農業生産性の向上と食品ロス防止など合意 3年ぶりに閣僚声明 APEC食料安保会合2024年8月22日
第9回APEC(アジア太平洋経済強力会議)食料安全保障担当大臣会合が8月18日にペルーで開かれ、食料安全保障を改善するためにイノベーションを支援して農業生産性を向上させることや、食品ロスの防止・削減に向けた取り組みで閣僚声明と関連文書を採択した。閣僚声明が採択されたのは3年ぶり。
会合で日本は世界の食料安全保障に大きな影響を及ぼすロシアによるウクライナ侵略を厳しく非難し、直ちに侵略を止めるよう強く求めることを主張した。
他国からも同様の非難の声が上がるとともに、イスラエルによるガザ攻撃が住民の飢餓を招いているなどの意見もあった。
一方、ロシア、中国は反発しAPECはこうした問題を議論する場ではないなど主張した。
今回の会合ではこうした議論の経過を議長声明のなかでまとめ、3年ぶりに閣僚声明の採択に至ったようだ。
閣僚声明では、2023年に7億1300万人~5700万人、11人に1人が飢餓に直面した可能性があり、世界的に栄養不足が蔓延していることに触れ、食料不安と栄養不足の「課題が増大している」との認識を共有している。
そのうえで食料安全保障と栄養を改善するために、研究とイノベーションを支援して効率的な農業生産性を向上させるとした。
また、気候変動への適応と影響緩和に向けた農業・食料システムの改善、生物多様性の保全に向けた戦略的な政策な確保の重要性も指摘した。
同時に貿易も重視し、WTO(世界貿易機関)を中核とした、ルールに基づく無差別、公平で開かれた透明性ある多国間貿易システムの実施に向けた取り組みの継続も確認した。
ペルーが議長国となっている今年のAPECでは食品ロス・廃棄を防止、削減するための取り組みが課題とされており、会合では取り組むべき7つの原則も採択された。
原則を記した文書では冒頭で世界で生産される食料の3分の1に相当する13億tが破棄されているとするFAO(国連食料農業機関)の推計を挙げるとともに、一方では30億人以上が安全で栄養価の高い食料を入手できていない現状を指摘している。
そのうえで食品ロス・廃棄の防止、削減には研究、イノベーション、デジタル化促進の取り組みが重要であると同時に、科学や証拠に基づくアプローチと伝統的知識の両法が重要だとした。
また、生産、貯蔵、加工、包装、流通、消費を含む食品産業における生産性、持続可能性の改善を奨励することも原則の1つとした。
日本は「みどり戦略」の取り組みと、ASEAN各国と協力して食料システム変革を進めていくための「日ASEANみどり協力プラン」を紹介した。
今回の会合で閣僚声明が採択されたことについて農水省は「合意文書として約束したことになる」と意義を話す。また、閣僚声明や関連文書に、イノベーションの促進によって農業の生産性、持続可能性を向上させることが盛り込まれたことについて「昨年4月のG7宮崎農相会合での共通認識が引き継がれた」と評価している。
来年は韓国が議長国となる。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(140)-改正食料・農業・農村基本法(26)-2025年5月3日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(57)【防除学習帖】第296回2025年5月3日
-
農薬の正しい使い方(30)【今さら聞けない営農情報】第296回2025年5月3日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「盗人に追い銭」「鴨葱」外交の生贄にしてはならぬ農産物2025年5月2日
-
【2025国際協同組合年】情報を共有 協同の力で国際協力 連続シンポスタート2025年5月2日
-
イネカメムシが越冬 埼玉、群馬、栃木で確認 被害多発の恐れ2025年5月2日
-
九州和牛をシンガポール人に人気のお土産に 福岡空港で検疫代行サービスを開始 福岡ソノリク2025年5月2日
-
就労継続支援B型事業所を開設し農福連携に挑戦 有機農家とも業務提携 ハピネス2025年5月2日
-
宮崎ガス「カーボン・オフセット都市ガス」 を県庁などに供給開始 農林中金が媒介2025年5月2日
-
5月29日から「丸の内 日本ワインWeeks2025」開催 "日本ワイン"を学び、楽しむ3週間 三菱地所2025年5月2日
-
協同心の泉 大切に 創立記念式典 家の光協会2025年5月2日
-
【スマート農業の風】(14)スマート農業のハードルを下げる2025年5月2日
-
(433)「エルダースピーク」実体験【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年5月2日
-
約1cm程度の害虫を強力捕獲「吊るしてGET虫ミニ強力タイプ」新発売 平城商事2025年5月2日
-
農中情報システム 自社の導入・活用のノウハウを活かし「Box」通じたDX支援開始2025年5月2日
-
洗車を楽しく「CRUZARD」洗車仕様ホースリールとノズルを発売 コメリ2025年5月2日
-
戦後80年の国際協同組合年 世代超え「戦争と平和」考える パルシステム神奈川2025年5月2日
-
生協の「地域見守り協定」締結数 全市区町村数の75%超の1308市区町村に到達2025年5月2日
-
ムコ多糖症ニホンザルの臨床徴候改善に成功 組換えカイコと糖鎖改変技術による新型酵素2025年5月2日
-
エフピコ×Aコープ「エコトレー」など積極使用で「ストアtoストア」協働を拡大2025年5月2日