コスト考慮した価格形成 関係者に努力義務 不十分なら勧告・公表 農水省2025年2月10日
農林水産省は2月7日、合理的な費用を考慮した価格形成の新たな仕組みの概要を公表した。
これまでの検討のなかで、合理的なコストを考慮した食品の価格形成のためには、生産から流通までの各段階でコストを把握し、それを買い手側が考慮し、売り手との協議のうえ当事者が取引条件を決めるという姿を描いてきた。
そのため新たな仕組みでは、飲食品事業者に適正な取引を行う「努力義務」を明確化する。生産者など売り手側には生産・製造にかかったコストを把握し、それが変動した場合に要因や水準を買い手側に誠実に説明することを求める。
一方、買い手側には売り手から価格見直しなど協議の申し出があった場合は誠実に協議に応じることを努力義務とする。また、売り手、買い手双方に商習慣の見直しなど持続的な食料システムに必要な取り組みの提案があった場合に協力することも努力義務とする。
そのうえで農林水産大臣が努力義務に対応した「行動規範」(判断基準)を省令で明確化し、指導・助言を実施し、それでも取り組みが不十分な場合は、報告・立ち入り検査、勧告・公表という措置が取れるよう法制度化する。さらに不公正な取引に該当すると考えられるときは公正取引委員会に通知する。
不十分な取り組みとして農水省が想定するのは、売り手がコスト上昇を理由として価格交渉を申し入れたにも関わらず、一切協議に応じない場合や、コストを考慮することについての見解を求めて一切回答がないなど。
また、国の補助金支援を理由に支援分の値引き要請を生産者サイドに求めることも適正な価格形成への不十分な取り組みとするほか、消費者の値ごろ感を理由にしてコストを著しく下回る価格での納入を一方的に求めることが常態化しているなども対象となる。
こうした規制を食料全般に関して導入するが、報告・立ち入り検査、勧告・公表の「指定品目」のみが対象となる。
指定品目とは取引において、通常、コストが認識されていない品目で、たとえば消費者の値ごろ感が根拠になって価格が決められているものなどが対象となる。
現在、農水省の適正な価格形成に関する協議会では飲用牛乳、豆腐・納豆、米、野菜の4つのワーキンググループがそれぞれのコストや取引の実態などを検証し、コスト指標について合意形成を図ろうと協議をしているが、こうした生産者から小売事業者まで含めた取り組みをもとに、農林水産大臣が指定品目として指定する。
品目が指定されれば関係団体でコスト指標作成団体を設置、運営することが認められる。そのうえでコスト指標が変動すれば売り手と買い手の間で価格交渉が行われることになる。
これらの規制を実施できるよう食品等流通法(食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律)を改正し改正案を通常国会に提出する。
また、卸売市場での取引に対応するため卸売市場法も改正し、市場開設者が指定品目とコスト指標を市場内で公表することを義務づける。ただ、卸売市場では出荷された青果物の早急な売買が機能となっていることから、当面は貯蔵性が高いタマネギやバレイショなどを対象として、取り扱い数量などを設定してコスト指標をふまえた取引を行うことなどから運用を始める方針だ。
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