【農林水産省 新3局長に聞く】(2)農産局 平形雄策局長 需要に応じた作物選択が基本(上)2021年8月17日
米、麦、大豆と園芸作物までの耕種農業を一体で担当する農産局。米だけではなく「需要に応じた生産」が避けて通れない平形局長は強調する。当面の米の需給対策、みどり戦略への対応も含めて課題と方針を聞いた。

(ひらかた・ゆうさく)昭和39年4月生まれ。群馬県出身。平成元年慶大法学部卒、入省。大臣官房参事官、経営局協同組織課長、経営政策課長、大臣官房予算課長などを経て平成30年生産局農産部長。趣味は海釣り。
--農産局は米・麦・大豆と園芸作物を一体で担当する新たな局ですが、その狙いと局長としての抱負から聞かせてください。
入省して30年以上になりますが、入省当時は食糧庁、農蚕園芸局、食品流通局と耕種部門でも3つの局があり、それぞれで仕事をしているという感じでした。今回、農産局というかたちになって、やっと1つになったと思っています。
これまで米を中心とした水田農業のなかで需要に応じた米の生産や、麦、大豆への転換に長い間取り組んできたわけですが、今後は土地利用型農業以外も含めて需要に応じた生産が避けて通れない、いちばんの基本になると思っています。
そうなると需要者側にどういうニーズがあって、それに対して自分の持っている資源、つまり農地や機械、労働力をどう使いどう需要に応える生産をしていくのかというところから農業経営を展開していくことになると思います。どう需要者のニーズに応えるかを考えたときに、自分は米農家だから、というよりも自分が持っている農地や機械をどう活かして生産し販売していくかを考えようということからすると、別々の部局というよりも1つの担当で担うことが効果的で、また、共通する政策もかなりあるのではないかと思っています。
農産局はそうした政策をとりまとめて1つの組織として組み立てられる局ではないかと思っており、農家の方が需要に応じた生産をするときにいろいろな作物の選択をしやすくするような提案をしていくことが目標だと思っています。
需要に応じた生産ということは、米ではよく言ってきましたが、やはり麦も大豆も実需が求めているものを、適量作らないとせっかく良いものを作っても引き取ってもらえず在庫になってしまいます。
最近、需要も変わってきており、とくに果樹については、従来より非常に品質のいいものが多く出回っていますが、輸出品目としても注目を浴びています。
果樹は斜面など労働環境が厳しいところでも良いものが生産されてきましたが、需要にあった生産量の維持を行うことが難しくなってきており、需用者側から量が足りないと言われることもあります。売れるのに生産ができないということですから、もっと生産現場の足腰を強くしなければいけないということで、どう支援するか課題だと思っています。
--当面の焦点の水田農業については、令和3年産米の営農計画書提出が締め切られました。6.7万haが必要とされた主食用米の作付け転換の見込みはどのような状況でしょうか。
令和3年産の作付転換については昨年10月と11月に食糧部会を開催し、そのころから相当な転換が必要だとずっとアナウンスし続けてきたつもりです。オンラインによる都道府県やJA中央会など関係者の全国会議は合計8回、月1度ほどのペースで開いてきました。その間に需給フレームや3年度対策などについて意見交換しながらできるだけ丁寧に状況を周知しようとしてきました。
その結果、4月段階で意向調査を積み上げると作付転換面積は3.7万ha程度でしたが、6月末で6.1万ha程度となりました。今後さらに調整される面積や、水田のかい廃を踏まえると6.2万haから6.5万haの作付転換が見込まれるということです。こうした見通しを7月の食糧部会でも示しました。
一方、在庫も一昨年来、対前年比で高い水準が続いてきました。6月末時点では対前年比プラス19万tの219万tとかなり高い水準です。ですから、3年産の作付転換が進んだとしても来年6月の在庫量は210万t台の前半になるという見通しです。
こうした状況ですから、今年1年の取り組みというよりも、今の米の消費量が漸減しているなかでは、来年以降も、その地域への定着性の高い作物や米以外で産地化が図れる作物への転換ということを何パーセントずつかは考えていただかなくてはならない環境は変わらないと思います。そうした作付転換をしてもらえるように来年度についても政策をより効果的に組んでいかなければならないと考えています。
その例の1つが麦・大豆の収益性・生産性向上対策で、この対策のポイントは団地化をもう一度復活させようということです。かつての転作助成金では団地化加算が措置され各地でまとまって麦、大豆の生産に取り組みました。団地化できると生産性も向上しますし、地域の水田のなかに水を張らない区域ができますから品質も向上します。同じ面積を作付けするにも団地化しているかどうかで大きく違うということになります。麦・大豆が団地化すれば水稲やその他の品目もブロックローテーションを組むなど団地化せざるを得ないということになると思います。
麦については、最近は大麦やはだか麦で豊作が続き、在庫が積み上がって実需者が引き取れないという状況もありますが、そうした豊凶変動に対してもある程度、調整保管して安定して供給できるように保管施設の整備や民間倉庫での一時保管経費への補助といった対策を令和2年度補正予算で実施しています。次年度の概算要求は現在検討していますが、現場の要望には応えたいと考えています。
調整保管拡充し需給調整
--一方、直近の問題として生産者団体は、コロナ禍による予期せぬ重要減で積み上がる2年産米の在庫対策を国に求めています。どうお考えですか。
調整保管をして翌年の秋以降に販売する米穀周年供給事業は平成27年に仕組みができましたが、これまで実施したのは各年、2万tから8万t程度です。今回は当初20万tで現在は33万tと積み上がっていますが、これほどの取り組みは一度もやったことがありません。
しかも通常ルールでは今年の4月以降の保管経費などの掛かり増し経費を支援するというものですが、2年産米についてはコロナの影響もあって在庫も多いということから5か月前倒しをして11月から経費を支援するようにしました。
また、4月以降に33万tまで増えましたが相当異例の規模です。しかも期限までに卸との契約ができていないと支援の対象になりませんが、その契約期限を7月末から9月末まで延長しました。さらに、実際、卸業者も来年の3月までに引き取るのは難しいけれども、もう少し後であれば引き取る契約もできるという要請もありましたので、そういう声に応えて来年の4月以降の引き取り契約であっても支援の対象になるように追加したわけです。
そういう意味で言えばどんどん対応は拡充しているということです。
たしかに今年の作柄はどうなるかは分かりませんが、作柄のブレはあったとしても基本はこの米穀周年供給事業のなかで吸収してもらい、そのうえで来年の作付けをどのくらいの規模で展開しなければいけないか検討することで需給調整をすることが基本だと思います。
(以下 需要に応じた作物選択が基本(下)に続く)
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