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農政:バイデン農政と中間選挙

【バイデン農政と中間選挙】政争の場となる次期農業法案の議会審議~注視すべき穀物等の『燃料化政策』(2)【エッセイスト 薄井寛】2022年12月14日

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【バイデン農政と中間選挙】次期農業法案 政争の場必至 穀物の燃料化政策が火種にも(1)から続く

増える穀物などのバイオ燃料の転換

米国農業界は他にもさまざまな課題に直面する。

その一つは輸出の減速だ。農務省の米国農業貿易観測(11月29日)によると、2022 年度の農産物輸出額は穀物等の高騰によって前年度比14.3%増、1964億ドル(約26.9兆円)の史上最高に達した。

ところが、2023年度には一転して3.2%減の1900億ドルが予想される(表1参照)。ここで注目されるのは輸出額より輸出量の大幅減だ。

2021年度、農産物の輸出量は22%も急増した。19年から20年にアフリカ豚熱(ASF)の急拡大した中国が増頭対策で飼料穀物などの輸入を増やしたからだ。

しかし、2022年度には経済成長の減速で食肉需要が低迷。ロシアを含む輸入先の多元化も相まって中国は米国からの輸入を減らした。また、他の輸入国の景気悪化やドル高の影響もあって同年度の米国の輸出量は前年度比5.3%減。23年度にはさらに8.4%の減が予測されている。

ブラジルやアルゼンチン、ロシアなど通貨の安い農業国が輸出をさらに増やすなら、米国の輸出量はしばらく回復できないかもしれない。

それに米国の景気後退が現実化し、国内需要が弱まれば、穀物等の市場価格がコロナ禍前の低水準へ戻りかねないのだ。

だが、こうしたシナリオを回避するためとも思えるような動きが今の米国で起きている。次のようなバイオ燃料の増産の動きだ。

①アメリカ石油協会と農業団体が共同して行った議会要請を受け、超党派の上院議員グループが11月29日、トウモロコシ由来のエタノール15%混合ガソリン(E-15)の通年販売をすべての州で認可する法案を提出した(E-15の夏場販売禁止など州によって販売制度が違うため)。

②米国環境保護庁(EPA)は12月1日、2023~25年度における再生可能燃料混合基準(RFS、製油業界に義務付けるエタノールなどの混合目標量)の引き上げ案を公表した(22年の206.3億ガロンから25年の226.8億ガロンへ)。

③EPAは同日、電気自動車(EV)が再生可能燃料由来の電力を充電することで、(製油業者が混合義務を達成できない場合などにカーボンクレジットの購入を求められる)再生可能識別番号(RIN)の取引市場へEV企業が参入できる制度改正案を公表。来年中に実現が見込まれ、バイオ燃料の市場拡大が期待されている。

④さらにEPAは、キャノーラ油と菜種油を再生可能燃料混合基準の適用対象とし、バイオディーゼルや持続可能な航空燃料(SAF)の原料に加える制度改定案を併せて発表した。

これらの動きは米国における穀物等の"燃料化政策″のさらなる進展を示している。

実際、農務省の資料(12月9日)によると、2021/22年度の米国産トウモロコシのうち、エタノール加工の割合はすでに35.3%へ達した(輸出の割合16.4%の倍以上)。

また、大豆油の加工を通じてバイオディーゼル生産へ回る大豆は大豆生産量の19.5%。輸出割合(48.3%)の4割を超えた。

農業金融機関(CoBank)の資料(『再生可能ディーゼルがバイオ燃料の増産を加速させる』、9月28日)は、米国の同ディーゼル生産が2030年に6倍(65億ガロン)に達し、大豆油がその主原料になるため、「米国は大豆の輸出を止める必要に迫られる」とまで予測する。

この予測が当たるなら、近い将来に大豆油が著しく高騰し、"飛行機を飛ばすために大豆を燃やすな″の反対デモが米国などで多発するかもしれない。

他方、地球温暖化は米国の農業にも甚大な被害をもたらしている。

干ばつは毎年のように各地で発生し、米国の中・短粒種米の7割を生産するカリフォルニア州では灌漑(かんがい)用水の不足と地下水低下で生産が激減する(米国の中・短粒種米の生産は2020/21~22/23年度の2年間に257万トンから148万トンへ42%減、輸出は129万トンから82万トンへ、輸入は30万トンから45万トンへ。もみ換算、12月9日農務省予測)。

また、気候変動による渡り鳥の越冬パターンの変化も影響して本年の鳥インフルエンザのまん延は最悪の状況だ(12月9日現在、47州の675カ所で5302万羽が被害)。

さらに、農業生産性の低下も大きな課題だ。

農務省経済研究所(ERS)の機関紙(Amber Waves)は12月5日、「世界の農業生産性の伸び率は低下し続け、過去60年間で最低水準へ落ち込んだ」との分析を発表した。

生産性に影響を与える農地、資材、価格などすべての生産要素をベースにした農業の全要素生産性(TFP)の伸び率が全世界で2000年代の年率1.99%から2010年代の1.12%へダウンしたのだ。

要因は気候変動による異常気象、新たな病害虫の発生、生産性向上の技術開発の減速だとERSは指摘する。

それに、1991年から2020年の間、ブラジルや中国、ウクライナのTFPは年率2%以上で伸びたが、米国は1%未満となった。

2000~07年から2007~19年に米国では、農業全体の生産性の年間伸び率が0.77から0.61へ、耕種部門が0.92から0.40へ後退したからだ。

ところで、地球温暖化に起因する農業被害が多発するなか、その温暖化を食い止めるために穀物や油糧種子を"燃料化″する取り組みがEU諸国にも広がってきた。

日本に求められる脱炭素と自給力向上の同時促進

日本のような食料輸入大国はこの現象にどう対応すべきなのか。少なくとも二つのことがいえる。

一つは、国内農業の脱炭素化と国産の供給増を同時に促進しなければ、国民の食料安保を守れなくなるということだ。守るためには、人・物・金の全要素生産性を向上させる強力な政策の仕組みが必要となる。

二つ目は、この仕組みの持続的な運営には新たな貿易ルールも必要だということだ。

すなわち、輸出国の"燃料化″による国際的な供給激減に対し、輸入国が新たな補助金増で国産振興を図り、気候変動や環境保護上の義務を履行しない国の輸出増には、国境措置の強化で対処できるような貿易の新ルールである。

(終わり)

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