茨城県で全国初の鳥インフル防止条例 背景に自治体の多大負担 迅速な防疫措置へ農場にも努力義務2023年3月24日
鳥インフルエンザが過去最大の猛威をふるう中、茨城県で3月24日、発生時に迅速に防疫措置を進められるよう、大規模養鶏場を対象に、防疫措置で確保できる人員や資材を対応計画に記載するよう義務付けることなどを盛り込んだ条例が制定された。鳥インフルに関する条例は全国初という。今シーズンの鳥インフルによる殺処分数は全国の全飼養羽数の1割を超える約1645万羽に達し、防疫措置にかかる行政などの負担が重いことが背景にある。農水省も大規模農場が防疫作業に協力する計画づくりを都道府県に指導している。
同日、茨城県議会で可決・成立したのは「茨城県鳥インフルエンザの発生の予防及びまん延の防止に関する条例」。4月1日に施行される(一部は10月1日)。
条例では、採卵鶏を50万羽以上飼養できる大規模農場について、知事が鶏舎の構造や設備について基準を定めることとし、鶏舎を新設しようとする場合、基準への適合を努力義務としている。
また、大規模農場の飼養衛生管理者は年1回以上、県が実施する研修を受けることや、大規模事業者は、鳥インフルエンザに備えた対応計画を策定し、防疫措置を行う場合に確保できる人員や資材を記載することも義務付けている。
背景に行政の重い負担 防疫作業にのべ1万人
採卵鶏の飼養羽数が全国一の茨城県では、今シーズン鳥インフルエンザの発生が6件相次ぎ、これまでに400万羽以上が殺処分されている。
県によると、鳥インフルで大量の殺処分が発生すると、24時間体制で防疫措置を取るため1日360人もの人員が必要となり、職員の予定業務がキャンセルされたり、慣れない作業で職員の体力的や精神的な負担も重なり行政に重い負担がかかるという。11月に鳥インフルで104万羽の殺処分が発生した農場の防疫作業では、消毒までの18日間で県職員以外の人員も含めてべ1万人以上が作業にあたったという。
同県の担当者は「実際に大規模農場で鳥インフルが発生した場合、ショックを受けている農場に強く対応を求めることもできず、県にかかる負担は大きくなることが多い。農場の経済的被害や精神的負担も重く、事前に発生にしっかりと備えていただきたい」と話す。
全国の殺処分数は1645万羽 国も大規模農場協力の計画づくり指導
昨年12月、茨城県の大井川和彦知事は農水省を訪れ、大規模養鶏場ではみずから発生に備えることも指導するよう要望した。
農水省によると、飼養管理基準で大規模農場には対応計画を策定することが義務付けられているが、同省が20万羽以上を飼養する全国約300か所の農場の対応計画について調べたところ、具体的に動員できる人員や資材まできちんと記載されているケースは約8割にとどまっていたという。
こうした動きを受けて今年1月に開かれた農水省の専門家による合同会議では、法律上、発生時のまん延防止についての第一義的責任は家畜の所有者にあることを改めて認識し、大規模農場が策定する対応計画には、農場も防疫作業に協力する計画とするよう心がけてほしいと指摘している。これを踏まえて農水省は大規模農場が防疫作業に協力する対応計画づくりを改めて都道府県に指導している。
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