食料安保強化と環境負荷低減へ メタン排出低減イネなど育種方針策定2022年12月22日
農林水産省は12月21日、みどり戦略の目標実現と食料安全保障の強化に向けて「みどりの品種育成方針」を公表した。おおむね5年後をめどに主要な育種目標を整理するとともに、ゲノム情報などをもとに効率的な品種育成ができるよう支援するスマート育種基盤を構築し、品種育成を加速化する。
みどり戦略は、2050年までに農林水産業の二酸化炭素排出ゼロ、化学農薬使用量をリスク換算で50%低減、化学肥料使用量の30%低減などの目標を掲げている。
今回の品種育成方針は、これらの目標を達成するために策定したもので▽①温室効果ガス削減に資する品種、②化学農薬の使用量低減に資する品種、③化学肥料の使用量低減に資する品種、④気候変動対応に資する品種、⑤食料安全保障に資する品種の5つのカテゴリーでそれぞれ品種育成目標を整理した。
水田からのメタン排出量は農業が排出する温室効果ガスの4分の1を占めている。これまで排出削減技術として中干し期間の延長や秋耕が開発されているが、さらに削減するためメタン排出削減に資するイネ品種を育成する。
これまでの研究では、メタン排出量はイネの品種間で差異があることが明らかになっており、排出削減につながる根の形質や関与する遺伝子の解析が進められている。
育成方針では、この形質を「コシヒカリ」など主力品種へ導入を進めたうえで、地域ブランド品種や業務用、加工用、飼料用、米粉用品種などへ導入を図って全国展開を推進するとしている。
化学農薬の使用量低減に向けた品種育成のうち、重点的に推進するのは、サツマイモ基腐病抵抗性品種。カンショは青果用、加工食品用、デンプン原料用、醸造用などで広く利用されており、それぞれの用途に適した抵抗性品種を育成する。
化学肥料の使用量低減に資する品種育成では、BNI(生物的硝化抑制)能を強化した小麦やトウモロコシなどを育成する。肥料は土壌微生物の硝化作用によって硝酸態窒素となって流れ出し地下水汚染の原因となっているだけでなく、CО2の298倍の温室効果を持つ亜酸化窒素(N2О)に変換されて排出されることが問題となっている。
BNI能とは、植物自身が硝化作用を抑制する化学物質を分泌する能力で、これによって肥料を吸収できる。この能力を高めた品種が育成されれば少ない肥料でも生育できるため、肥料削減に貢献する。
気候変動に対応した品種育成のうち、果樹では着色の優れたリンゴ、ブドウ品種、高温でも浮皮しにくいカンキツの育成を推進する。
食料安全保障に資する品種育成では、米粉パンや米粉麺への加工適性や製粉性に優れた極多収イネ品種や、増産が求められている麦、大豆、カロリー供給量が高いカンショ、バレイショの品種育成を進める。
また、飼料自給率を向上させるため耐湿性や赤かび病抵抗性、耐倒伏性を持つ子実用トウモロコシ、収量性に優れた牧草品種の育成も推進する。
品種育成を加速化するため、最適な交配組み合わせを予測する技術や、ゲノム情報をもとに有望な品種候補を迅速に選抜する技術などをもとにスマート育種基盤を構築する。今回整理した目標とする品種は、交配で育成できる品種であり、ゲノム編集は利用しない。
育種基盤を利用し、国公立の研究機関や大学、国内の民間企業など「オールジャパン体制」で品種育成を加速化する方針だ。
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