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農政:【土壇場の日本農業 新基本法に望むこと】

新基本法見直しに向けて(下)農業守る共感必須 国民に問いかける基本法に 横浜国立大学名誉教授 田代洋一氏2022年11月18日

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「新基本法見直しに向けて(上)自給率急低下のミスから食料安保の初登場へ」(17日)から続く

横浜国立大学 大妻女子大名誉教授 田代洋一氏横浜国立大学名誉教授 田代洋一氏

新基本法の時代へ

冷戦が1989年米ソ両首脳のマルタ会談で終結した。それによって社会的統合策の必要性も減じた。他方でURは妥結局面に入った。それらを踏まえて打ち出されたのが先の「新政策」(92年)だった。それは事実上、基本法の差し替え宣言だった。

とはいえ、それを実行に移すには、URの決着(WTO発足)と、それに伴う食管法の廃止等の手順を踏む必要があった。あれこれもたついているうちに、今度はWTO新ラウンドの開始(2000年)が迫ってきた。URにおける関税化(形式自由化)の次は、関税率の本格的な引き下げ (実質自由化)交渉が始まる。日本は遅れて関税化したコメ関税の輸入禁止的高水準を何としても死守する必要があった。

そのための手がかりは唯一、URで一応は公認された「非貿易的関心事項」(農業の多面的機能への配慮)だった。日本としては、それを軸にして国内法制を整え、それをもって交渉に臨むしかなかった。

こうして多面的機能論を軸にした新基本法が制定された。そこでは第2条の食料の安定供給の確保、第3条の多面的機能の発揮、第4章の農村振興、なかんずく第35条の中山間地域直接支払いが基幹になる。第2条を具体化するため5年ごとの「基本計画」で自給率の向上目標が定められた。

しかしそこには食い違いがあった。農林官僚は一貫して「食料自給率の低下傾向に歯止めをかける」ことを目標にしてきた。現状維持が精いっぱいという現実論である。しかるに国会審議で、「国内の農業生産の増大を図ることを基本」が入ったことで、自給率は向上を図ることとなった。これは願望論である。新基本法下で自給率が一貫して低下するという厳しい現実の中で、官僚の現実論と国民の願望論の食い違いは開いていった。

新基本法の挫折

そうであっても自給率の維持・向上の旗を立てたことの意義は大きかった。しかしその旗を引きずり下ろす政治家が現れた。第一次安倍晋三内閣によるオーストラリアとのFTA交渉である。輸出大国・豪との自由貿易協定となれば、自給率向上もクソもない。

加えて2008年にかけてWTO新ラウンドが決裂した。これで、少なくとも当面はWTOを通じる関税引き下げの恐れがなくなった。前述の新基本法を必要とした国際圧力が消えたわけだ。その時、新基本法の健康寿命は終わった。

その後は見ての通りである。第二次安倍内閣はメガFTA路線を突っ走った。加えて、農政審を無視して、自分の手兵による新たな諮問機関等を次々と立ち上げ、新基本法とは無関係な農政路線を打ち出していった。

安倍は新基本法を無視したが、法治国として新基本法を無視できない。そこで、第一に、「輸出で自給率向上を」という路線を打ち出した。第二に、メガFTAの影響試算で、国内農産物の金額は減るが、国内対策を講じるので生産量は減らず、自給率は低下しないというつじつま合わせの試算をした。

政権が新基本法を無視する中で、農政は新基本法(自給率向上)を予算獲得の手段として使えなくなった。管内閣のカーボンニュートラルに乗じて「みどり戦略」を打ち出したりしたが、新規予算を要求すれば既存予算の削減を迫られるようになった。

新時代に向けて

その時すでにコロナがパンデミック化していた。コロナは世界インフレをもたらした。とくに食料や生産資材の確保難と価格高騰が起こった。それにロシアのウクライナ侵略が追い打ちをかけた。特に日本は食料や生産資材原料等を海外に依存していることの脆弱(ぜいじゃく)性を露わにした。アベノミクスとは、低金利による円安誘導、それによる輸出拡大政策のことだが、米国の金利引き上げは円安を一挙に昂進し、輸入価格をさらに高騰させた。日本は、賃金が上がらないという意味でのデフレと、インフレの只中にいる。

結論だけ言えば、コロナとウクライナ侵略で毀損された世界は元には戻らない。世界は新しい時代に突入したのだ。そこでは日本の低金利・円安は続いていく。

円安は、たんなる日米金利差によるものではなく、日本の技術革新力の喪失や食料自給率の低さという国力の低下・脆弱性が世界に見透かされているからだ。日本は2000年代に貿易収支が赤字化し、海外からの所得収支つじつまを合わせる国になった。貿易黒字を稼いで好きなだけ食料を輸入できる時代ではなくなった。

