花粉発生量を30年で半減へ 人工林10年で2割減 医薬品として「スギ花粉米」も 政府の花粉症対策2023年5月31日
政府の花粉症に関する関係閣僚会議が5月30日開かれ、10年後にスギの人工林を約2割減らすなど対策を進め、30年後に花粉の発生量の半減を目指す花粉症対策の全体像が示された。これを受けて農水省は、花粉の少ない苗木への植え替えなどを加速させるほか、症状を抑える医薬品として「スギ花粉米」の実用化に向けた臨床研究を本格化させる方針を明らかにした。
花粉症対策の全体像は、発生源対策と飛散対策、発症・暴露対策を3本柱としてまとめられた。
発生源対策としては、10年後にスギ人工林を約2割減らすことをめざす。現在、年間約5万haの伐採量を10年後には約7万haに増やすとともに、花粉の少ない苗木などへの植え替えを促進させ、スギ人工林の減少速度を約2倍とする。一方でスギ材の住宅分野での転換促進などスギ材の需要拡大を進めるとともに、花粉の少ないスギ苗木の生産割合をスギ苗木全体の9割以上に引き上げる。こうした対策を進めて約30年後には花粉発生量を半減させることを目指す。
飛散対策としては、スギ花粉の飛散防止剤の開発を促進して5年後に実用化のメドをたてることや、民間事業者のスギ花粉飛散量予測の精度向上を支援するため、スーパーコンピューターなどを活用した詳細な三次元の気象情報などを提供する。
さらに発症・暴露対策として、厚労省を中心に治療法について情報提供や研究開発の支援を進めるほか、農水省関係では花粉症の症状を抑える「スギ花粉米」の実用化に向けた臨床研究を進める。
「スギ花粉米」は、農研機構が開発した、遺伝子組み換え技術で構造を改変してアレルギー反応を起こりにくくした改変アレルギンという原因物資を米に蓄積させたもの。毎日摂取することで、異物を排除せずに受け入れる免疫寛容という状態が起こり、スギ花粉を取り込んでもアレルギー反応が起きにくくなる効果が期待できるという。
同省は「これまで小規模の臨床試験しかしていなかったが、しっかりと実証して人への効果や接種方法に関する知見を得て医薬品として実用化をめざしたい」と話している。
農水省などは、スギ人工林の伐採加速化や苗木増産に需要拡大、労働力の確保など目標の達成に向けて予算的な裏付けも含め総合的な対策をまとめた「林業活性化・木材利用推進パッケージ」を策定する方針。
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