証明。この「選択的なトラップ」の特性を活かした品種改良や栽培体系の構築は、化学農薬に過度に依存しない、より持続可能で環境に優しい総合的病害虫管理(IPM)の発展に大きく貢献すると期待される。

同成果は1月15日、『Pest Management Science』(電子版)で公開された。

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