食料自給率 3年連続38% 小麦生産増もてん菜の病害で製糖量低下 23年度2024年8月8日
農林水産省は8月8日、2023年度の食料自給率を公表した。カロリーベースの自給率は3年連続で38%となった。生産額ベースの自給率は過去最低となった前年度の58%から3ポイント上昇し61%となった。

カロリーベースの食料自給率は38.19%で前年度の37.76%(確定値)から0.4ポイントほど上昇した。
これは小麦の単収が増加し国内生産量が99万tから109万tへと10%増加したため、+0.4ポイント寄与した。また、輸入依存度の高い油脂類の消費量が1人1年当たり▲3%となったことで自給率向上に+0.3ポイント寄与したほか、米の1人1年当たりの消費量が50.9kgから51.1kgに増加し、0.2ポイントの上昇に寄与した。
一方、てん菜に褐斑病が多発したため糖度が低下し、国産原料による製糖量が73万tから53万tへと▲27%となった。そのため0.6ポイント引き下げに寄与した。
こうしたことからカロリーベースの食料自給率は38%と横ばいとなった。
一方、生産額ベースの自給率は前年度の58.32%から3ポイント上昇し61(60.94)%となった。
要因は米国産の牛肉や飼料などの輸入量減で畜産物の輸入総額が▲2384億円となったことや、油脂類が原料を含めて輸入総額が▲1018億円となったことなど。農水省によると米国産牛肉は生産量の減少で価格が高騰し輸入量そのものが減ったという。また、飼料原料の穀物価格の国際相場が前年度に比べて落ち着いたことも輸入総額の減少につながった。
昨年度の為替は円安で輸入額の増加につながるとも見られたが、円安より輸入量の減少自体が輸入総額の減少につながったという。
そのほか米や野菜の単価上昇も国内生産額のプラス要因となった。
また、2020年3月策定の現行基本計画で、飼料が国産か輸入かにかかわらず畜産業の生産力を評価するために設定された食料国産率はカロリーベースで47%と前年並み、生産額ベースでは輸入総額の減少などで+2ポイントの67%となった。
飼料自給率は1ポイント増の27%となった。飼料の輸入量が減少し需要量全体が▲6.2%となるなか、粗飼料の供給量は▲2.0%にとどまり粗飼料自給率は2ポイント上昇して80%となった。濃厚飼料自給率は前年度と同じ13%だった。
食料自給率は2000年代に入ってからカロリーベースで40%から38%へ横ばいで推移している。
45%という目標を掲げながら3年連続で38%という横ばいとなっていることについて、8日の記者会見で政策効果を問われた坂本農相は「小麦、大豆の増産は政策として(自給率の)プラスに寄与している。ただ、米の消費減少がマイナスに寄与した結果、横ばいで推移している」としたうえで「横ばいだからといって政策効果が発揮されていないというわけではない。さまざまな政策効果を定量的に測定することは難しい。趨勢も加味して論議する必要がある」と反論した。
基本法の改正を受けた次期基本計画の議論は秋から始まる。自給率目標については基本計画策定のなかで検討することになる。改正基本法では食料自給率は食料安全保障の確保に関する「目標の1つ」とされ、その位置づけが後退したのではないかと批判もある。農水省はカロリーベースの総合食料自給率だけで「政策を評価をすることは困難」(7月10日の農水省本省での基本法説明会)とし、品目ごとの生産と消費実態など、自給率を構成している要素に分けて目標を設定し検証していく必要があるとの考えも示した。
食料供給力 低下続く
農水省は同日、食料自給力指標も公表した。これは国内生産のみでどれだけ食料を最大限生産することが可能か、わが国の食料の潜在生産能力を指標化したもの。不作付地も含めた農地と農業技術、労働力に着目して試算する。

その結果、23年度の食料自給力指標は、小麦の単収増加によるプラス要因が農地面積の減少によるマイナス要因を上回り、米・小麦中心の作付けでは前年度より16kcal/人・日多い、1752kcal/人・日となった。
また、いも類中心の作付けでは労働力や農地面積の減少で前年度を24kcal/人・日下回る2362kcal/人・日となった。
農水省は食料自給力の維持向上のためには、農地の確保、単収向上に加え、労働力の確保や省力化などの技術改善が重要だとしている。
(参考)
わが国と諸外国の食料自給率

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