こういう日本を根本から立て直すためには自給率の向上が欠かせない。そのための新基本法の見直しでなければ、国益にならず、国民の共感は得られない。

経験を踏まえる

以上、ざっと60年を振り返った。そこから何を引き出せるか。
第一に、基本法の平均寿命は30年だが、うち健康寿命は長くて10年だ。言い換えれば10年ごとの見直しが必要だ。
第二に、そもそも基本法とは何か。農業基本法は、企図したものを推し進める規範力(それに基づく立法を通じて農政を律する力)を持たなかったと批判された。そこで新基本法は5年ごとに基本計画をたてることにしたが、代わり映えしなかった。

基本法のあり方は各国によって違うが、日本のそれは農業や基本政策の方向づけを行う憲章的な意味合いであり、それ自体が次つぎと具体的な法や施策を生み出していく「うちでの小づち」ではない。制定時にどっと関連立法がなされるが、あとは音なしだ。生産資材の確保も、本来なら新基本法の食料の安定供給に含まれているはずだが、新基本法を改正しない難しいのはそのためだ。

ならば基本法は必要ないのかと言えば、決してそうではない。自給率が低いという意味で脆弱性を抱える日本農業にとって、方向付けやそのための理念が必要不可欠だ。しかし、その具体化を図るには、時々の政治・政権・農政の強い意思と、理念に即した具体的な立法措置、その遵守が必要だ。この60年にはそれが欠けていた。どころか、安倍政権は真逆を行った。

第三に、この60年の間に、曲がりなりにも定着をみたのは、自主流通米、利用権、中山間地域直接支払いくらいではないか。前二者は、「やみ」と呼ばれて法定外で展開していた現実を法律に取り込んだものであり、中山間地域直接支払いは地域からの要望、県レベルでの試行を法定化したものだ。上から目線で政策が導入しようとしたものは、ゼニを付ければ何とかなるが、金の切れ目が縁の切れ目になる。

今日、そういう地域からの取り組み、現実の動きとして思いつくのは、ファーマーズマーケット、地産地消、集落営農、田園回帰、新規就農支援などだろうか。そういう現実の動きに依拠した政策展開が求められる。

第四に、両基本法下の農政ともに、構造政策による零細農耕の打破と生産調整政策からの脱却をめざしてきたが、60年の歴史を経てもそれはかなわなかった。水田作農業と零細農耕、その基盤としての農業集落(共同体)は、アジアモンスーン地帯の温暖多雨の風土に最適の選択だった。その克服ではなく、それに素直に即した農業のあり方を重視する方向に転換すべきである。

新見直しの論点

食料自給率の維持向上という目標は、前述のようにこれからの日本にとっていよいよ重大である。ただし、自給率が上がらない原因を厳しく検証しつつ、真に達成可能な目標率を掲げ、そのための具体的な施策を明確にすべきだ。いたずらに高い目標を掲げたり、輸出を自給率計算に入れたり、食料国産率などいう訳の分からない計算はやめる。食料自給力の位置を高める。

基本法は、内外から農林予算獲得の手段とみなされてきたが、そこに矮小(わいしょう)化してはならない。ロシアの侵略により世界は防衛予算の拡大に向かい、国の債務残高(公債)がGDPの2.5倍にもなる超財政危機国・日本では、農林予算が防衛予算に食われる可能性が大きい(本紙9月30日号拙稿)。真に国を守ることはどういうことなのか。国民に問いかける基本法でありたい。

生産資材価格の高騰は、サブプライム危機の時のようには、元に戻らない。市場メカニズムや「お願い」だけでは価格転嫁は実現しない。具体的な施策はフランスのエガリム法の例にも見るように生産費に基づく適切な価格転嫁メカニズムの法制化が不可欠である(本紙10月20日号拙稿)。

新基本法改正がその根拠を与えることになるなら、有意義である。しかし価格転嫁が国民消費者への負担転嫁で終わるなら、新基本法改正への国民理解は得られない。賃金を引き上げ、可処分所得を増やす全体政策にリンクすることが大切である。

新基本法は「農業の自然循環機能の維持増進」を規定した。それ自体は画期的だが、今やグローバルなカーボンニュートラルに農林漁業も積極的に貢献すべき時だ。「みどり戦略」の目標達成も改正新基本法にきちんと根拠づけられるべきである。

先に水田作農業を日本の気候風土に適した農業形態としたが、2020年代に入り、水田作農業は5ha未満、東海以西では赤字である。赤字にもかかわらず続ける意味が解せない。それをつきつめると、生まれ在所(むら)にともに生き続けるためだ。しかし赤字続きで高齢化が強まれば、早晩、それも難しくなる。「田んぼダム」機能も含めた水田作農業と農村社会の維持のために特段の政策的配慮が求められる。

農業基本法の育成目標は自立経営だった。新基本法は、家族農業経営、女性、高齢農業者にも触れてはいるが、育成目標はあくまで「効率的かつ安定的経営」「専ら農業を営む者」「農業経営の法人化」だ。しかし今や、そういう特定の担い手だけでは地域農業・農地は守れない。既に改正基盤強化法も効率的かつ安定的経営以外の「農業を担う者」を云々するに至った。

これからの農業・農村を守るのは誰か。新基本法改正にあたり再整理する必要がある。

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