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【TPP交渉とこれからの日本農業】多国籍企業と諸国民が対立(田代洋一・大妻女子大学教授)2014年3月10日

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・非関税障壁撤廃日米の利益一致
・TPPの輪郭は関税の完全撤廃
・農産物を犠牲に自動車で利益を
・妥協へのカード生産調整の廃止
・4割のコスト減、農地集積加速へ
・反TPPの運動、地域再生の力に

 2月にシンガポールで開かれたTPP(環太平洋連携協定)閣僚会議が決裂した。日米は価値観を共通する同盟国を誇ってきた。TPPでの聖域確保も何とかなるだろうというのが安倍首相の希望的観測だった。しかし靖国参拝など、ほんとうに価値観を共通しているのかの疑問が米国も含め世界から出ている。オバマ大統領の4月来日も、互いに「お土産なし」の可能性が高いとすれば、交渉本格化は11月の米国の中間選挙後にもちこされる可能性もある。この際に今一度TPPの本質を振り返ってみる必要がある。

本質見極め
持続的農業の確立を

◆非関税障壁撤廃 日米の利益一致

田代洋一教授 日米の多国籍企業と政治支配層にとって、TPPはその野望の唯一の突破口である。オバマ大統領にとっては当面は中間選挙だが、長期的には「太平洋国家」=米国と「海洋強国」=中国の100年をかけたアジア太平洋覇権争いに勝ち抜くためには、経済力の強化とアメリカンスタンダードのグローバル化を図るしかない。安倍首相にとってもTPPは、決め手に欠ける成長戦略の切り札だ。
 本来その主たる領域は、「21世紀型」といわれるサービス貿易や海外投資収益に係わる非関税障壁の撤廃であり、そこでの日米の利益は一致している。新薬の特許や著作権の期間延長、国民国家が国民の安全・健康・環境を守る権利よりも多国籍企業の利益を優先するISDS条項などだ。そこでは日米多国籍企業の利益と国民の利益が対立している。多国籍企業vs国民、これがTPPの本質だ。経済効果は意外に小さいが国民生活へのダメージは決定的である。

(写真)
田代洋一教授

◆TPPの輪郭は関税の完全撤廃

2月のシンガポールにおけるTPP閣僚会議の報告をする甘利担当相(自民党本部で) ところが自動車と農産品といった「20世紀型」の分野で日米が角を突き合わせることになった。「21世紀型」で先進国利益を確保したい日米支配層としては「なんでこんなところで」と切歯扼腕するところだ。
 日米が互いに相手が「かたくなだ」と攻撃しあっているが、悪いのはどっちか。米国が「かたくな」な理由の一つはTPA(大統領貿易促進権限)法が通っていないからだ。ひとたびTPAをとれば、米国は大胆な妥協カード切りに打って出る。ガット・ウルグアイラウンドの最終局面でのミニマム・アクセス(MA)がそうだった。そして米国が妥協カードを切りはじめたら(例えば自動車間の関税維持期間、部品関税など)日本も切らねばならない。それが通商交渉の鉄則である。
 しかし米国は関税撤廃の原則は絶対にゆずらない。それは「かたくな」だからではなく、「TPPの輪郭」に決められたTPPの大原則だからである。米国も砂糖や乳製品等の関税を残しているが、それはTPP以前からのFTAの延長としてである。
 米国は自動車についても関税撤廃しないとは一言も言っていない。ただ撤廃まで最長期間をかけるとしているだけだ。しかるに日本は関税撤廃しないという。TPPという土俵の上で論理的に正しいのはどちらか。それは米国であって日本ではない。

(写真)
2月のシンガポールにおけるTPP閣僚会議の報告をする甘利担当相(自民党本部で)

◆農産物を犠牲に自動車で利益を

 妥協カード切りが始まった時、日本が切りうるカードは、農産品の関税撤廃を認めたうえで、どれくらいの期間をかけて撤廃するか、それまでの間、調整品等の関税撤廃、関税の引き下げ、関税割当制度、MAの拡大など、どんな形で国境措置をゆるめるかしかない。いずれにしても自動車で利益を得るために農業を犠牲にするという構図は変わらない。
 しかるに日本の国会決議はそのような妥協をあらかじめ封じている。すなわち「10年を超える段階的な関税撤廃も認めない」。とすれば日本の取るべき道は唯一、「交渉からの脱退」しかない。これまた自民党や国会決議の言葉だ。日本はほんとうに関税撤廃する気がなければ、はじめからTPPに参加すべきでなかった。逆にTPPに入って関税撤廃しないで済むというのは、安倍首相の錯覚に始まった幻想に過ぎない。

