輸入小麦高騰 売り渡し価格 過去2番目の7万2000円台 農水省2022年3月9日
農林水産省は3月9日、4月からの輸入小麦の政府売り渡し価格を17.3%引き上げ1t7万2530円とすると発表した。過去2番目に高い。ウクライナ情勢で国際市場で穀物価格が急騰しているが、今回の価格改定に一部は影響した。今後、今年10月の価格改定に向けて情勢は予断を許さない。国産麦の生産振興が一層重要になる。
米国、カナダの不作と品質低下
4月からの価格改定の算定期間は2021(令和3)年9月第2週から22(令和4)年3月第1週まで。
この期間の小麦価格は、昨年夏の高温と乾燥による米国、カナダ産小麦の不作の影響が大きく昨年末には1ブッシェル(小麦:27.2kg)8.5ドル水準まで高騰した。
また、米国産小麦で不作に加え品質悪化でタンパク値が大幅に上昇し、日本の実需者が製菓用に求めるタンパク値を抑えるという規格に適合するものが不足した。豪州産は不作ではなく、主産地は豊作だったが、単収増加でタンパク値が下落、製麺向けの適合するものが不足した。
こうした状況に加えて年末にロシアが輸出規制を発表した。国内への供給を優先するため、輸出枠を800万tとすることや、枠を超える輸出には50%の関税をかけることを発表した。また、ロシア農業省が市況から算出する指標価格を、あらかじめ設定した基準価格を超えたときの差額を払う可変輸出税も1月から一部適用されている。
日本はロシアからの小麦輸入はないが、2020/21年度の輸出量は3900万tで世界第1位のため、その動向に影響を受けた国際相場は日本の小麦買い付けにも当然、響く。
輸入小麦の政府売渡価格の推移
ウクライナ危機で空前の高値
これらに加えて、ロシアのウクライナ侵攻による供給懸念から3月4日には1ブッシェル13.48ドルと空前の高値となり、それが価格算定に一部影響した。
5銘柄平均の政府売渡価格は1t7万2530円で21(令和3)年10月期とくらべて17.3%上昇する。
過去もっとも高かったのは、豪州での不作や、米国がトウモロコシをエタノール利用を増やしたことと合わせ新興国で食料需要が高まった2008(平成20)年。4月期に前期から30%引き上げ6万9120円とし、10月にはさらに10%引き上げて7万6030円に改定して。この年に日本で開かれた洞爺湖サミットでは世界の食料安全保障が議題の一つになった。
今回の改定価格はそれに次もの。引き上げ率の過去最高は08年の30%で今回は4番目となる。
農水省は価格改定による小麦粉製品への影響額を試算している。原料小麦代金が8%を占める食パンは一斤当たり2.6円(+1.5%)、うどんと中華そば(小麦代金割合1%・外食)は1杯当たりいずれも+1.0円(+0.1%)となる。
家庭用薄力粉は1kg278円の製品が12.1円、+4.4%上がると試算しており、今回の価格改定が消費者物価指数に与える影響は+0.016%だとしている。ただ、製粉企業は在庫が持つため、小麦粉価格を改定するのは、これまでの例では約3か月で4月からただちに引き上げられるわけではない。
国産小麦は近年は100万tを超える年もあるが、単収の変動が大きくその安定化が課題となっている。ただ、国産小麦「ゆめちから」や「きたほなみ」を使用した食パンや菓子パンも発売され、餃子と麺類に使用する小麦を国産に100%切り替えた全国展開の飲食チェーンでてきた。食料の安定供給に関心が高まるなか、国内産の振興策に消費者の理解を進めることも必要だ。
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