新しい「表紙」は誰に? 5候補の農政公約は 自民党総裁選が火蓋2025年9月24日
自民党総裁選が9月22日に告示され、10月4日(投開票日)までの選挙戦が始まった。立候補した5氏は農政に関し、どのようなスタンスからどんな政策を掲げているのか。
自民党総裁選候補者5人による共同記者会見(9月23日、自民党本部)
小泉進次郎農相 米価対策に奔走、増産に舵
「立て直す。国民の声とともに」をキャッチフレーズとする小泉進次郎農相(44、神奈川11区)は、「意欲ある米生産者が不安なく増産に取り組めるセーフティネットの構築」を公約した(オフィシャルサイト)。9月22日の立ち合い演説会では「地方の雇用や産業、そしてコミュニティーを支える柱は農林水産業です。その基盤を守り抜くため棚田、家族経営、中山間地の農業を守ります。大規模化、集約化、スマート農業も進めます」と訴えた。
10年前には自民党農林部会長を務め、新自由主義的な立場から「農協改革」の旗を振った。5月の農相就任後は「米大臣」を自称し、高騰米価の鎮静化に奔走。消費者から評価を受けた反面、「需給をじゃぶじゃぶにし、緊急輸入も選択肢」といった発言では産地の不安を煽った。8月、石破首相と共に「米増産」を打ち出した。
東日本大震災後の被災地や農業現場への訪問、犯罪被害者支援の取り組みなどにふれ、自身の強みは「現場の声に耳を澄ます」「当事者の声を聴き、それを形にすること」だと述べた(9月23日共同記者会見)。
高市早苗前経済安保相 先端技術実装に力点
「日本列島を強く豊かに」と掲げるのは前経済安全保障相の高市早苗氏(64、奈良2区)。農政では「食料安全保障の確立」をテーマに、「農業構造転換集中対策期間に集中投資を実施」「新たな栽培技術の実証事業を推進」「全国の農林水産物・食品の輸出を促進」「最先端技術を誇る完全閉鎖型植物工場や陸上養殖施設を国内外に展開」といった、技術革新とその実装にウエイトを置いた重点政策を並べた(総裁選記者会見資料)。
物価高対策に関連し「自治体向けに推奨メニューを付け交付金を拡充する。農林水産業も資材価格高騰などで困っておられるので、推奨メニューに書き込みたい」と述べた(9月23日共同記者会見)。
自身の強みはサイバーセキュリティ対策、水源林買収などに対応する森林法改正などを挙げ「先見性と実行力」だとした(9月23日共同記者会見)。
林芳正官房長官 経験と人脈に強み、農相も2度
「経験と実績で未来を切り拓く」と掲げる林芳正官房長官(64、山口3区)は、2度の農相経験があり、農相時代に農福連携を推進したことで知られる。
9月22日の立ち合い演説会では「地方創生、農林水産、防災いずれも大事な分野であります。需要に応じたコメの生産をしっかりとやっていく。それとともに麦、大豆。たくさん使っている、豆腐もしょうゆもビールも、輸入が8割を超えています。麦と大豆をしっかりと付加価値をつける形も入れながら、この国産率を上げていくことによって食料安全保障、しっかりと確保してまいります」と訴えた。
自身の強みは、厳しい局面も含めた経験と各国との人脈を挙げた(9月23日共同記者会見)。
茂木敏充前幹事長 通商交渉でトランプ氏も評価
茂木敏充前幹事長(69、栃木5区)は経済再生担当大臣時、TPP11を妥結。その後は日米通商交渉も担当した。日米通商交渉時にはトランプ前大統領より「タフネゴシエーター」と呼ばれたという。
総裁選では「投資で地方を豊かに」と掲げ、その一つとして「食料安全保障の確立に向けた構造転換集中対策の推進」を掲げた。9月22日の立会演説会では「安定して稼げる農業、さらに私も中山間地域で生まれました。中山間地域でも営農ができるような、続けられるような支援策、これをとってまいりたい」と訴えた。
自身の強みについて、自民党政調会長や幹事長を務め野党との協議、合意経験があることを挙げた。
小林鷹之元経済安保相(50) 農業は「安保上の戦略産業」
「挑戦で拓く、新しい日本」を掲げる小林鷹之元経済安保相(50、千葉2区)は、あきらめではなく希望、頑張れば報われるという実感を現役世代が持てる日本を創るとアピールする。
食料安全保障については「国民の食卓に直結する農業は、国の安全保障上戦略産業です。コメの安定供給、農家の所得の向上これは必須。小麦、大豆、トウモロコシを含めた、食料自給率も上げていく。農業の大規模化、スマート農業だけではなくて中山間地の農業もしっかりと支えてまいります」と訴える(9月22日立会演説会)。
TPP交渉に際して2011年には「バラマキ(戸別所得補償)を続けるよりも、むしろ......販路拡大の努力を国が支援していくことの方が、農業の未来にとって遥かに有益です」と主張した(小林氏メールマガジン、2011年)。
自身の強みについては、経済安全保障などを挙げ「0から1を作り出していく力」だとした(9月23日共同記者会見)。
与野党の熟議で政策を前に
拳を握る自民党総裁選候補者ら。
左から小林鷹之元経済安保相、茂木敏充前幹事長、林芳正官房長官、高市早苗前経済安保相、小泉進次郎農相
今回の総裁選は、自民党が結党以来初めて衆参両院で過半数を失った状況で行われている。そのため総裁選では、連立の枠組み拡大や政策での野党との協力にも注目が集まる。
いま重要なのは、総裁選でも議論されている物価高騰をはじめさまざまな課題が山積する中、与野党の垣根を越えて建設的に議論し、政策を前に進めることである。自民党新総裁が決まり次第、首班指名選挙が実施され新たな首相が決まるが、十分な会期をとって臨時国会を開催し政策議論を深めるべきだろう。
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