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農政:バイデン農政と日本への影響

【バイデン農政と日本への影響】第17回 バイデン政権の「メタン30%削減提案」と牛肉団体の対応~農家の自主参加と奨励措置が大前提2021年9月28日

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バイデン大統領は9月17日、本年4月に続いて自ら主催した2度目の気候変動オンライン首脳級会合において、「(温室効果ガスの一つである)メタンの世界全体の排出量を、2030年までに2020年比で少なくても30%削減するための取り組みをEU(欧州連合)と共に開始する」と宣言した。

「メタン削減こそ気候変動対策の最も効果的手法」

この宣言に関する米・EUの共同プレスリリースによると、「メタンの主要な排出源は石油・ガス・石炭等の資源開発や、(主に牛の「腸内発酵」と水田から発生する)農業、ごみの埋立地などであり」、「産業革命以前よりも地球の平均気温を摂氏1度引き上げた温暖化効果のほぼ半分を担う有力な温室効果ガスだ」が、「(空気中に数百年間も分解せずにとどまる二酸化炭素に比べ10年ほどで)急速に消滅するメタンの排出削減こそ、気温上昇を摂氏1.5度以内に抑えるための最も効果的な手法である」。

また、メタンは温室効果ガスが地球温暖化に与える影響の23%分を担っており、同じ重量で比較すると20年間で二酸化炭素より約84倍も強い温室効果を有している(日本の国立環境研究所)。

こうした実態を踏まえ、首脳級会合後の記者会見でバイデン大統領はメタン削減の重要性を何度も強調した。これを受け、「30%削減提案」を大々的に報道した米国メディアの報道ぶりをみると、そこでは、米国最大の肉牛生産者団体である全米肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)の反応に強い焦点が当てられていた(米国では農業部門が温室効果ガス全体の10%を排出し、畜産業がその排出量の36%を担うとされる)。 

大統領の記者会見直後にNCBAはプレスリリースを公表し、次の点を主張していたのだ。

(1)バイデン政権が「メタン30%削減」の目標を実現するには、肉用牛生産者の任意の参加と科学的な調査、それに現場の知恵が必要である。

(2)NCBAは本年8月、「2040年までに温室効果ガスの実質排出ゼロの実現」を宣言したが、排出ガスの責任ある管理に今後も指導的な役割を発揮していく。

(3)温暖化係数(GWP-100)によって寿命の短いメタンと二酸化炭素との温室効果を比較する手法については科学者の間で疑念が生じており、最新の科学的知見に基づいて気候変動対策を実施するよう政府に求める。

バイデン政権の「メタン30%削減提案」と牛肉団体の対応


牛肉団体の二つの思惑

NCBAはバイデン政権の「30%削減提案」に反対する立場をとらず、条件付きで支持する方針を打ち出したが、この対処方針の重要なポイントは「生産者の任意の参加」にある。すなわち、メタンの削減策は生産者へ強制するものではなく、農家が積極的に参加できるような手厚い奨励金付きの政策でなければならないと、NCBAは訴えているのだ。

ファーム・ビューローなどの農業団体が環境保護グループ等と組織した「食料農業気候同盟(FACA)」は昨年11月、バイデン大統領が選挙公約で訴えた「脱炭素農業」を支持する声明を発信したが、生産者の「任意参加」と実践農家に対する「奨励措置」が支持の大前提だと強調した。気候変動対策に対する対処方針では、NCBAを含め米国の農業団体は基本的にこの主張を貫いている。

さらに、メタンの排出削減にむけた生産農家の「現場の知恵」とその実績を誇示したNCBAのプレスリリースには、二つの狙いが込められている。

一つは、気候変動問題に対する国民の関心が高まるなか、議会では石炭採掘業者などに対する「メタン課徴金」の議論が出始めており、肉用牛の生産農家が地球温暖化の「加害者」とみなされるのを避けたいという思惑だ。

昨今の牛肉高騰をめぐるメディアの報道もこうした思惑へ影響していると思われる。飼料穀物やもと牛などの価格高騰に対しNCBAの会員農家は不満を強めているが、マスコミの一部は牛肉高騰こそインフレの元凶であるかのように報じ始めており、肥育農家がメディア攻撃の標的にされる危険が生じているからだ(表参照)。

NCBAにはもう一つの思惑がある。メタン削減の実践農家に対する奨励金の財源確保だ。

メタン排出削減を促進する配合飼料の改良など、新たな技術開発に対するバイデン政権の大規模な財政支援に関係業界の期待は高まっているが、「脱炭素農業」の穀物部門と同様、メタン削減の畜産農家に対する奨励策はいまだに明示されていない。政府との「開かれた対話」の必要性を繰り返し強調したNCBAのプレスリリースは、この大事な「本音」のアピールを忘れていない。

他方、「30%削減提案」が日本農業へ及ぼす影響にも注視する必要がある。米・EU共同提案に対し、英国、メキシコなど7カ国がすでに支持を表明した。11月1~12日英国・グラスゴーで開催される第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)までには、日本政府も支持表明に追い込まれるのは必至といえよう。

注視すべきは、メタン削減の具体的な行動計画と必要な財源措置がどうなるかだ。当然のこととして、日本の農家に対しても「任意の参加」と実践農家に対する十分な奨励措置が担保されなければならない。その担保無しにメタン削減の具体的な成果を期待するのには無理がある。

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