農産物の登録品種など知財の海外流出防止へ「育成者権管理機関」を 農水省有識者検討会 2023年度設置めざす2022年7月12日
農産物の登録品種の海外への流出などを防ぐため農林水産省が設置した有識者の検討会は7月8日、流出防止などへ向けて、「専任的に知的財産権の管理、国内外での侵害の監視・対応、海外ライセンスを行うことができる育成者権管理機関を設置すべき」との中間論点整理を公表した。今後、検討を深めて年内をめどに育成者権管理機関のあり方について最終とりまとめを行う。
検討会は5月31日に第1回会合を開き、計4回の会合を経て中間論点整理をまとめた。
新品種の海外流出が問題となる中、新品種を知的財産として保護する種苗法の改正で、品種開発をした育成者権者が登録品種の海外持ち出し制限や自家増殖の許諾性を活用することで、流出防止に取り組みやすくなったとされる。
しかし、実際には公的機関や個人の育種家、中小の種苗会社では、知財管理の体制や予算は限られ、登録品種の管理を十分に行うことは難しいと検討会は指摘。さらに海外での侵害を監視することは困難で、種苗法が改正されても実際の対策は不十分なのが現状とされている。
こうした現状に対して検討会は、育成者権者の意向をふまえて、育成者権の信託や利用権の設定を受け、専任的に知財を管理する育成者権管理機関を設置すべきと提起した。
また、同機関については、育成者権が私的な権利であることや、海外ライセンスから許諾料を得るのは商行為であること、侵害の監視や対応は迅速性が必要なことから「運営は民間が主体となることが適切」とした。
ただ、一方で国内農業の振興と整合性をとり、輸出促進に不利益を及ぼすことがないように取り組む必要があるため、「国の適切な関与が必要」とも提起し、そのうえで国内農業の振興や、品種開発に関わる幅広い民間機関が参画する中立的な組織であることも求めている。
この育成者権管理機関は、品種や対象国を選定して、適切な契約と管理を行い、海外ライセンスで得られる許諾料で運営することをめざすが、許諾料を育成者権者に還元し「品種開発への投資を促進する必要がある」とも指摘した。
農水省は、2016年に流出したシャインマスカットは、かりに育成者権が保護されていれば、中国の市場出荷額(1㎏340円)と一般的な許諾料(出荷額の3%)から、年間100億円以上がロイヤルティとして日本に入ってくると試算している。
また、無断栽培のリスクが高い品目で海外出願の支援や代行なども行える組織とする。
論点整理では、海外での模倣品を排除するため「育成者権と商標権の双方を活用して対策を講じることが効果的」とし、生産者や販売業者を会員に限定する「クラブ制」の取り組みも有効だ指摘した。ある品種について生産者と販売者を会員に独占的な契約を結ぶことで流通量や品質を厳格に管理する仕組みだ。
西オーストラリア州で開発されたリンゴの品種のピンクレディは、各国の生産者が組織をつくり、苗木生産と商標使用に対し一定の使用料を支払うシステムになっている。こうした業務も検討していく。
海外での侵害の監視と訴訟などに対応するため、海外の育成者権管理機関と連携し、お互いの登録品種の侵害がないかどうかを監視するなどの取り組みも求められる。
フランスのシカソフ(SICASОV)は1947年に種苗企業が出資して設立し国内外の4400品種を管理し、年間98億円から126億円のロイヤルティを得ているという。
今後、海外の機関の事業内容なども調査し検討を進める。年内の最終とりまとめを受けて農水省は2023年度中の立ち上げをめざしたいとしている。
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