◆妥協へのカード 生産調整の廃止

次世代へ美しい農村を残すことができるのか(富山県入善町の風景) もちろん安倍内閣は腹の中では妥協したくてうずうずしている。10月の交渉にオバマ大統領が出席できなくなった時、日本は米国に成り代わってTPPを仕切ろうとした。そのためにはまず日本が妥協しなければならないということで、この頃から農産5品の見直しと国内農政「改革」が加速するようになった。その象徴が生産調整政策の5年後廃止である。なぜなら、TPPで安い外米が輸入されるようになれば生産調整しても輸入米に席を譲るだけで、生産調整政策そのものが無効になるからである。日本が生産調整政策の廃止を言った途端、TPP諸国は「日本妥協」のゴーサインと受けとったはずだ。
 価格政策代替としての生産調整政策は、政策の市場介入を嫌う新自由主義農政の目の上のたんこぶだった。外圧を利用して農政「改革」をするのが日本農政の常道だが、今回も同じ手口を使ったといえる。
 しかるに肝心のTPPが漂流しはじめ、生産調整政策の廃止だけが残ってしまった。「ドジ」な農政というべきか、「ずるい」農政というべきか。このところ民主党の米戸別所得所得補償政策で超過作付けも減り、米価も回復した。それが生産調整政策の廃止ということになれば、卸筋も「ただちに2~3割はさがる」と予測するところである。
 マスコミは生産調整政策を消費者利益に反するものと非難する。確かにやみくもに米価をつりあげるのは正しくないが、問題は何をもって「高い」とするかだ。同じ働く者の立場に立てば、高い低いの基準になるのは生産費だろう。生産調整政策は高だか価格を生産費の水準まで回復させるものに過ぎない。
 農政は、飼料米誘導で主食用米の過剰を防げるとしている。しかるに米国は当面の矛先を豚肉・牛肉等の畜産物関税の撤廃に向けてきた。酪農等では既に廃業が相次いでいる。TPPで畜産が打撃を受けるとすれば、いったい飼料米を何に食わせるというのか。
 東北では大規模法人が農外企業と組んで巨大精米工場を建設し、東北一体での法人連合を作って「第二農協」になろうとしている。彼らは生産調整はといえば、地域の農家にお任せだ。既にこのような段階にきている時、国が配分をやめれば乱戦になる。

(写真)
次世代へ美しい農村を残すことができるのか(富山県入善町の風景)

◆4割のコスト減、農地集積加速へ

 そこでさらなる価格下落を見越して、農政は10年で農地の8割を担い手に集積し、米の生産コストを4割減の9600円にするという。9600円を支払利子・地代込生産費でクリアできるのは米生産費統計では米作付15ha以上の最上層に限定される。15ha以上層の平均は経営面積35ha、米作付け21haである。それに米作付けの8割を集積したら、ほぼ全国6万体の経営で済んでしまう。
 政府統一見解では、関税撤廃で7000円(米国)の米が入ってくることになる。9600円との差は2600円。その差を直接支払しても3500億円で済む。こんなところが農政の落としどころか。しかしいざ米解禁になれば入って来るのはベトナム産コシヒカリだ。それがいくらになるかわからないが、直接支払額は膨大なものになろう。
 そのためにも農地集積を加速化するのが農地中間管理機構という次第である。国会での揺り戻しもあり、機構は市町村に業務委託し、市町村は農業委員会の意見を聴くことになったが、依然として公募方式であり、農外企業が応募し、地域の担い手と競合する可能性が残されている。アベノミクス農政は農外企業に六次産業化も農地も委ねるのが特徴だ。

◆反TPPの運動、地域再生の力に

 被災地を回っていると、概ね7割程度が離農するのではないかという声が聞かれる。そして一般農村にもTPPショックが津波のように押し寄せている。6万経営体で済んだら、あとの農業者はどこに行けばいいのか。そもそも4割を占める中山間地域水田で集積効果はあるのか。
 一人でも多くの農業者が農業者たり続けるためには、集落営農化を図り、園芸作等も取り入れて、兼業農家、高齢者や女性の居場所も確保し、持ち味を発揮していくことが大切だ。農協も土地持ち非農家、准組合員等をより幅広く迎え入れないと組織・事業基盤が崩壊する。
 農地中間管理事業も地域の「人・農地プラン」を尊重することになった。人・農地プランは農地を動かせばいいというものではない。いわば「定住可能・持続可能なむらづくり」がメインテーマだ。反TPPという大きな物語を地域自らの物語に具体化するか。今はそれが問われる時である。

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